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実は、このたびイタリアから日本に戻ることになりました。イタリアでは1年間本当に貴重な経験をさせてもらい今後の自分の仕事に生かして生きたいと思っています。また、新チームとしましてはFC東京に帰ってきます。いくつかのJクラブからお話を頂いたのですが、選手時代にお世話になったクラブに愛着を感じ戻ることになりました。FC東京にはポテンシャルのある日本人選手もいますし、新加入のワンチョぺ、エバウドやすでに信頼を勝ち取っているルーカスがいます。今回、長年お世話になった大分トリニータを離れることになり複雑な心境ですが、新たな出発そしてJリーグ優勝という大きなモチベーションですでに動き出しています。FC東京共々応援お願いします。
2007/01/15
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イタリアに来て早くも4ヵ月半が過ぎ、2月までのあの厳寒が嘘のような春日和がイタリアを包んでいる。今回は、イタリアと日本人選手のフィジカルと食事の違いについて触れてみよう。 日々、練習や試合を行っていく中でまず初めに違いを感じずにいられなかったのは、やはりフィジカル(身体のサイズやポテンシャル)でした。例えば日本人のセンターフォワードで180cmを超えるとスピードが無かったり、アジリティー能力に欠けていたりするが、こちらでは大型のストライカーでもスピードとテクニックを持っている。よく日本では速くて小さい選手と大型のターゲットタイプを前線に並べるチームが多いけどこちらでは2枚とも万能型を並べるクラブが多い。例えばミランはジラルディーノとシェフチェンコ、ユーべはイブラとトレセゲみたいに。また左利きのディフェンダーは日本では希少だがこちらでは180cm前後で左利き、おまけにスピードもある選手が育成年代の子供たちの中からも発見できる。勿論、その全てが優秀な選手ではなくその中からテクニックと状況判断に優れた選手だけがプロとして残っていく。確かに最近は日本人選手もフィジカル的に優れた選手が多くなったけど、まだまだこの差は歴然として存在する。単純にフィジカルベースの素材という比較になるとちょっとまだ差があるかなと感じている。ただし、基本的な速さ、強さ、高さ、ジャンプ力、ステップワークに反転力、運動量などの中から日本人は何が劣っていて、どの部分が優れているかをしっかり把握して行くことで若手選手の育成にも生かされていくと思う。(実際、日本サッカー協会もフィジカル分野のプロジェクトを立ち上げている。) では、イタリア人選手と日本人選手の食生活について比べてみよう。1月にここヘラス・ヴェローナに名古屋の川島選手(アテネオリンピック代表)が10日間ほど練習参加しに来た。練習が終わり川島が私にこう言った「立石さん、日本人選手は凄く食事に気を使うように教育されていますよね。だけどこちらの選手はそうは見えないんですけど。」彼の率直な意見だろう。たしかに、試合前日の食事の内容はチーズに生ハム、ステーキとサラダ、そして、これまたチーズたっぷりのリゾットかパスタで、驚くことにワインもOK(大量ではなく)だ。最初は私も疑問に思い、「他のチームは?」と尋ねて回ったが、「パルマもそうだ」や「トリノもそうだった」などの答えが返ってきたものだ。日本の細かい指導者であれば、試合前日は生ものは駄目、ましてやアルコールなどは完全にNGだろう。単純な食事の量にしても日本人選手のほうが遥かに良く食べる。何故か。この答えは人種の違いとしか説明が付かない。最後にもう一つ彼らイタリア人は「楽しむ」ことを忘れない。「何を食べるか」「いつ食べるか」などといった重要な要素も大切だが「楽しく食べなきゃね」と我がクラブのフィジカルコーチはよく言ってみせる。では我々はどうやって彼らに勝っていくのか。答えはやはり、テクニックと優れた判断力、それに活動量と組織力そしてこういった食生活を含んだ緻密な準備、これが我々が世界で戦うには絶対不可欠な武器になるだろう。
2006/05/25
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イタリア、スペイン、イングランド。日本のサッカーファンにもお馴染みの3大リーグを持つこれらの国はサッカーそのものの質においても、マーケティングの部門においても世界をリードしている。そこには最高の選手と最高の環境そして、最高の運営組織と最高サポーターがいてと・・・これが大方の人々が描く3大リーグのイメージなのか。それはどうであれ現実には、それらの条件が全て揃っているのは、ほんの一部のビッグクラブのみである。少なくともイタリアはそうであるといえる。 今回は、日本とイタリアのプロクラブの環境について触れてみたい。まず、スタジアムはイタリアも日本も各クラブの所在地の市・県の公営であることが通常であり、クラブがプライベートのスタジアムを持っていることはほとんどない。(やっとユベントスが自前のスタジアム建設に乗り出した)よってスタジアムのサービスという点においてもイングランドのプレミアリーグのそれと比べると確実に劣る感がある。 練習場においてはどうかというと、イタリアの特に北部のチーム(トリノ・ミラノ・ヴェローナ・ウディネ等)は11月下旬から3月上旬までの間、練習場の芝生が凍りつきかなりの悪環境でのトレーニングを余儀なくされる。私自身、ここに来て始めてのころはこの条件を受け入れるのに苦労した。何故なら、日本でのコーチングは良いピッチに良いクラブハウスがあるという前提があった。例えば、ボールポゼッションのトレーニングにしてもワンタッチ・ツータッチの精度やパススピードを徹底してうるさく言ったが、ここではピッチが凍っていてボールが走りすぎるか、氷が溶けてぬかるんでいるかの何れかでなかなかクオリティーの追求をしにくい。しかしながらプレーヤーたちはそんな中でも滑りながらストップターンを繰り返しながらボールをコントロールしていく。日本の選手たちなら「これじゃ練習にならないよ」とでも言うだろう。これらの、環境に対する考え方はリーグ運営の中にも窺える。代表的な例は公式戦のボール。公式戦で使われるボールは統一されてなく、各ホームチームが用意したものを使用する。例えば、インテルはナイキで、ミランはアディダスみたいにそれぞれが各自スポンサードを受けるメーカーのものを使用する。これは世界中見渡してもあまり例がないと思う。敵地において重さも跳ね方も全く違うボールを使用する。しかも相手チームがボールは用意するためウォーミングアップ時に相手チームからボールを借りるのだが、ほとんどのチームが6,7個くらいしか貸さない。最初は思わず笑ってしまったものだ。お金のあるクラブは全チームのボールを購入し(セリエAは20チーム、セリエBは22チーム)、しっかり準備も出来るが、財政的に厳しい我がクラブはアウェーでの試合は、かなり条件的に厳しいものになる。これまた日本はというとJリーグ用とナビスコ杯用に分かれているものの全クラブ同じ条件で試合が行われる。Jリーグとナビスコ杯のボールの違いにも敏感な選手も中には多く、練習からボールを全て入れ替えて行ったものだ。 この環境の違いに私は考えた。環境の違いは感覚の違い。勿論、ボールは統一されていたほうが良いし、グランドも常に最高の状態を維持して欲しい。しかし、もし日本人選手がこちらでプレーすることにチャレンジするなら、この環境に対するタフさ、応用力こそ本当に必要とされるものであるように感じている。
2006/05/15
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先月、フィレンツェで行われたイタリア対ドイツの試合は、ワールドカップを3ヵ月後に控え両国のチームとしての完成度を確認するための重要な試合になるはずだった。しかし、内容・スコアともにイタリアがドイツを圧倒した。正直な私の感想は、イタリアの強さよりもドイツの状態の悪さの方が印象に残った。インテルへの移籍が噂されていたバラックも全くいいところがなく、クリンスマン監督のベンチ内での表情は「打つ手なし」という様にすら感じられた。 では、イタリア代表は本当に強いのか。私の周りのサッカー関係者からは「ワールドカップ前に調子がいいと、いつも本番でダメ」だそうで、前回優勝国のブラジルもたしかそうだったような・・・。 まあ、ジンクスはさて置き、私はドイツワールドカップにおいてのイタリア代表はブラジル代表に次いでの優勝候補だと思っている。理由は2つ。1つ目は、中盤の選手(MF)の充実。イタリアは常に世界のトップクラスのGKとセンターバック、そしてストライカーに恵まれてきた。今回も例に違わずGKにブッフォン、CBにカンナバーロとネスタと、このトライアングルを切り崩すには他国のストライカーも苦労するはずだ。そして前線には今やアズ―リのエースへと成長した感のあるトニを筆頭に他にもインザーギ、デルピエロ、ジラルディーノにトッティと3トップでも2トップ+トップ下でも1試合2点以上取れるメンバーは揃っている。この中から、1982年のロッシ、1990年のスキラッチ、1994年のR.バッジョの様な大会中の得点王争いを演じるスターが出てくる可能性は極めて高い。 ここで私が注目したのは、今までのアズーリと比べ今回のチームはMF陣のタレントが非常に充実していることだ。中盤の底にピルロ、左にデ・ロッシ、右にカモラネージ、また違ったタイプのガントゥーゾなど、優勝した1982年のアントニオーニ、ブルーノ・コンティ、タルデリ達を彷彿させるクオリティーの高さを魅せている。特に私のお気に入りはデ・ロッシ(ローマ)で、攻守に高い水準でプレーできしっかりした守備からチャンスと見るや長い距離を走り、相手の最も危険なスペースへ飛び出していく。その上決定力もあるから恐ろしい。これまでのイタリアの試合運びからはしっかり守ってカウンターで勝利を手堅く取っていくという印象だったし、中盤の選手にも正直世界のトップレベルの中で「違い」のだせる選手は見当たらなかったが今回は違う。こうった事から現段階におけるイタリア代表のチームバランスは十分に優勝候補に挙げられる。もう一つは、リッピ監督とイタリアサッカー協会そしてマスコミ、国民の関係である。勿論、一部には現体制やサッカー自体の戦術・采配に異論を唱える人もいるが、現在ワールドカップを1ヶ月半後に控え彼らの大会に挑む準備体制、精神状態は非常にまとまっていると言ったほうが最適な表現になるだろう。
2006/04/18
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現在、私の所属しているヘラス・ヴェローナは103年(1903年)の歴史を持ち、イタリアの中でも熱狂的なサポーターを持つクラブとして知られており、1984-85シーズンに一度スクデットも獲得している。その後、セリエAの中位に位置しながら多くのスター選手をビッグクラブに送り込んできた。ジラルディーノ(パルマ→ミラン)、オッド(ラツィオ)、カモラネージ(ユーべ)、ムトゥ(ユーべ)トンマージ(ローマ)など、常勝という名のプレッシャーからは無縁の環境でのびのびとプレーし、その才能を伸ばすことに成功してきた。また、近年ではブランデッリなどの優秀な監督も輩出している。 しかし、セリエB降格してからのここ数年は経営不振から完全にセリエBの中堅クラブとなっている。そういった状況の中、昨年就任したアレナトーレ(監督)マッシモ・フィカデンテは、若手選手を鍛え上げセリエA昇格まであと1ポイントというところまでこのチームを引き上げた。しかしながら、今季のシーズン前のマーケットにおいても資金確保のため主力4名をセリエAに放出せざるをえなかった。そんな中、開幕した今シーズンはさらに若返った選手達を、38歳の青年監督はさらに鍛え上げ現在22チーム中10位につけている。ボローニャ、アタランタ、ブレッシア、トリノなどが所属するセリエBは容易ではなく、上位の5、6チームはスペイン、イングランド以外の国なら間違いなく1部の中位クラスの力を持っている。 とここまで説明したところで、そんなクラブ内での私の役割はまず当然であるがトレーニング中の監督のサポート。練習メニューは全て監督が決めるので、そのトレーニングが効果的に行われるように細かい部分をサポートしていく。2つ目にはゲーム分析。自チームの分析(反省/課題)は監督が行うが、それを選手に説明する際により解りやすくするために映像や図を編集する担当。また、先週からは次節の対戦相手の事前のゲーム分析を担当するようになった。3つ目は空いた時間を使って、セリエA、B、C1やC2、またはプリマヴェーラ(ユース)の試合を見に行く。つまりスカウト活動で来期の準備である。勿論、テクニカルディレクターが他にいるので決定権はないが情報を集めリストを作るまでを行う。すでに、イタリアに来て3ヶ月が過ぎようとしているが徐々に仕事にも慣れ自分のペースで仕事ができるようになって来た。 さて、イタリアのサッカーと聞いて直ぐに日本のサッカーファンなら思いつくイメージはやはり「カテナチオ」だろう。では現実はどうかというと「Si/はい」となる。これはあくまでも私の見解であるが、イタリア人はかなりの負けず嫌いだ。とにかく負けることを嫌う。それは、普段の会話の中でも生活の中からも感じられる。つまり優位に立ちたいというより「やられたくない」というほうが強いように感じられる。私のクラブのコーチ陣も他クラブの友人のコーチも必ず揃えたかのように口にするのは「しっかりとした守備はよい攻撃を生む」、「リーグ戦は失点の少ないほうが上にいける」など何だか中学時代にコーチから言われたような言葉が出てくる。また、リーグのほとんどのクラブがオーソドックスな4-4-2を使い選手の質と層で相手クラブに差をつける。戦術的な部分においても全てがまったく同じではないが大きく決定的な違いもない。ここまで言うと何だかイタリアのサッカーがすでに遅れてしまったつまらないリーグのように伝わってしまったかもしれないが、逆に最も効率的で最もシンプルな戦い方をするチームが多いリーグともいえる。もし「勝点3」を取ることがサッカーの真髄だと考える人ならこれほど参考になるリーグは他にないだろう。たしかに、応援しているクラブが負けるのは観たくない。できればいつも勝ってもらいたい。でも観ていて楽しいサッカーもして欲しい。と、サポーターの心理は複雑だ。また、実際に指揮を取る監督にしても、リスクを犯しても攻撃的に行きノンタイトルでも2部に降格しても見ていて楽しいサッカーを追及するか、つまらなくても必ずタイトルが欲しい、あるいは降格したくないなどの心理に対し忠実に自分の「任務」を全うするか。そうではなく、両方共存させればいいじゃないかという人もいるだろう。勿論、楽しく勝つことは全てのクラブ、監督の理想だがこの現実と理想の間で今までいったい何人監督がそしてクラブがもがき苦しんだかわからない。そこにまた、クラブの予算規模や選手の質などといった複雑な要素が絡み合う。この答えをいかにもシンプルにイタリアという国は解いていく。「負けたくない」「勝点3が全て」そして、それを成せる者を最大限にリスペクトする。これは偶然かもしれないが人材的(ポジション)にもイタリアはストライカーとゴールキーパーそしてセンターバックに常に恵まれてきた。ここ最近こそ若手のセンターバックの不足が危惧されているが、それでも可能性を秘めた選手は多く今後次第であろう。つまり何が言いたいかというと、安定感抜群のGK、強い鉄壁のセンターバックそして決定力のあるストライカー、これがイタリア的なサッカーをするための条件であることは間違いない。 ここまで「イタリア的」という言葉を多く使ってきたが、近代サッカー界においてもはや戦術的なあるいはスタイルといった部類の住み分けは存在しなくなってきた。現にチェルシーだってしっかりした守備から速攻を仕掛けるし、他にもそんなチームは数え切れないほど存在する。しかし、私が驚いているのは、ここイタリアではセリエAは勿論、セリエBでも、セリエC1、C2でも同じように戦う。まるでコピーを観ているようにきっちりとシステムを確立し、(フォーメーションは4-4-2、4-3-1-2、4-2-3-1)戦っている。勿論選手の質は落ちるが・・・ 最後に面白いデータを紹介しよう。現代サッカーにおいて時間とスペースはますます無くなってきた。そんな中、効率的に相手からゴールを奪うには相手からボールを奪ってから12,13秒以内にフィニッシュに持ち込むか、サイドからのクロスかリスタートによる得点これが現代サッカーのかなりの得点の確率を占める。通常、リスタート(コーナーキック、フリーキック、PKなど)は30~40%といわれているが、ここイタリア(セリエA,B)は昨年55%近くまでこの割合が上がった。私の同僚のコーチは言う「イタリアのリーグで流れの中からゴールをこじ開けるのは大変だ。どのチームもしっかりとしたオーガナイスされた守備を持っている。」トレーニングのほとんどの時間を戦術・フィジカル・リスタートに割き、大半のクラブがコーナーキックの守備時には11人全員をペナルティーボックスに帰還させるこの国は今年もまたUEFAチャンピオンズリーグの8強に3チームを送り出した。この先どんなにサッカーが進化し戦術が複雑化されたとしても、この国は「サッカーの(試合で勝つための)本質は何も変らないよ」と頑固に言い放ってみせるだろう。
2006/04/04
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