『TSUGUMI』



つぐみは生まれつき病弱な女の子だ。
いや、病弱なんて生易しいものではない。
死と隣り合わせで生きている。
読んでいくとわかるのだが、その設定が実に巧妙だ。
死を前提につぐみは極めて純粋に刹那的に生きていく。

死を前提とした生は無駄を嫌う。
自分の『正義』を疑うことなく、最短距離でそれを成就しようとする。
そこに高次な『関係』から引き起こされる躊躇はない。
つぐみの言動、つぐみの行動が、ぼくらに生の日常を突きつける。
それは決して『ごっこ』ではない。
血の通った現実だ。

だからぼくらはつぐみに惹きつけられる。
つぐみの横柄な口のきき方も、わがままなヒステリーも、時には青白い殺意でさえも、すべてが刹那に強烈な輝きを放つ。
一点の曇りもない光。
いつ消えるかもしれない光。
その光に照らされてありのままの『生』が浮き彫りにされてゆく。

つぐみの強烈なキャラクターもさることながら、彼女を取り囲む人たちの優しさもうれしい。
つぐみの放つ強烈な光を強烈な優しさがつつみ込む。
その優しさがぼくらを辛うじてこちらの世界に留まることを許してくれる。
つぐみのいとこで物語の語りべのまりあ、姉の優子、お父さんとお母さん、彼氏の恭一、みんなの優しさがフィルターになってつぐみの鋭利な『生』を和らげる。

それはそれとして、吉本ばななの表現力はすごい。
すごく細かくて、そのひとつひとつに彼女の思い入れが込められている。
どんなに些細な感情もおろそかにされていない。
それと同じくらい叙事にも吉本は力を注いでいるし、独特の世界観に溢れている。
そんな吉本の表現もこの作品のおおきな魅力となっている。

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