『モッキングバードのいる町』



主人公のケイはアメリカ人で軍人であるジェフと結婚し、アメリカの内陸部にすむ。
ジェフは優しかったが、退役し、年を取るとともにわがままなアメリカジンになっていく。
スウはケイの二十年来の友達だ。
ケイがアメリカに来たばかりの頃、いろいろと親切にしてくれたのが同じ日本人のスウだった。
スウの旦那フィルは物静かだ。
ケイもスウもアメリカで過ごした時間のほうが日本で過ごした時間よりも長くなった。
それでも彼女達は悲しいまでにニホンジンであった。

アメリカの乾いた都市の中で、彼女達の心も行き詰まってゆく。
文化の違いから来る価値観の違いが、さらに彼女達を追い詰めていく。
もう一人の日本人妻ジューンは「アメリカ」のプレッシャーから、自らの手で幼い息子を殺めてしまう。。
生まれ故郷でない土地、育った文化と違う文化、そして乾いた人間関係。。。
多文化の象徴としての「アメリカ」
原住民の文化を蹂躙し、新しい文化を作り上げた国「アメリカ」
そこにあるのはよそ行きの顔と街。
そう、「アメリカ」は虚構の象徴。

神を失った人間は虚構の世界の中で何を信じて生きていけば良いのか。
「ニホン」という拠り所をもつケイはそれでもまだ幸せなのかもしれない。
「そこ」が原風景として育った人間は、虚構から逃れることはできない。
見得と虚構で固められて日常。
それは戦争に敗れた日本が憧れた非日常。
非日常を日常として生きていく矛盾。
ボーダーレスの時代の落とし穴がそこに潜んでいる。
そしてそれは、個へ分化していく世の中でも同じこと。

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: