Rewrite of the World ♪

Rewrite of the World ♪

CLANNAD~探しもの~


家のドアが小さくきしみ音とともに声がした。
「お帰りなさい朋也さん」 
台所からは優しげな女性の声。ずっと待っていたのだろう。やや眠たげな声ではあるけれど。
「悪かったな・・遅くなって」  
「そんな事ないです!いつもご苦労様です!」  
この家で毎日当たり前のように繰り返されてきた日常。
毎日変化は無いけど幸せな毎日。ここまでいろいろな出来事があって今がある。そんな事を朋也は思っていた・・・まあいつもと違うといえば、夜遅いのでこの家の小さな天使が居ない事だけど。
「汐はもう寝ちゃったかやっぱり?」  
「はい。『パパが帰ってくるまで待ってる!』と言って、さっきまで待ってたんですけど、昼に外を遊びまわってたせいか疲れて眠っちゃったみたいです」
「そうか・・。最近外でかなり遅くまで遊んでるようだけど大丈夫なのかな?」 
・・汐はまだ幼稚園児という事もあるが、この母親といっしょで体はそんなに強くない。・・いろいろあったし・・
「大丈夫ですよ。汐は私と違ってしっかりしてますし♪」  
「・・母親のお前が威張って言えないだろ・・」  
「・・すびませんです・・」  
ちょっと落ち込んで涙目になったらしいので慌ててフォローをしてみた。
「でも、汐も強くなったよな~お前みたいにさ。」   
「いえいえ私なんか・・朋也さんに似たんですよ!さすが朋也さんの子です」  
「・・お前の子でもあるだろうが・・」   
顔を赤くしてまたボケたことを言う。この二人は学生時代から変わってない。性格もこのやりとりも・・そして気持ちも。
「そろそろご飯にするか。」  
「わかりました!」  
遅めの食事になる。渚が台所で準備をしているのを見ながら、朋也は幸せそうな汐の寝顔を見る。   
「そういや汐の誕生日までもう少しだっけ?」
「はい♪汐ちゃんの誕生日私も楽しみです♪」   
「プレゼントは何が良いんだろうな~?」   
「わたしはもう決めています。でもびっくりさせたいから汐ちゃんにも・・もちろん朋也さんにも内緒です」
「・・・どうせだんご大家族のグッズだろう・・」   
「何故わかったんですか朋也さん!」   
「・・相変わらずお前はあほな子だろう・・・」  
 ため息をつきふと横目で汐を見ると、だんご大家族のパジャマに包まれ、抱き枕もふとんもすべてそうだった(ていうかどこに売ってるんだこれ・・)まあ・・汐も気にいってるので良いのだが。   
「まあだんごはともかくだ。」   
「ともかくなんてだめです大切なんです!」  
「わかったからΣ( ̄ロ ̄lll)・・何か他にも今年は買ってやりたいな・・幼稚園最後の年だし」 
 来年からは小学生だ汐も。  
 「そうですね~何か記念になるもの」
「そうだな~想い出に残るもの・・。」   
「そうですね・・だんご大家族限定グッズとか・・・」    
「お前はだんごから離れろ!!」   
「何でですかぁ~」 
・・汐の幸せそうな睡眠の横で、今日もいつものやりとりが始まって・・・繰り返し変わらない日常が終わりを告げる・・・。


「先生さようなら~」  
「はい、さようなら♪ みんな気をつけて帰るのよ~」 
「は~い♪」
・・・辺りはまだ明るいが、昼というには遅すぎる。・・夕暮れまであと少しという時間。
ここはこの町にある唯一の幼稚園。今は園児達の帰宅の時間。ある者はバスに。ある者は親に連れられて帰っていく。 
「今日も一日いろいろあったわねね~。何か疲れたわ」 
そう愚痴めいたセリフをこぼしたこの幼稚園の先生・・いや藤林杏はのびをしながら辺りを見回すと、砂場で遊んでいる女の子の園児と一匹の園児(?)を見つけた。
「汐ちゃ~ん。まだ帰らないの?」  
「あ、杏先生~。まだぼたんちゃんと遊びたいの」  
「ぶひぶひ♪」  
・・砂場で女の子とイノシシが仲良く遊ぶ・・通常では冗談でしかない光景だが、ここでは日常だ。
「汐ちゃんはぼたんとほんと仲が良いわね~」  
「うん。」  「ぶひ♪」 
・・この二人(?)は一番の仲良しだ。・・飼い主としては複雑のような気もするが。  
「いやほんと。椋と勝平さんも負けるくらいだわね~」
・・いろいろあったが今は違う町で、おそらく仲良く暮らしている双子の妹とその恋人の事を想い、遠くを見る目をした。  
「うちのパパとママも仲が良いよ!」 
それに対抗するわけでは無いが汐も声を張り上げた。
「・・まあね。」 
杏にとっては微妙な笑顔を浮かべた。  
「杏先生にはそんな人いないの?」  
「何が?」  
「好きな人とか?」  
「え・え・・いやあね~。そんな人いないわよ~ほら。私につりあう人なんかそう居ないでしょ♪」
何か慌てて赤くなって杏が否定すると、近くの茂みが「がさがさっ」と揺れてそこから何かが飛び出してきた!   
「ふふ。僕は知ってるぞ!・杏に好きな人なんかいる訳が無いじゃないか!・・学生時代から暴力女として名をはせた杏なんかかにいるわけ・・・ぐはぁああああ!」
・・・・ひゅぅぅぅぅぅぅ・・きらりんっ☆ 
「杏先生ナイスホームラン。」 
「でしょ♪」 
何か飛び出してきた気もするが、杏得意の辞書攻撃(今回は百科事典を使ったバッティング攻撃・・どうやったかは秘密<笑>)で0.5秒後にはお星様になってしまいました。
「ところで今のは何?先生?」  
「ああ、汐ちゃんは気にしなくても良いの。人類以下の害虫だから♪」 
「そっか。」   「ぶ・・ぶひ・・」 
・・まあ誰だったか(笑)は知らんが不憫な奴。 
「そういえば汐ちゃんのママ遅いわね~」  
「あ、ママ体調悪いんだって。だから今日はパパがお迎えに来てくれるの」
・・朝、渚は熱を出して寝込んだのだった。あれ以来本当に調子が悪い事は滅多になくなったのだが、たまに軽いのならあるのだ。  
「ふ~ん。じゃあ今日は朋也・・パパが来るのね~。仕事で遅れてるのかしら?ダメね~」  
「ううん。いいの。パパと帰れるの嬉しいし」  
「そっか♪」  
・・すると汐はちょっとそわそわしだした。
「ねえ先生?まだパパが来るまで時間があるから、散歩してきていい?」  
「う~ん・・まあ一人でここで遊んでも退屈だろうし・・いいわよ。ただしぼたんと一緒に行く事。いい?」  
「うん♪ありがと先生~じゃあぼたんちゃん行こう」  
「ぶひぶひ♪」  
「ぼたん♪」 
「ぶひ?」 
「汐ちゃんに何かあったら、今夜はボタン鍋決定よ~♪」  
「ぶ・・ぶひΣ( ̄ロ ̄lll)ぶひ!」
・・杏の温かい言葉に(笑)見送られて、散歩に出かけた二つの影。

  町の中をイノシシの背に乗って歩く女の子は、道行く人を振り返らせますが(笑)・・可愛いからよし!と気にもしませんでした。  
それから散歩しながら汐は何かを探して道をキョロキョロ見ながら進んでいるのでありました。  
「ぶひっ?」  
「何してるのかって?探し物しているの。」
・・まあ意思の疎通が出来ているのはお約束で(笑)  
「ぶひっ・・ぶひ?」  
「何かはわからないんだけど・・本当は」  
「ぶひぃ・・」  
「汐のお話聞いてくれる?」  
「ぶひ♪」
「私ね・・最近同じ夢を見るの。風景は、白い雪の中だったり、緑の草原だったりするのだけれど・・、何だか大切なような、悲しい出来事のようなそんな気持ちの夢」  
「ぶひ」  
「決まってその夢は最後にわたしが泣きながら必死で探し物をしているの。絶対見つけなくちゃいけない!って気持ちで。でも結局見つからなくて・・それで目が覚める・・そんな夢」  
「ぶひぃ~・・ぶひぶひ?」
「うん。何を探していたかは覚えてないのいつも。だからこうやって何かヒントは無いかな~って探しているの・・。」  
・・汐はちょっと悲しげな顔をして考え込んでしまいました。  
「・・ぶひ♪」  
「きっと見つかるって?」  
「ぶひぶひ♪」  
「ありがとう。応援してくれるの?」  
「ぶひ!」  
「うん元気出すね♪」 
ぼたんの励ましでちょっと元気が出た汐でした。
「あ、もうパパが迎えに来てくれる時間。帰ろう♪」  
「ぶひっ♪」  
・・こうして幼稚園に戻ってみると、門のところで何か言い争ってる男女が2人。 
「お前な!うちの娘を一人でほったらかしにしとくなよ!」  
「一人きりにするわけないでしょ!ぼたんがちゃんといっしょよ!」 
「イノシシが役に立つか!」  
「あ~ら。その辺の大人よりはよっぽどね♪」
・・何か男の方が責めてるけどかわされてます。
「あ、パパ~♪」 
 汐は男の・・朋也の体に抱きついた。  
「おお汐無事か?」  「うん♪」  
「ほら、平気だったじゃない。ぼたんもお疲れ様」  
「ぶひ♪」  
何か得意げでムカついた(笑)  
「でも杏!今後はぼたんだけで一人で遠くまで行かせるなよ!」  
「はいはい。遠くまでって散歩じゃない。・・相変わらず親バカね~」  
「ほっとけ!」  
・・何か話が長くなりそうだったので、汐は朋也の体をつつきながら。
「パパ~早く帰ろう?ママが待ってるし。」  
「ああ・・そうだな。この話はまただ。・・じゃあな杏」  
「二人ともさようなら♪」  「ぷひ♪」 
 二人は家に帰宅となりました。 
「ねえパパ?」  「うん?」  
「手をつないでもいい?」  「ああ、もちろん」  
・・二人の仲良さげな影が小さくなってるのを杏はじっと見つめています。  
「ぶひぶひ?」  
「何でもないわよ。・・さて私達も帰りますか♪」   「ぶひ~♪」
そして町は夕闇に暮れていくのでした・・。


「先生さようなら~♪」 
今日も幼稚園の帰宅時間。門のところで見送る杏に向かって、さよならの挨拶をしていく園児達。いつもの光景だ。
ただし、昨日と違うところと言えば、1匹のイノシシが居ない事(遊びつかれてお昼寝中) 汐の迎えに来たのが二人だったという事だ。
「早苗さん。渚・・いえ汐ちゃんのママはまだ具合が悪いんですか?」  
杏は久しぶりにあった二人に嬉しさもあったが、心配になって尋ねてみた。
「いえいえ。渚の体の調子はそんなに悪くないんですよ♪」
「はあ」  
「でもやっぱり無理は良くないし・・それにですね」
 突然くすくす笑い出した早苗さんに怪しんで聞いてみた 
「何ですか?」  
「いえ・・どんな理由つけても秋生さんは汐ちゃんと遊びたいんですよ♪だからこっちの勝手ですね♪」
「・・親バカに爺バカですか・・汐ちゃんも大変ですね~」  
「本当に♪」 
女性陣がこんな話をしている傍で  
「汐。今日も幼稚園でいじめられなかったか?」  
「うん。あっきー♪」  
「よし。万が一いじめられたらあっきーに報告だ。仕返ししてやる」 
「うん♪」
・・・真剣な顔で相談してる二人をみて女性陣はまたため息。
・・二人は、渚の両親なので、汐にとっては祖父母に当たるのだが・・・とてもそうは思えないと杏は思う。
・・ていうか早苗さん・・あなたは特におばあさんていう容姿じゃないでしょう・・秋生もだが・・。  
「何ですか?」  
「いえ・・そろそろ帰らなくてもよろしいんですか?」
余計なお世話かと思いながら、杏は聞いてみた。 
「お二方が来ているという事は、お店の方には誰もいないんでしょう?お客さんとか困るんでは?」  
すると早苗さんが口をはさむ前に  
「今の時間は店に並んでるのは早苗のパンだけだ。ドロボウもタダでも持っていかない・」  
・・また言ってはならない禁句をうっかりと(笑)
「わ・・わたしのパンは・・」  
みるみるうちに泣き顔になっていく早苗さん。  
「やば・・いや早苗・・」   
「ドロボウさんも逃げていくような防犯効果バツグンなパンだったんですね~!!!!」  
いつものごとく泣きながらどこかへ走り出していく早苗さん・・・汐の手を持ったまま(ひきずったままともいう)ではあるが。  
「杏先生バイバイ~」  
「バイバイ♪」
遠ざかる二人に向かって冷静に別れの挨拶をする杏。
傍らでは、深呼吸を1回。そして空をしばらく見つめていた秋夫だったが。  
「ドロボウでも何でも相手になってやる!!・・そんな早苗が大好きなんだあぁぁ!!!」 
 といつものごとく早苗さんを追っかけていく秋生。
「お気をつけて~」っと声をかけつつ・・どっと疲れた杏は園内に入っていくのでした。

「ここが汐ちゃんのパパとママが出会った場所よ♪」  
「そうなの?」 
・・走っていった早苗さんも泣き止んで、今は汐と散歩中(笑)歩いているうちに朋也と渚が通っていた高校・・その校門までの坂道にたどりつきました。  
「行ってみたい?」  
「うん♪」  
二人は坂道を上って行きます。早苗さんは感慨深げに。汐は周りを興味深げに・・そしていつもの探し物もしながら歩きます。
すると前方で女性二人が坂の途中で言い争ってるのを見つけました。  
「ほらふうちゃん。ダメですよ。約束したでしょう昨日。」  
「いいんです。風子は朝起きて悟ったんですから。今日は家に居るべきだと」  
「また変な事を・・」  
見慣れた二人だったので早苗さんは声をかけることにしました。  
「こんにちは♪何をしているのですか?伊吹さん。」  
こちらに気がついた二人も挨拶します。
「こんにちは古河さん。いえふうちゃんは今年受験なんですけど、まだ進路とか決めてないんですよ。・・本当は私も先生のはしくれなので、妹の進路のアドバイスはしたいんですけど、やっぱり肉親がアドバイスするのより第三者がアドバイスする方が良いかと。・・これから学校に行くところなんですよ」 
「まあそうなんですか。」  
「ええ、学校には幸村先生・・いえ、今はやめてしまいましたけど、恩師でもありますし相談に行こうかと」
「そうでしたね~。幸村先生は用務員になられたのでしたね。」
・・朋也達が卒業した年に定年を迎えた幸村先生。今は用務員として学校に戻ってきているのだった。  
「失礼ですお姉ちゃん!風子は将来の進路はもう決めてあります!」  
胸をはって風子は答えた。  
「ヒトデ王国の王女になって、ヒトデに囲まれて過ごすんです。そして毎日ヒトデパレードでヒトデ達と仲良く・・ぽわあ」 
 いつものごとくヒトデの魅力にトリップしてしまいました(笑)
「ふうちゃん戻ってきなさい!」  
公子に体を揺さぶられると、意識は戻りました。 
「おっといけないです。ヒトデのラブラブ光線に負けるところでした・・と汐ちゃん?」  
戻ってきた(笑)風子は汐を見つけました。 
「風子おねえちゃんこんにちは」  
「こんにちは汐ちゃん♪・・今日こそうちの家の子になってもらいますよ」  「ぶんぶん」 
・・自分の家に連れて行こうとする風子と拒否する汐・・まいつもの光景で(笑)  
「残念です・・ところで汐ちゃんはどこへ行くですか?」
「ママとパパの学校」  
汐は坂の上を指差します。  
「そうですか!では風子も一緒に行きます。」  
「うん」  
「・・まったく・・今まで嫌がってたのに」  
「まあいいじゃないですか♪」  
ため息をつきながら歩き出す公子と、微笑みながら歩く早苗さんでしたが。 
「そういえば渚さんと朋也さんは元気ですか?」  
「ええ♪そして相変わらず仲は良いですよ♪」  
「そうですか!・・まあ汐ちゃんを見てればわかりますけどね!」  
「そちらも祐介さんと仲が良いではないですか?」  
「おかげさまで・・そのう仲が良いですよ」 
ふふふっ 笑いながら道を歩いていきます。

そして坂の上につくとそこは学校です。  
「・・ここがパパとママの学校・・」  
「そうよ汐ちゃん」  
つぶやいた汐に早苗さんが答えます。 
「そして風子の学校でもあります!」 
そして在学生の風子は何故か得意気(笑)  
しばらく門を見ていた4人ですが・・  
「そろそろ戻りましょうか汐ちゃん。ママも心配してるだろうし」  
「うん」 
汐は答えます。  
「そうですね♪」 
風子も答えます(笑)  
「・・待ちなさいふうちゃん!あなたはダメです。何のタメに学校まで来たんですか!」 
当然のごとく公子に止められますが。
「風子も汐ちゃんと帰りたいですぅ~」  
「ダメですよふうちゃん!」  
・・言い争ってたけれども結局は公子には逆らえず。  
「またです汐ちゃん♪」  
「バイバイ」
・・と門のところで二人と別れたのでした。
早苗さんと汐は帰ろうと坂道を下ってると、向こうから女の子の声が聞こえてきます。 
「あっちはどうだった?」
「うんみんな優しいの」   
「へえ~いいな~」 
「私も行ってみたいものだ」   
「智代さんなら英語とかばっちしだしいいですね~」  
近づいてみると、これまた見知った女の子が4人ほど見えました。   
「あ、早苗さんだ!こんにちは!」  
髪をリボンで結んだ、このグループでは一番年下そうな女の子が気づいて声をかけます。  
「あ、芽衣ちゃんこんにちは♪」 
気づいた女の子達・・芽衣 ことみ 智代 有紀寧 ・・も次々と挨拶を交わします。
この4人は、朋也や渚の学生時代の同級生だったり、後輩だったり(芽衣は同級生の妹だが)の人たち。
卒業して疎遠になってしまった子もいるが、朋也や渚を通じてみんな知り合いです。もちろん早苗さんとも。   
「皆さんどうしたんですか?」  
早苗さんが問いかけます。  
話を聞いて見ると4人が会ったのは偶然だという事。芽衣は、地元の高校を卒業後、朋也や兄の通っていた高校があるこの町に引越しをし、今はバイトもお休みという事で、学校に来てみたらしい。ちなみに有紀寧とは大学の先輩後輩。
ことみはこの高校を卒業した後海外に留学していたのだが、今週日本に一時帰国。・・懐かしいので通っていた学校へ。
 智代は他の町の大学に通っていたのだが、今年就職という事を迎え、学生のころアドバイスをよくもらっていた、この高校の寮母の美佐枝さん(いまだにここで働いている)に相談しに学校へ来て出会ったと言う事でした。  
「そうなんですか♪では後でうちのパンも食べに来てくださいね♪」 
 早苗さんがそういうと  
「はい喜んでうかがわせていたたきます」   「よろしいんですか?」  
という肯定派と  
「ぷるぷる・・恐ろしいなの・・」    「はは・・遠慮させていただきます」 
 という否定派に(笑)・・その否定派である芽衣が忘れてたようにしゃがんで話しかけます。
「こんにちは♪汐ちゃん♪」  
「うん」 
 芽衣は何度か早苗さんの店にお手伝いに行ってるので汐とは何度か会った事はありますが、他の3人は話は聞いていたけれど、実際に会うのは初めてという事で、興味しんしんです。  
「ほう。これが朋也の娘か。初めまして智代だ。よろしくな。」    「うん」  
「汐ちゃん?・・わたしはことみ。ひらがなみっつでことみ。呼ぶときはことみちゃん」    「うん。ことみちゃん」  
「うわあ~これが朋也さんのお子さんなんですね。初めまして有紀寧といいます。仲良くしてくださいね♪」   「うん」  
互いに自己紹介をすませると懐かしさのあまり会話に花が咲きます。・汐は智代やことみに可愛がられて困っていましたが(笑)
「そういえば早苗さん。お兄ちゃん見ませんでしたか?」  
話の切れ間に芽衣が問いかけました。  
「陽平さん?見てないけど・・どうしたの?」  
「お兄ちゃんも昨日こっちに来てるはずなんだけど。家に昨日来なかったから・・もしかしたら早苗さんの家にでもお邪魔してるんじゃないかと。」  
「いえ。私のところにも・・朋也さんのところにも居ませんでしたよ」  
「・・春原ならゴキブリ以上にしぶとい奴だ。心配する事は無い」  
冷静に判断する智代  
「はあ・・でも一応兄ですし」 
 苦笑しながら芽衣が答えると。  
「お星様」  
突然、汐が答えました。  
「はい??」  
みんな首をかしげて汐に聞き返すと  
「ホームラン」  
「???」  
余計わからない言葉を(笑)・・・まあこの意味をわかる目撃者は1人と1匹ですが(笑)  
「まあ、もし見つけたら連絡をくれるように兄に伝えてください」  
「わかりました♪」  
・・しばらく無理かと思いますが(笑)

ここで皆と別れることとなりましたが、汐が探し物をしているということを聞いて、有紀寧がお得意のおまじないで、今日の帰り道に大切なものが見つかるおまじないをかけてあげました。
その帰り道、二人が大きな野原を通ると、汐はこの野原に大切なものがある予感がしました。 
「汐ちゃんどうしたの?」 
 早苗さんの問いかけに答えず、その野原の真ん中に行くと何かが居ました。  
「??」 
 早苗さんも不思議に思って近くまで行くと、そこには白い物体が置いてありました。・・と思ったらその物体が動き出しました!  
「!?!?」  
二人は驚きのあまり立ち尽くします。そしてさらに追い討ちをかけるようにこの世で一度も聞いたことの無い奇妙な声が・・   
「ぴこ♪」
 ・・・  
「・・」   「・・・」 
「ぴっこり?」 
 ・・・・
「・・」  「・・・」  
「可愛い」 
ちょっとまていΣ( ̄ロ ̄lll) 
「本当ですね♪」 
 早苗さんまでΣ( ̄ロ ̄lll)
・・は・・思わずつっこんでしまいましたが・・と・・とりあえず見つけたので。  
「キミは犬なの?」  
違うと思います。 
「ぴっこり♪」  
「飼い犬にしては首輪は無いのは変ですね~」  
犬で納得かΣ( ̄ロ ̄lll)ていうか変と思うところ違うΣ( ̄ロ ̄lll)  
「ぴこぉ・・」  
「迷子」  
「そうかもですね。でもどうしましょう。うちは食べ物を扱ってるから動物は無理ですし」  
「連れて帰る。可愛そう」  
「ぴこ♪」  
「・・そうですね。汐ちゃんのアパートは動物飼うのわからないけど、数日くらいなら大丈夫かも」  
「ママに聞いてみる」   
「そうね。じゃあ早速帰りましょうか♪」  
「うん♪」  
「ぴっこり♪」 
・・こうして二人は迷子の犬を家につれて帰りました。
・・え・・と・・たぶんそれ犬では無いと思います。正体はポ・・・いいです・・知らない方が良いこともありますし。  
ちなみに汐が連れて帰ったポ・・いえ白い物体を渚に見せたら 
「可愛いです♪」 
と数日なら飼って良いと了承しました。ただし「パパが良いといったら」との事でした。 
その夜、朋也が帰ってきたので、汐は頼んでみました。 
「ねえパパ。迷子の犬を見つけたの。飼い主が見つかるまで家に置いていい?」  
ちょっと困った顔をしましたが。  
「ママが良いんだったら少しなら平気だ。」  
「ありがとパパ♪」  
とりあえずOKをもらいました。  
「でどんなやつだ?」  
と聞いてきたので  
「この子です♪」
 と満面の笑みで白い物体を見せる渚。  
「ぴっこり♪」   
「・・・・・」  
しばらく天井を見つめつつ。  
「・・やっぱり却下だ」  
「どうして?パパ?」  
「可愛そうじゃないですか朋也さん!」  
「ぴこΣ( ̄ロ ̄lll)」  
二人と一匹(?)からは非難の嵐が(笑)  
「これのどこが犬だΣ( ̄ロ ̄lll)こんな不気味な生物と一緒に暮らせるか!」
・・その後延々と話し合いを重ねたが・・結局朋也が渚と汐を相手に回して勝てるわけも無く、数日ならOKという事で了承しましたとさ。
・・その晩、渚と汐が可愛いという言葉を何度も言っているのを聞いて 
「・・娘と妻のセンスの教育を間違ったかもしれない・・」 
 と真剣に悩むのでした(笑)  「ぴこ♪」

そして・・今日は汐の誕生日の前日となりました。
・・ちなみにあのポ・・いえ・・白い物体は、翌日の朝どこからか噂を聞きつけた飼い主だと名乗り出た3人組が引き取っていきました。
汐たちは残念がってましたが、朋也はほっとしました(笑)  
「でも妙な3人組だったよな~」 
 と朋也は振り返りましたが。  
白衣を着た女性とその妹らしき元気な女の子。そして何か目つきが悪い背の高い男と・・妙な組み合わせでした(笑)
・・それはともかく。

今日も幼稚園は終わりの時間を迎えました。園児達はいつものごとく帰宅していきます。
・・でも今日は汐の元気があまりありません。昨日見た夢・・それがちょっと気になっているようです。 
「汐ちゃ~ん。お迎えが来たわよ♪・・・てどうしたの?」  
杏も何だか元気が無い汐を見て心配そうです。 
「大丈夫。ちょっと考え事してただけ」  
「そう?・・でも明日は汐ちゃんのバースディなんでしょ?笑顔じゃないと楽しくないぞ」
「うん。ありがと先生」  
とりあえず笑顔を見せた汐でありました。 
「あ、もうお迎えが来てるわよ?」  
「うん♪」  
・・門のところまで行って見るとそこには優しげな笑みを浮かべた年配の男性が立っていました。  
「あ、おじいちゃんだ♪」 
 そこには汐の祖父であり、朋也の・・父親である直幸が立っていました。  
「・・汐ちゃん元気かい?」  
「うん♪」  
・・今日直幸が来た経緯を知っている杏はその光景を見て微笑んでいました。
直幸はこの町から遠いところに住んでいます。今日は汐の誕生日を祝いに来たのですが、朋也との・・・今では和解しわだかまりも消えたのですが、やはり本人どうし(特に直幸の方は)は会いづらいということで、直幸はプレゼントだけ置いて帰るつもりでした。
けれど、渚が一計を案じて、体の調子が悪いという事で汐を迎えに行ってもらいました。・・これなら汐と二人で祝える・・そんな考えで。  
「バイバイ♪汐ちゃん」  
「うん」  
「失礼します」
二人は帰っていくのでした。

その帰り道に・・ふと野原の傍を通った時に、野原から昨日の白い生物(笑)とぼたん・・そして誰かが呼んでいるような気配がしました。 
「・・おじいちゃん。ちょっとだけ寄り道してもいい?」  
「うん?・・ああいいよ。でもあんまり遅くなって渚さん・・いやママに心配かけなければ」   
「うんありがと」   
そういうと汐は野原に入って行きます。そうして、自分より背の高い草に覆われた場所を一生懸命何かを探し始めました。
直幸もついていって、汐の不思議な行動に首をかしげつつ。  
「何を探しているんだい?」   
「・・ロボット・・」   
「ロボット?」 
不思議な単語に直幸は思わず聞き返してしまいましたが。  
「・・買って欲しいのかい?」  
「ううん。探し物なの・・大切な・・」  
・・昨日汐はいつもの夢を見ました。しかし今回の夢はいつものと違って覚えている事が一つ。
それは・・ロボットを探している夢。・・やっぱりほとんど夢の内容は覚えていないけれど、何故かロボットを一生懸命に探している夢・・とても大切な夢・・。  
「そうか。」  
直幸はうなずくと汐と一緒に探し始めました。  
「・・・」  
かなり長い時間探したけれど・・なかなか見つかりません。そのうちに汐は何だか悲しくなってきます。何故だかわからないけれど、いつの日かどこかでに同じ思いを抱いていたような・・。 
コツン。 ふと汐の指先に固いものが触れる感触がありました。 
「?」 拾い上げてみるとそれは小さな何かの部品・・。  
「探し物は見つかったかい?」
そう問いかける直幸に。  
「・・うん」  
「それでは帰ろう。ママも心配するだろう」  
「うん」  
そうして、一つの小さな部品を腕に抱え、二人は家に戻っていきました。

その夜の事です。いよいよ明日は汐のバースディという事で、朋也も渚も何だかウキウキした気持ちです。  
「汐~♪明日は誕生日だぞ~何か欲しいものはあるか?」  
結局考える事がめんどくさくなった朋也は直球で聞くことにしました(笑)  
「・・・」  
でも汐は何だか上の空のようです。  
「・・?どうした汐」  
「どうしたの汐ちゃん?」  
二人とも心配そうです。  
「・・ロボット・・」 
 ふと汐がつぶやきます。  
「ロボット?ロボットが欲しいのか?・・う~んもうちょっと女の子らしいものは欲しくないのか?」
「う~ん・・だんご大家族ロボットって売ってましたっけ?」  
「お前もいい加減にそこから離れろΣ( ̄ロ ̄lll)」  
「何でですか朋也さん!だんご大家族ロボット・・素敵です!」   
「どこがだ!・・ていうかあるかそんなもん!」  
「探しましょう!」  
「うんな妙なもん探したくないわ!」  
「うう・・ひどいです朋也さん」  
・・また不毛な争いをしている二人の騒ぎを聞いて。  
「あ・ううん。こっちの話。・・・プレゼントはパパトママがくれるんだったら何でも良いの・・。」  
 汐は笑顔で答えます。
「そっか。汐は良い子だな~。よし、パパがこれといったものを買ってきてあげるから」  
「私も汐ちゃんに似合うだんご大家族限定グッズを♪」  
「やっぱり買うんかい・・」 
 ・・てかあったんだ本当に・・。 
 ちょっと脱力感に襲われた朋也を横目に   
「明日早いし・・今日疲れちゃったからもう寝るね。おやすみなさい。パパママ」  
と布団に入っていきました。   
「ああ、おやすみ汐」  
「おやすみ汐ちゃん」  
両親のおやすみの言葉を聞きながら汐は深い眠りにつくのでした・・。


ー不思議な白い大地をとぼとぼと歩くー ーそこには生きているもの 動くものは何も無く ただ静かに光が降り注ぐー 

・・そんな幻想的な世界を汐は歩く。夢?・・いつもの夢・・汐はそういう自覚はあるのだが・・どこへ行けばいいのか・・何をすればいいのか・・それは汐にはわからない。

ーそこはいつも光が降り注ぐー  -雪のような・・でも決して雪では無い 明るい暖かい光が降り注いでいるー 

 汐は降り注ぐ光をのぞいてみた 光は点滅し その光の記憶が汐に情景を見せてくれた。  
・・ある光はある女の子と男の子の出会いの情景を。  
・・ある光は男性と女性の幸せな生活を。  
・・ある光は男性と女性の永遠の別れを。  
・・ある光は少女と・・汐によく似た少女とその父親が雪の中で抱き合うシーンを描きだすのだった。

ーそこにはたったひとりしか生きているものはいない それはこの世界にひとりだけの少女ー   -いや一人ではない 不恰好な1台のロボット それだけー 

汐はある光を見つけた。その情景は少女が・・野原の中を必死で探しているのであった。
父親からもらった初めてのプレゼント・・・無くなったものを取り戻すために・・泣きながら必死で。大切だから・・。  
その情景を見ると汐は何故か悲しい・・そして切なげな気持ちになる  
ふと・・  汐が見上げてみるとそこには一人の少女が立っていたのだった。

ー少女は何でも作る事が出来た その世界においては 神でもあり 世界でもあるー  -ただ終わりのときはやってくる 静かに ゆっくりとー  

「誰?」 
「・・」 汐はその少女に尋ねてみたがその質問に答える事は無く。 
「あなたが探していたものはこれでしょう?」  
と古びたでも何故か温かな感じがするロボットを差し出した。  
「・・」 汐は手にとって見ると、それは懐かしいような、見覚えがあるような・・そんな気持ちにさせるのでした。   
「うん・・これだと思う」  
汐は少女に答えたのでした。

ーでも悲しまないで 終わりは始まりでもあるのだからー  ーこの世界は消えゆくけれど 待っている世界も必ずあるのだからー  

「あげるわ」 
少女は汐にこう告げた。 
「ほんと?」 
 汐は嬉しそうにロボットを抱きかかえた。 
でも汐は見た。少女の悲しげな表情を。とても大切なものを手放してしまったような悲しげな表情・・。 
 「でもあなたにとって大切なものなんでしょう?・・受け取れない」 
 汐は返そうとするが・・少女は笑顔で・・悲しい笑顔で首を振った。

ー少女は静かに眠りにつく 傍らには古ぼけたロボットー  -手をつなぎながら二人は永遠の眠りにつく 幸せな表情で・・-  

「これは悲しい事だけど嬉しいことでもあるの」  
「だってこれはもともとあなたのものだったのだから」   
「そして私はあなたでもあるの。あなたは私でもある・・わかる?」  
 汐は少女の行ってる意味はわからなかった。
・・でも気持ちは伝わってくる。意味はわからなくても、伝わってくるものはある。だから汐は 
「うん」 
とうなずいたのだった。
それを見た少女は微笑んで・・そして白い世界に消えてゆく・・。
汐は追いかけようとしたが・・足は少しも動かなかった。  

ーまた会えたねー -ありがとうー ーそしてさようならー  ーパパによろしくー 

そういった単語が世界を駆け回り・・そして消えていった。 同時に世界が白くゆがみ汐は戻ってゆくのだった・・戻るべき場所へ・・


ふと朋也は目を覚ました。・・まだ起きるまで時間があるというのに。
何気なく汐の寝てる姿を見ていると、汐の手の中にしっかり握りしめられているものがある。
不思議に思ってそれをよく見てみると、それは古ぼけた1台のロボット・・。
そしてこの世界には朝日が昇り始める。・・・今日は汐のバースディ・・・  

<END>

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