アンティークな琥珀堂

アンティークな琥珀堂

ブルー・ウィロー



ブルー・ウィローという、古い食器のパターンを知っていますか。

1780年、銅版彫版師トーマス・ミントンが描いたのがはじめとされています。

ウィロー皿

この絵柄は、18-19世紀にかけて、イギリスで一番人気のあったものなんですって。

日本に入ってきたのは、江戸末期。
そして、日本でも瀬戸や、多治見で輸出用磁器としてたくさん生産されました。

それで、もしかすると、私達は、どこかでこんなような柄に遭遇していたかもしれないのです。

空に、2羽の鳥、橋の上に3人の人影。
ここは、中国のどこかですよね。
日本では、別に珍しい柄でもなかったので、それほど持てはやされたわけではなかったらしいです。

2005-09-29 07:11:13

しかし、ヨーロッパの人々にとっては、異国情緒たっぷりのすばらしい絵に見えたらしい。
しかも、この絵には、悲恋物語が隠されているのです。

それは、中国の高官の娘、クーンと、高官の青年秘書チャンの物語です。
二人の恋は、身分違い。
遂に、駆け落ちして、小さな小島で暮らしていました。
しかし、父親は、執拗に二人を探させ、見つけ出し、二人を殺してしまったのです。

殺された二人の魂がつがいの鳥となった、2羽です。
そして、橋の上の3人の人物。左から、チャン、クーン、父親なのです。

そう思って、この皿の絵を見ると、うっと、涙が・・・

全然、欲しくなかった古ぼけた絵柄の、C&Sだったのですが、突然欲しくなり、突然、集めたくなり・・・

実は、ブルーウィローを集めているコレクターは、世界中にいるのだそうです。
イギリスの磁器が世界を席捲したのは、高価な手描きの陶磁器に、転写の技術を投入、大量生産の先鞭をつけたからだと言われています。

お花の転写も人気がありましたが、当時、最も人々が憬れていたのは、中国や日本の青い染付けでしたよね。
それらは、この転写の発達によって、やっと人々の食卓に登場したわけね。

日本では、オールドノリタケなどが、このウィローパターンに独自のデフォルメを加えて逸品に仕上げています。写真で見てもすばらしいです。

しかし、ブルーウィローに限っては、この庶民的なお皿の方が哀愁がありますねえ。
私のC&Sの写真は、少し、グリーンがかって見えますが、よく中華料理店にある青なのです。

しかし、いろいろな青があり、濃紺に金のウィローなどは、なかなか高級な感じ。
いつか、見つけたら買いたいなあ。

ところで、楽天では、見つからなかったのですが、日本にはブルーウィローがたくさん眠っていると、言われているそうです。

今ひとつ、人気がなかったおかげで、保存状態もいいそうな。ご自宅の古い食器を整理したら、この青い悲恋が出てくるかもよ。





☆ ブルー・ウィロー その2 ☆

友達の リカチャン さんが、スコットランドのエディンバラと春に子供達と訪れたダニーデンについて、記事を書いてくれました。

不思議なもので、全く行ったことのない場所でも、知っている人が住んでいると、ニュースも気になるし、ふとしたことで地名などが目に止まり、親しみが沸きます。

一度、イギリスに行ってみたいなあ。本場で、例の青い陶磁器、ブルーウィローを探してみたいなあ。
そう、思いつつ、ある骨董やさんに入ったところ、小ぶりな色の薄いウィローが、ぽつんと置いてありました。

薄いブルーウィロー


色の薄いウィローは、比較的新しい。
しかも、カップの底にひびがはいり、金も少しはげて、いい状態ではありません。

裏を見ると、かすかに、Blair と、読めます。

ブレイヤー、えーと、どこかで聞いたような。
しかし、そんな会社があったかどうか、
あったとしても、有名じゃなさそうな・・・・

しかし、何故か置いておくことができず購入し、ブレイヤーって何だっけ、と考え続けてしまいました。
どうも、最近は、物忘れがひどく、芸能人の名前など、のどまで出掛かって、出て来ないのね。
年かなあ。

しかし、はっと、思い出したのです。
最近、読んだ本の中に、Blair Castle というのがあった!!

スコットランドのハイランド地方のほぼ中央に、ヒースの花に囲まれて建つ真っ白いお城。
100以上のお部屋があって、現在、10代目のアスル公爵のお城。
そして、おびただしい陶磁器のコレクションがあり、マホガニーのキャビネットはセーブルの逸品で埋まっていた・・・と、いう、「英国陶磁器の旅」菅原佳子さん。
の一節でした。

しかし、このブルーウィローは、勿論、セーブルではありません。(笑)
私は、また、想像します。

お城で働いていたメイドさんを。
彼女は、赤いほっぺの気のいいお母さんで、セーブルの陶磁器を大切にケアしています。
それは、お城のお殿様のもので、庶民に手が出るものではありません。しかし、当時、ブレイヤーでも、陶磁器産業は興りつつあったのです。

高価な手描きは無理ですが、青いプリントの食器が少しづつ出回るようになった。
そこで、ティーカップをひとつ、買いました。
中国の悲しい物語を描いたティーカップは、当時流行のものでした。

ある日、彼女の娘が告白します。好きになった人と一緒にニュージーランドへ行きたいと。
そこに、何があるかわからないけど、新しい世界に行って、ふたりでやって行きたいと。

ニュージーランドなんて、そんな遠くに行ったなら、もう、二度と会えないでしょう。行かせたくない。しかし、娘の輝く顔を見ていると遂に、合意してしまいます。

そして、大切な、ブルーウィローのティーカップを持たせたのではないかしら。

など、ひびがはいって使えないカップを眺めつつ、考えておりました。


☆☆ ブルー・ウィローの鳥にみる、眉の時代考証。☆☆

ブルーウィローを求めて、アンティーク・ショップの町として知られている(?)ブルズに行ってきた。ウェリントンから車で2時間ほど北にある小さな町だ。

そこは、延べでたった100mほどのメインストリートに、実に、8件のアンティークショップと、一つのミュージアムを抱えている。

少し前に一軒つぶれ、私たちが訪れた日、今月一杯でクローズの店がさらに一軒あった。

ウェリントンでも、次々と老舗のショップが姿を消している。理由は、簡単。
インターネットの普及で、コレクター達がはるばる店に足を運ばなくなったから。

オークションで、価格はますますオープンになり、ジジババ中心のオーナー達は、ついて行かれないのである。
馴染みになり、オーナーから様々な知識を仕入れつつ、失敗したり、思いがけず掘り出し物に遭遇したり、という楽しみは、確実に減ってきている。

寿司屋のカウンターでトロを食べるのと、回転寿司で食べるのの違いに似ているような気がする。
寂しい限りだが、回転寿司にお好み注文が復活したように、また、ジジババも巻き返してほしいものだ。

さて、その今月一杯で閉まる店で、この皿を買った。
BOOTHSというメーカーが1950年代に古いブルーウィローを復刻したもの。

2005-10-30 09:54:29

金の使い方がセンス良過ぎだが、ブルーウィローの定番の一つなので前から欲しかったのだ。
で、つくづくと眺めると、

ブース鳥

なんか、鳥がオデブのような。
フグが翼をつけたように見えませんか?
早速、他のお皿を見てみると、例えば、Johnson.Bro.の現代物(80年代)は、すっきり、さわやかな二羽の鳥なのである。
ほらね。

ジョンソン鳥

そこでいくつか並べてみると、鳥たちは皆、違った表情を持っていることに気づいた。
「天にあっては比翼の鳥、地にあっては、連理の枝とならん。」と歌ったのは白楽天だったが、このウィロー(柳)の恋人達も、比翼の鳥のように地上で得られなかった幸せを求めて天に飛び立って行くわけで、元は、人なのだ。

古い鳥

そこで、窒印もない、古いウィローの鳥を見ると、
な、なんと、眉毛が・・・・・

ああ、この2羽の鳥は、誠に恋人達の生まれ変わりだったのだ。
古いパターンには、まだ、人間臭さが残っているんだわ。

100年前のロイヤル・ドルトンには、美しい切れ長の眉がある。70年前のアルフレッド・ミーキンの鳥も、細い眉が残っている。
そして、眉は次第になくなり、チャーチルのように、ホントのモダンは、ただ、鳥が2羽飛んでいるだけ。
どんな時代の印判を使っているか、眉でわかるかもね。

注:これは、私の推測にすぎません。
  学問的根拠はありませんのであしからず。





サイト・マップへ




道具屋からのギフトへ



美味しさネットへ





© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: