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Nov 2, 2011
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カテゴリ: 伊庭求馬活殺剣
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捕吏が猟犬のように駆けだしていった。

「天野さん、久しぶりに江戸湾が綺麗ですね。檜垣廻船が出航して

行きますよ」

 若山豊後が、のんびりとした声をあげた。

 江戸湾で雪を避けていた檜垣廻船が、一斉に帆をあげている。

「豊後、おめえは気が楽でいいな」

 監物の皮肉にも気づかず、若山豊後は眼を細め江戸湾を眺めている。

 前方から捕吏が勢いよく駆け戻ってきた。

「怪しい寺でも見つけたようじゃ」

 天野監物が手をかざし見つめている。

「あの勢いで転ばねばいいですがね」

 豊後が心配そうに呟いた。

「わあっ」

 捕吏が足を滑らせ、降り積もった雪に顔からつっこんだ。

「それ見ろ、言わんこっちゃねえよ」

 天野監物が急いで捕吏のもとに近づいた。

 髷から顔じゅう雪で真っ白となった捕吏が顔を拭っている。

「何か見つけたかえ?」

「この先に古寺があります。中を捜りますと焚火の痕がございます、

隙間には目張りがしており、どうも様子が変です」

「空き家か?」

「へい、ですがどうも臭います」

「よし、行くぜ」

 天野監物を先頭に一行が捕吏の案内で古寺に向かった。

「あの寺にございます」

 捕吏の指差す方角に古い廃寺が見えた。

「あそこなら道からは見えねえな」

 監物が視線を廻し呟いた、見事に死角となっている。

 一同が庫裏に足を踏み入れた。焚火の燃えた臭気が漂っている、

それぞれが手分けをして寺の内部を検めた。

「豊後、この円座をみなよ、車座となってねえかえ」

「そうですね、十六もありますよ」

「矢張り、ここが奴等の隠れ家だったな」

 天野監物が厳しい顔で内部を見廻している。

「天野さん、この円座は変に思われませんか?」

 豊後が上座にぽっんと置かれた円座を指差した。

「ここが奴等の頭の場所か」

 天野監物が不精髭を撫でさすっている。

「おまえ達はなにをしておる、お勤めの邪魔じゃ」

 突然、表から大声が響いた。監物と豊後が表に飛びだした。

 そこには三人の男が捕吏に囲まれていた。一人は身形の良い姿をし、

二人はいなせな船頭姿をしていた。

「おめえ達は何者だえ」

 天野監物が厳しい声で尋問した。

「へい、あっしは神田橋で船宿を営む、藤屋の主人にございやす」

 恰幅のよい男が口を開いた。

「あとの二人は店の船頭ですか?」

 若山豊後が丁寧な口調で訊ねた。

「はい」

 天野監物と若山豊後が顔を見合わせ、不審そうに三人を見つめた。

「主人、この辺には堀はねえよ。何でこの辺まで出張ったきたのじゃ」

「実は昨夜、お武家さまを乗せた屋根船の船頭が戻って参りません。

虎の門まで急用と仰せられ、当家の古参の五郎蔵と申す船頭が船を

出したんでございやす」

「なにっ、虎の門。・・・・豊後、何か臭うな」

「刻限はどうです」

「暮れ六つ頃にございやした」

 藤屋の主人の顔色が青白く見える。

「その刻限は雪の真っ盛りだぜ、店仕舞いはしなかったのかえ」

 天野監物が不機嫌そうに訊ねた。

「とうに店仕舞いはいたしておりましたが、酒代をはずむと仰せられ、

五郎蔵が引き受けた次第にございやす」

「豊後、あの一枚の円座はその武士の座った席かもしれねえな」

「そいつが黒幕ですね」

「未だ分からねえが、奴等にここから立ち退きを命じたとしたら筋が通る」

「そうですね、ここから虎の門は近いですからね」

「藤屋、おめえさん達は虎の門の船着場を捜ってきたのかえ」

「その積りで参りやしたが、この辺りにお役人が探索されておると小耳に

挟み、そのままこちらに伺った訳にござやす」

 その言葉で天野監物が暫し沈黙したが、

「豊後、捕吏を二、三名連れて虎の門の船着場を捜っちゃくれめえか。

おいらはもう少しここを調べて痕を追おう」

「承知、ここが奴等の隠れ家であったことは確かでしょう。その侍が曲者

と絡んでいるのでしょうね、兎に角、虎の門一帯を捜ってみます」

 豊後が捕吏と藤屋の三人を引き連れ虎の門へと向かった。


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Last updated  Nov 2, 2011 10:47:44 AM
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