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Apr 22, 2015
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    (信玄の戦略と家康の戦術)

 十二月十九日、守将の中根正照は城兵の命と引きかえに武田勢に下った。

 こうして堅城で鳴らした二俣城は落城したのだ。

 中根正照は武田家に人質を送り、家康の居城、浜松城に引き上げて行った。

 その一行の様子を小十郎が、そっと物陰から窺っていた。

 部隊の将兵の交じり、撤退する川田弥五郎の姿を見つけたのだ。

 弥五郎は鹿毛の駿馬に騎乗し、昂然とした態度で鞍上で揺られている。

(あのお方は如何される、まだ武田の間者で働かれるのか?)

 そんな思いで小十郎は、川田弥五郎を見つめていた。

 中根勢は寒風の吹きすさぶ山道を、重い足を引きずって去って行った。

 信玄は依田下野守に五百名の手勢を与え、城の修復と守将を命じた。

 信玄は久しぶりに合代島の本陣を引き払い、二俣城を本営とした。

 彼の心身も限界にちかい疲労が蓄積していたのだ。

 その晩は誰も近づけず、一人で酒を嗜み安眠した。

 翌日、急報がもたらされた。

 織田信長の救援部隊が浜松城に入城した、その報せであった。

 城内の大広間には信玄をはじめとし、上洛軍の武将が全て集まっている。 

 信玄の体躯に鋭気が満ち溢れている、屋根のある部屋で安眠した所為だ。 

「増援部隊の将と人数はどうじゃ?」 

 信玄になりかわって勝頼が訊ねた。

「佐久間信盛、滝川一益、平手汎秀(ひろひで)の三将と三千名にございます」

 報告の者が下座から織田勢の加勢の状況を述べた。

「美濃を侵され、信長、臆したな」 

 信玄には信長の心境が手にとるように判る。

 信長め、奴は四面楚歌の状況じゃな、たかだか三千の援軍で何が出来る。

 せいぜい籠城いたし、合戦を長びかせる積りじゃ。

「これで浜松城には、一万一千名が籠もる事になりましたな」

 高坂弾正が不敵な面魂をみせ、信玄に語りかけた。

「これが籠城ともなると些か面倒じゃ」  

 馬場美濃守が顔を曇らせた。

 美濃守の言う通り、家康が籠城戦を挑むと落城まで数か月かかる。

 信玄が広げた大地図を仔細に見つめ、巨眼を鋭く瞬かせた。

「三河、遠江の徳川の支城はほとんど潰した。浜松城は孤城じゃ」

 信玄が絵図から顔をあげ、野太い声を馬場美濃守に懸けた。

「はい、健在な城は遠江では高天神城、三河では岡崎城と野田城のみ」

 馬場美濃守が素早く答えた。

「浜松城の抑えには、六千も配置いたせば家康動けぬな」

 信玄が馬場美濃守を見つめ含みのある事を述べた。

「御屋形は、浜松城を攻めずに素通りいたすと申されますか?」

 流石は歴戦の将、馬場美濃守である。信玄の言葉の裏を読み取った。

「美濃、余の戦略は三策ある。ひとつは浜松城を素通りいたし野田城を

攻める。いまひとつは秋葉街道を北上し東美濃から一気に岐阜を衝く」

「それは、・・・」  

 馬場美濃守が唸った、満座の武将達も唖然としている。

 野田城は豊川の上流の西にある城で南下すれば三河湾に至る。

 そこを我が勢が占拠すれば三河と遠江を分断出来る。

 そうなれば家康は遠江の浜松城で孤立してしまう。

 もう一策は直接、家康など気にせずに信長の本拠地の岐阜を攻めると

御屋形は云うのだ。

 信長が援軍を三千しか出せぬと言う事には訳がある。彼は近畿の信長

包囲網で身動きが不可能と成っているのだ。

 これはこの場の武将達にも理解は出来る。

 三河、遠江を放って信長の居城、岐阜城を直接攻撃すれば天下は望めるが、

あまりにも無謀過ぎる戦略である。

 それを遣れば物資の補給が途絶える恐れがある。

「して、最後の策は」

 信玄が薄い笑いを浮かべ、質問を発した勝頼を見つめた。 

「家康次第じゃ。奴め若いに似ず強情、討って出るやも知れぬ。それなれば

上策じゃがな」  

「討って出まするか?」

「勝頼、武将は信用が一番。弓取りとして諸国の武将に笑われては失格じゃ」

 一言、父親として勝頼に薫陶を与えている。

「叶わぬまでも家康は我等と合戦に及ぶと、御屋形はお考えに御座いますか」

「余が家康ならばそういたす」  

 信玄が強い口調で言い切った。

 勝頼はじめ諸将連も、信玄の洞察力に勝る者は居ない。全ての者達が信玄の

答えを待っている。

「今宵はこれまでじゃ」  

 信玄の顔に疲労の色が濃く滲んでいた。

 馬場美濃守と高坂弾正が顔を見合わせた。二人は信玄の顔色の悪さで何事か

察したようだ。

 武田軍団は二俣城から、動く気配もみせず山のように不気味に居座っている。

 一方、浜松城では織田家の三将を交えた軍議が開かれていた。

「徳川殿、信長公のお考えをお伝えいたす」

 援軍の佐久間信盛が、信長の考えを告げた。

「このまま籠城をお願え申す」

 これが信長の伝言であった。

 信長の真意は徳川勢が、浜松城に籠城する事にあった。遠江を席巻した

武田軍団は、三河に進攻するか本国にもどるかだろう。戻るなら戻らせる。

 万一、武田勢が三河領内に進攻するとなると浜松城の籠城が生きてくる。

 今、信長は必死で態勢を建て直している、これが完了した暁には総力を

あげて三河に討って出る。そうなれば浜松城と連携し武田勢を挟撃できる。

 そうした事態となれば武田軍団に勝利する可能性の目がでる。

 それは家康とて十分に判っている事であった。

 だが、徳川の領土を信玄の思うままに蹂躙され、三河の諸城は戦わず降伏

するなどは、なんとしても避けたい。

 武将の意地をみせ、家康の存在を示さずば男がすたる。

 家康は信長の要請と自分の意地との狭間で、迷いに迷っていた。

 今朝の物見の知らせでは、武田軍団は二俣城から動く気配がないという。

 家康の決意が固まった。

「存念を申す。武田勢が浜松城に攻め寄せよせるなら、三河武士の誇りかけて

決戦をいたす」  

 家康が甲高い声で叫び、一座に異様な空気が流れた。

「徳川殿、それは出戦という意味にござるか?」 

 滝川一益が鋭く訊ねた。

「左様、叶わぬまでも武田勢に打撃を与え、素早く籠城いたす」

 織田の三将は籠城策を聞き、家康の戦術に乗ることに決した。


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Last updated  Apr 22, 2015 08:55:20 PM
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