『表層生活』



主人公は女子短大で講師をしている。
その主人公のもとに何年ぶりかで中学高校のときの同級生“計算機”から電話がかかってくるところから物語が始まる。
この物語にはいろんな形でバーチャルな世界が係ってくる。

まずは“計算機”が得意とするコンピュータの世界。
なかでもシミュレーションはまさにバーチャルだ。
シミュレーションによって現実は仮想化され、将来に起りうる自体を予想するための前提条件となる。

次に主人公の副業。
一種の恋人斡旋業なのであるが、紹介されたもの同士で結婚することは少ない。
彼ら、彼女らはそれぞれ精神的に軽く病んでおり、それを治癒するために恋人を斡旋する。
そこでバーチャルな恋愛体験によって社会復帰した男女が、他の人と結婚していく。。
ここではバーチャルは現実復帰するための予備空間だ。

そして“計算機”の趣味であるスカイダイビング。
この“計算機のスカイダイビング”は普通のダイビングではない。
崖や橋から飛び降りてパラシュートを開くと言うものだ。
“計算機”はさらに過激さをましていく。
どれだけ低いところから飛び降りれるか、どれだけパラシュートを開かずに我慢できるか。。
それをシミュレートし、実行する。
それによってバーチャルな世界が死と直面するスリル(もしかしたら安堵)によって一気に現実的な存在として認識される。

あとは主人公と“計算機”の在学していた中学と高校。
一貫教育の男子校なのであるが、友達同士であろうが後輩と話すときであろうが、敬語を使う。
そこにはなまめかしい湿った現実は存在しない。
それなのに、バーチャルでの結束は日常に解き放たれた時、より強固なものとなる。

そして。。。
この日常。
そんな彼らにとって、日常生活もバーチャルなものと化す。
いや、何が現実なのか、本当はだれにも答えられないのかもしれない。
ぼくの住む世界とあなたの住む世界は違う。。
そうなるとバーチャルな世界でしか、他人と共存することなどできないのかもしれない。

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