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2010.07.25
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カテゴリ: カテゴリ未分類
「自動車強盗殺人事件」これは小説の題名ではない。私の町で実際に起きた事件である。当時新聞は、この事件のことを、こう命名した。夏の夜のことだった。
私は小学校の低学年生だったが、その当時のことを鮮明に憶えている。私も映画なら通行人のような形で、登場するのだから。
その事件は、父と息子が運転するタクシーに、ふたりずれの男女が乗り込んだことから始まる。そして、私の町にあった製薬会社の裏手まで来て、運転席の父子に襲いかかり殺傷に及んだのだ。犯人が去った後、息子のほうが這いつくばりながらたどり着いたのが、うちの親戚の家。親戚はうちに助けを求めた。夜中の2時頃のことだった。
家じゅう寝静まっていたが、私だけ起きていて、牛乳を飲んでいた。「起きてくれ、起きてくれ」私は玄関まで行った。
「だーれ」
「ちこちゃん、皆を起こしてくれ、早くしてくれ、頼む!」
起こしに行ったけど誰も起きてくれなくて、私はやかんをがんがん棒で叩く。最初に起きてきたのは母の一番下の弟で、私を見るなりこう言った。
「なんだお前か、とうとう狂ったか」
訳を話しているうちに、家じゅうが起きてきて、親戚を交えて、大騒ぎとなった。なにしろ動転していたので警察にも連絡せずに、親戚は家に来たのだ。うちの船で怪我人を向こう岸に着けそこに救急車を配置してもらうことになった。私は見たかったのに家の中に監禁された。

「おばあちゃん、それじゃあ歩けない」と言ったら強引に引きずられるように歩かされた。目隠しを外された時にはもう鉄塔は見えない所に来ていた。だから人間がイモリの黒焼きのようになったところを見そびれたわけ。
「見なくて良かったじゃないの。夜、うなされるよ。眠れなくなるから」母の妹たちはそう言った。そうなのかも知れないのだが、やはり見たかったような気がする。遊び友達は皆見たのに私だけ見ていないのだ。それに、たとえうなされたとしても経験なんだし。でも、やはり見なくて良かったのかも。
やかんをがんがん叩いて家じゅうを起こした件は、近所中に知れ渡りその話を私はあちこちで話す羽目になった。そんな話を皆なんであんなに聞きたがったのだろう。いまでも不思議だ。





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Last updated  2010.07.26 00:53:39
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