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2008.12.23
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カテゴリ: CWC観戦記
12月18日 FIFAクラブワールドカップジャパンM5 準決勝@日産スタジアム 67,618人(96%)

ガンバ大阪 3-5 マンチェスター・ユナイテッド
【得点者】
前半28分 ネマニャ・ヴィディッチ
前半46分 クリスティアーノ・ロナウド
後半29分 山崎雅人
後半30分 ウェイン・ルーニー
後半33分 ダレン・フレッチャー
後半34分 ウェイン・ルーニー

後半46分 橋本英郎

12月21日 M7 3位決定戦@日産スタジアム 62,619人(89%)

パチューカ 0-1 ガンバ大阪
【得点者】
前半29分 山崎雅人



 「相手の選手は全然汗をかいてませんでしたよ。もう、余裕でしたよね」。安田理大の試合後のコメントが、すべてを物語っていた。アジア王者のガンバ大阪は、彼らにとってのスパーリングパートナーにすぎなかったということだ。
 昨今流行の「エコ」とはほど遠い、軍需産業と自動車産業から熱烈な支持を受けて誕生したのが、アメリカのブッシュ政権だ。しかし植木等よりも無責任な大統領のおかげで、ついに1ドル=90円を割ってしまった。それでもレート換算すれば、優勝賞金は約4億5千万円、準優勝チームには同3億6千万円が転がりこむ計算となる。
 9千万の差は大きい。2日後のリガ・デ・キトとの決勝に向けて、マンチェスターは少しでも体力を温存したかったのである。

「エンドーがワントップの後ろでプレーしてくるだろうと予想してたんだよ。ところがルーカスが中盤に下がって、エンドーのポジションも予想とは違った。それが原因で問題が生じてしまったんだ」
 1902年創立の名門クラブに22年間にわたって君臨してきた名将も、「ありゃりゃ……?」と思ったことだろう。前身の創立から30年に満たぬ極東の無名クラブ監督に、まんまと裏をかかれたからだ。
 しかし西野朗の決断は、理にかなっていた。なにしろアデレード戦で、バイタルゾーンを活性化させる佐々木勇人と二川孝広のふたりを相次ぐ負傷で失ったのだ。得点アプローチで頼みの綱となるのは、遠藤保仁ひとりしかいない。ヤットにできるだけ多くのボールを集め、ヤットからの展開を狙う。だとすれば、2列目に彼を置くわけにはいかない。セルビア代表のネマニャ・ヴィディッチや、年俸12億のリオ・ファーディナンドに潰されるのは火を見るよりも明らかだからだ。


 主力ふたりの離脱とアデレード戦の冴えない内容から、戦前は「ガンバがボコボコにされるだろう」という見方が広く予想されていた。しかしガンバにとってはFIFA主催による初の世界大会参加であり、またプレミアの巨象との一戦に、一人ひとりの選手のモチベーションは間違いなくピークに達しているはずだった。逆にマンチェスターの面々は、無名クラブとの対戦を心のどこかでナメきっているにちがいなかった。先行しさえすれば、「自分たちの決勝進出は鉄板」という自信が油断を招いたとしても不思議ではない。このような理由から、筆者は「ガンバの1-3」を予想していた。
 さて、しょせんは人間同士のゲームである。西野監督のちょっとした工夫が、「もしかしたらスペクタルな試合になるかもしれない」という期待を試合序盤から昂ぶらせた。もちろん多くのファンには意外に映ったのかもしれない。だが、その「予想外」が昨年のレッズとはまた別種の、ひどく新鮮な興奮を生んでいた。
 開始2分過ぎの橋本と明神智和のミドルシュートを皮切りに、12分にはミチのスルーパスから播戸がシュートを放ち、スタジアムを沸かせている。

 いきなりのポジショニング修正に迫られたマンチェスターは、しかし冷静さを取り戻すまでに15分もかからなかった。
 「全体のプレッシングを高いラインで敢行しながら、ディフェンスもリスクを恐れずにプッシュアップしていくことを指示しました。ところがそれに対してマンチェスターがサイドチェンジを使い始め、だんだん対応できなくなっていったんです」

 28分だった。クリスティアーノ・ロナウドのドリブルから、コーナーキックを奪う。今季のガンバの課題の一つだった、セットプレーへの対応が問われる瞬間だ。だがお約束通りゴール前まで上がってきたビディッチが、あっさりと頭で先制ゴールを叩き出してしまう。
 さらに前半ロスタイムには、ほとんど同じ展開から打点の高いCRのヘディングシュートが2点目を追加した。
 ベンチから眺めていた西野は、首を振りながら嘆いたものだ。
 「リスタートからの失点には、どうにもならないところがありました。コーナーキックではオフサイドトラップもとれませんからね……」

 前半を2-0で折り返して、マンチェスターの決勝進出はもはや「鉄板」のはずだった。カルロス・テベスやライアン・ギグスをはじめとする前線の動きが急に鈍くなり、時折り抜けてきたボールにCRが恐ろしいスピードでコントロールを見せるだけだ。これに対してガンバのディフェンス陣は、まさに体を張って守っていた。
 ファーガソンのファンサービスもあったのだろう。テベスに代わってウェイン・ルーニーが投入された、後半29分のことである。橋本が得意の縦の動きから山崎に高速パス、右足を振り抜いて1点を返したのだった。
 ところがその直後、「1-2となってからのあのゴールは、ガンバにかなり精神的ダメージを与えたはず」と、ファーガソンがそう指摘したルーニーの3点目が決まる。ダレン・フレッチャーからのボールを中澤聡太の逆をついて流し、そのまま撃ち込んだルーニーのファーストタッチだった。記者席から一部始終を見守った筆者は、「なぁんだよ」と、思わず落胆の言葉を漏らすほかなかった。しかし、西野は淡々と振り返る。
「縦へのボールの動き、縦への人の動きに対処できてませんでした。ルーニーの3点目がその好例ですね。本当に際どいところを取ってきますから。とくに後半は、マンチェスターのシンキング・スピードとフィジカル・スピードに対応できませんでした。トライしようとする意図やイマジネーションがあっても、ほとんど消されましたからね。違うグレードの相手ですから当然でしょう……」。
 残り15分で筆者が予想した1-3、再び2点の開きだ。大画面モニターに映し出された西野の表情には、絶望感にも近い焦燥が浮かんでいた。
 さらに3分後にはフレッチャーのヘディングシュート、その1分後には99年大会MVPのギグスからのパスを、裏へ抜け出したルーニーが再び決めて1-5、ガンバは死に体も同然だった。ロスタイムを含めても、時間は10分少々しか残っていないのだ。

 しかし、ここからのガンバの反撃が、スタジアムを大きく揺さぶる。
 まず後半38分、左サイドからクロスを狙った播戸のボールがネビルのハンドリングを誘い、PKを奪う。これを名手・ヤットが独特のステップでエドウィン・ファンデルサールの指先を抜いて2点目を決めた。
 他のメディアと共闘するように「ロナウド」だけを連呼し続けてきた中継局が、CRの表情をモニターに映し出す。彼は、明らかに怒っていた。
 さらに46分、ルーカスのスルーパスに橋本が食いついてマンチェスターのネットを突き刺す。ガンバが5点を失うのも珍しいが、マンチェスターが3点を失うのはそれ以上に予想外の出来事だった。手もとの記録によれば、プレミアリーグ11月のハル戦、来日直前のリーグ杯ブラックバーン戦でしか今季は経験していない。
 橋本の得点直後、CRの表情はさらに険しさを増していた。まるで「そんなはずがないだろ」とでも言わんばかりである。だがいくら無名とはいえ、ガンバのような攻撃好きなチームに対して手を抜けば、失点は必然である。
 試合終了直前、約40mのフリーキックを狙った彼が鬼の形相で走り出したことをお伝えしておこう。己の身を削ることを恐れぬ好青年である。





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最終更新日  2008.12.23 20:14:03
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