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2011.09.05
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Sep.02 FIFAワールド杯アジア最終予選@埼玉スタジアム 54,624(91.0%)

日本 1-0 朝鮮民主主義人民共和国
【得点者】
後半 49分 吉田麻也(VVVフェンロ)

 ここ数年、日本の天気がおかしい。真冬なのに春のように温かかったり、肌寒さを感じるなかで揺れる菜の花を見つけたりする。8月のなかばにも、長袖が必要な夜があった。こうなると、いつから残暑が始まり、いつから秋になるのかもわからなくなる。日本人が古来から培ってきた「季節感」というものが、失われつつあるのかもしれない。
考えてみれば、日本に限定された話ではない。ここ数年来、世界各地から洪水や山火事、トルネードなどの被害を伝えるニュースが増えてきた。先月23日にも、有感地震が少ない地域として知られるアメリカ東海岸をマグニチュード5・8が襲った。震源地のバージニア州では、なんと114年ぶりの天変地異だったという。
日本がおかしいのではない。地球がおかしいのだ。3・11の前にも南アジアのスマトラ、カリブ海のハイチ、南太平洋のニュージーランドと大規模な地震が続き、「日本を襲うのは時間の問題」と直感した筆者は、思わず震災セットをデイパックに詰めたほどだ。
この惑星でサバイバルするための極秘プロジェクトが、どこかの国で進められていても、決して「フィクション」とは言えなくなった。いまさら「地球に優しく」なぞと声高に吼えてみたところで、日本人だけの努力では解決できない。島国ニッポンの周辺国には、ひどく民度の低い大国もあるのだ。呼吸しているだけでも環境を破壊しているのに、そうした現実を直視せず、対処の手も伸ばそうとしない国が──。

この日の埼玉スタジアムの上空は、そんな地球の現在地を象徴するような天候だった。暴れ者の台風12号が直撃するというので、浅草で購入した祭礼用のレインコートや大型の傘を持参したのに、あっさりと肩透かしを喰らった。かと思えば、前半10分過ぎから雨足が強くなりはじめ、強風に乗った雨粒が屋根付きのメインスタンド記者席まで吹き込んできた。手元の資料はあっという間に無残な状態となり、大勢の記者たちが蜘蛛の子を散らすように上へ上へと立ち去った。


ザックは中盤に優秀なパサーを集めた4-2-1-3(=あるいは4-2-3-1)システムを選択した。「2」は、左が遠藤保仁(=ガンバ大阪/31歳)、右がゲームキャプテンの長谷部誠(=シュツットガルト/27歳)である。トップ下には昨季、サンフレッチェ広島から浦和レッズへ完全移籍した柏木陽介(=23歳)、左がいま最注目の「日本版メッシ」香川真司(=ドルトムント/22歳)、右が「ダインビングヘッド野郎」の岡崎慎司だ。そしてセンターフォワードを務めたのが、おそらくはこの試合を最も楽しみにしていたであろう李忠成(イ・チュンソン=サンフレッチェ広島/25歳)だった。
狙いは明らかだ。ボールを失うことがめったにない「2」でパスを回し、正確なフィードで前線の3人にチャンスを作らせる。セカンドが生まれても、バックアッパーに陽介がいる。つまり、日本の波状攻撃を予想させるような選手起用だった。

コイントスで勝ったにもかかわらず、ハセがなぜ強烈な風下を選んだのか謎だが、その先で待っていたのは、まるでこの日の天気のようにグズついた内容だった。前線の3人が5人の北朝鮮守備陣に絡めとられ、日本の心臓部であるヤットも徹底マークに遭う。
右ヒザの半月板損傷で戦列を離れた本田圭祐(=CSKAモスクワ/25歳)は、力強さやミドルシュート、プレースキッカーという点で、たしかに日本の引き出しの数を少なくさせた。かろうじてベンチ入りはしたものの、右足親指骨折に見舞われた中村憲剛(=川崎フロンターレ/30歳)が使えないのもわかっていた。だがいずれも、日本が誇るダイナモ・長友佑都(=インテル/24歳)不在ほどの影響ではないはずだ。彼がいれば、前線が4人になるシーンが、駒野友一(=ジュビロ磐田/30歳)以上に増えるからである。このゲームで筆者は、あらためて彼の存在の大きさを知ることになった。

「日本20本」「北朝鮮5本」という両チームのシュート数が示すように、日本のゲーム支配率は北朝鮮をはるかに上回っていた。記録によれば「日本66・1%」「北朝鮮33・9%」である。このようなアンバランスすぎるゲームでも、支配率の少なかったチームが最終的に勝利するというケースは、サッカーではよくあることだ。たとえば66年のワールド杯イングランド大会で、北朝鮮はイタリアを破ってベスト8に進んでいる。サッカーという競技は、こうした矛盾した側面も合わせもつ。それだけに日本は、前半2分のピンチをしのいだのが大きかった。
たしか今野泰幸(=FC東京/29歳)ではなかったかと思う。北朝鮮の右攻撃的MFチョン・イルグァン(=鯉明水、11番)は、昨年のU-19アジアユース決勝でオーストラリアを相手にハットトリックを記録した18歳である。同大会のMVPと、AFCの年間最優秀ユースプレイヤーにも輝いた危険な選手だ。中盤を省略し、ワントップに入った鄭大世(チョン・テセ=ボーフム/27歳)のフィジカルに活路を求めようする北朝鮮の守備陣が、右へワイドに開いたイルグァンにロングボールを送り込んだ。
自陣ゴール前、30mのゾーンで人数をかける北朝鮮は、攻撃に駒数をさけない。したがって、とりたてて危険なシーンには見えなかった。ところが、彼とのマッチアップにうまく対応したはずの今野が、濡れたピッチでスリップダウンしてしまうのだ。イルグァンはそのままドリブルでゴールエリア内に侵入し、強烈なシュートを放った。
サイドネットを突き刺したボールに安堵のため息をついたものの、イルグァンがテセにマイナスのパスを送っていたかもしれないと思うと、背筋に冷たいものが走る。なにしろ日本はその後92分間、一度も北朝鮮のゴールを割れていない。この日の北朝鮮に先制されてしまえば、彼らはなおさらディフェンシブな闘い方で臨んでくるだろう。ほぼ、お手上げである。

「今日の北朝鮮のパフォーマンスは、私がこれまで観たなかでも最高の集中力を保っていました。彼らの闘い方が良かったんだと、今日は率直に認めるべきでしょう。徹底的に引いてゴールにフタをして、入ってきたボールに対してだけアグレッシブに対処するというスタイルでした。このような天候のなか、日本はグラウンダーのパスで素早いコンビネーションを作り、相手の裏をとっていくことが必要です。ところが、ゴール前での相手の数が多すぎて、我われのスペースを閉じてきた。必然、日本はさらにスピードを上げていかなければならず、ミスが増えていきました」
アルベルト・ザッケローニは、「我われは志の高い集団です。日本が勝つのは当然でしょう」と言いながらも、北朝鮮にあと一歩まで追い詰められた心境を淡々と述べた。

(つづく)





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最終更新日  2011.09.07 17:18:31
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