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人生とサムマネー
リタイアメント: 働くことの意味
「早期リタイアメントは米国人なら誰でも夢みることであり、私が55歳でリタイアした時も、同僚から随分羨ましがられたものだ。若いときから早期リタイアを目指し、太陽が燦燦と輝くフロリダのビーチとゴルフコースでゆったり寛ぐことを夢見ながら、一所懸命に働き、地道な投資もしてきたから達成できた。
しかし、リタイア後程なくして、1番ティーに立つと必ず嫌な気分がするようになった。レジャーだけに残りの人生すべてを費やすにはまだ若すぎるし、自分のエネルギーがもったいないという気がしてきたのである。
『これは勤勉に働いた者へのご褒美なのだ。皆が欲しがっているものを私は手に入れたのだ。』そう自分に言い聞かせるようにした。
しかし私はだんだん詰らなくなって、いつしか酒にのめり込むようになっていった。働いていた昔だったらあり得なかった悪い習性がついてしまった。
そんな自分の姿を気づかせる事件が起こった。ある日、かつての同僚と偶然町で顔を合わせた。彼は、私よりも5歳年上だったが、まだ現役で働いていた。久しぶりに会う彼が立派に見えた。私は今年62歳になるが、見た目はもう70歳に映ったのだろう。彼は何も云わなかったが、彼の眼がはっきりとそう訴えていた。
レジャーのみで他になにもすることがない生活が、いつの間にか私の老化を早めていたのだ。早期リタイアメントがこんなものだとは誰も教えてくれなかった。」
エピソード(B)
米国メジャーリーグ史上最高のピッチャー、サチェル・ペイジの話を書くつもり。
ニグロリーグから、ジャッキー・ロビンソンの後メジャー入り
43歳で新人王、59歳までマウンドに上がる
リタイアした人を見ていると興味ある現象に気づく。リタイアしたあと短期間のうちに病気になったり死んでしまったりする。しかも、肉体的な病気や疾患が先ではなく、退屈に耐え切れなくなり精神的な病が先行してやってくる。
彼らは、それまで自分の人生・生活に満足感を与えてきた大切なもの(それは自分自身の一部と言っても良い)から切り離されたようなものだ。ゴルフコースや秘境を巡る海外旅行で満たそうとしても、結局同じ問題に立ち返ることになる。
日がな一日「サボって」いるには若すぎるし時間がもったいないと感じているのだ。こうした人々にとっては、気楽な老後は苦痛の生活と紙一重になりかねないのである。
エピソード(B)
隣に住む彼はIT業界のSEとして仕事づくめの毎日を過ごしていた。何度か一緒にゴルフでも行かないかと誘ってみたことがあるが、大きなプロジェクトを抱えていて休日も休めない状態という。とにかく文字通り忙しいという人だった。
彼の話に出てくる人物は会社の人しかいなかった。
ある日彼の会社がリストラに着手した。彼は早期リタイアに追い込まれる羽目になり、それが原因で一種の鬱病に陥った。日がな一日、ボーっと窓の外を眺め遠くを見ている。話しかけてみたものの、無表情で全く相手にされなかった。
会う度ごとに少しずつ悪化していくようだった。彼がこう呟いていたことがあった。「自分は57歳のSEだ。57のSEなんてどこもお呼びでない。」
かつて一日15時間も誰とも口をきかず働き続けてきた彼が、多少なりと付き合いがあったのは同じプロジェクトで働いた同僚である。しかし、その同僚は仕事に忙しく、彼を再び世の中に順応させる時間的余裕はなかった。
9ヵ月後に彼は病気となり、その2ヵ月後儚くなった。
リタイア後の人生において幸せのバロメーターはお金ではない。
周囲の世界とどう繋がっているかが重要であり、おそらく働いていた時以上に大切であろう。あたたの心をなごませ、あなたが話す関心事に耳を傾けてくれ、あなたがリタイア後も依然として価値ある人物であると思わせてくれる人がいるかどうかで、あなたの人生は大きく変わってくるだろう。
大金持ちのビジネスマンが、ある日港で子供遊んでいる漁師を見かけ、呆れはててこう訊いた。
「漁には出ないのかい?」
「ああ。今日の分はもう十分釣っちまったからな」と漁師は答えた。
「どうしてもっと多く獲ろうとしないんだい?」とビジネスマンは尋ねた。
「そんなに多く獲ってどうするんでさ?」と逆に漁師が訊き返した。
「余計に稼げるじゃないか。その金でもっと大きな船が買える。するともっと深い海で漁ができ、さらに多くの魚が獲れる。お金が増えて今度はナイロンの網を買うことができ、その網でもっと大量の魚が獲れ、お金が益々増える。そうしているうちに、いずれ大きな船団を持つようになり、私と同じような大金持ちになれるよ」
「大金持ちになって、どうするんでさ?」と漁師はまた訊いた。
「決まってるじゃないか。その時こそ、人生を心底楽しめるさ」とビジネスマン。
漁師は訝しげにビジネスマンを見ながら答えた。
「あっしがさっきから何をしているとお思いだ?」
日記:人生とサムマネー(5)に掲載
エピソード(C) <老いる>
二人の老婆の生き方から学ぶ人としての老い方~
80歳を過ぎた二人の祖母はともに元気でいるが、その楽しみとするところは全く違っていた。
一方の祖母は、私たちと話すときはいつも痩せ我慢をし、「可哀想な私」症候群となってしまう。最近までとても健康でいたのに、私たちの注意を惹くため、何でも命に係わる重大事のように大げさにしたがる傾向があった。
彼女は自ら周囲との壁を作ってしまうタイプであった。一度彼女に新しい友達ができたか聞いたことがあるが、いまさら友達を作るには年をとりすぎたと云っていた。
彼女の家に行くと、滞在が短いときはもっと長く居られないのかとこぼすし、しきりと期間を延ばす算段をしたがった。こんなことは言いたくないが、いつも不満だらけで、子供のように駄々をこねるので、彼女のことは自己中心的で我儘な性格だと思わざるを得なかった。
もう一方の祖母は、目や体の一部が不自由だったけれども、とても積極的で、それに快活な性格であり、社会とのつながりを常に保っていた。彼女は老人センターの活動に参加し、またアルツハイマー病患者の支援グループ(彼女は夫をアルツハイマー病で失っていた)のメンターも務めていた。定期的な会話を持ち、ゲームや催し物にも参加していたので毎日いろんなスケジュールで埋まっていた。彼女は自分の関わっていることを話すのが大好きだったし、そうした会話を楽しみにしていた。新しい人に会うのも楽しんでいた。私の目から見て、彼女の最も優れた点は感謝の念を持ち続けていることだと思う。新たな日々、瞬間瞬間を受け入れ楽しんでいるように見える。私が訪ねた時に、ほんの短時間の訪問だったとしてもその会話をうれしがってくれていた。その気になればうんざりするくらい深刻な問題があったろうに、彼女から不満めいたことを聞くことはめったになかった。彼女は周囲の人を楽しませたので、皆彼女と毎日会うのを楽しみにしていた。
この二人の祖母の話は、ともに長生きしているという点では共通しているが、そこまでであとは違いすぎている。命が続いているだけのような単なる長生きより、意義のある老後を生きたいものだ。90歳までの長寿は一人の祖母にとってはまさに祝福されることだろうと思う。一方で、自己中心的な生き方は悲しい惨めな老後となるように思われてならない。
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