山紫水明

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酔櫻4916

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2009.06.29
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 段々外が暗くなってきたけど、これじゃあ出て行こうかという気分にはなれませんなあ。

 今夜は「夜のマチ」もヒマだろうな、こんな時に行ったら店の中のお嬢さん方がミ~ンナ寄ってきてくれて、もててもてて、よってたかってボトルをカラにしてくれるんだろうな。

 それだけでも許せないのに、「私ビールしか飲めないの」だとか、「私オレンジジュースいただいていい?」とか、勝手なゴタクを並べやがって、てめえら水道の水でも飲んでろ!

 第一、そこのケツが青いチンコロねーちゃん、てめえまだ未成年だろう?

 なんて次第になって、余計ストレスがたまっちまうんだなあ。

 オレみてえなガンコじじいの呑んだくれは家で静かに往生した方が幸せだとぼやいていたら、

 「ごめんなったもんしい」

 「はいはい、どなたさんでござんしょうか」

 見れば年の頃なら70から80の爺さまが一升徳利を右手に提げて、どこかの居酒屋の入口の脇に立っている狸のようにたっていなさる。



 「ハア、ぶろぐに?」

 「わかりもはんけ?雪蓬じゃっがよ。セッポー」

 「ええーっ!」

 「川口 雪蓬じゃっど。酔眠先生じゃっど」

 「あらららら、酔眠先生でいらっしゃいましたか」

 「焼酎(そちゅう)バ呑みもんそ」

 え?こんなクチが達者なウワバミのごときジジイと呑んだらどーなるかわかったもんじゃない。

 西郷(せご)どんみたいなハラの大きい人格者だからあの悪舌に耐えることができたのだろうが、私の辞書には「人格」だとか「仁徳」などという二文字熟語はないモン。

 「ほら、芋焼酎の「島美人」じゃっど、ケかめ」

 いやいや、いくら焼酎の名前が「島美人」とは言え、あなたみたいなクソジジイと飲んでもねえ・・・。

 「あのぅ、わたくしごときと呑むより、再建の虎晃志さんとか神風スズキさんとか人格者がいらっしゃいますですよ」



 「いやいやいやあ、けっしてそんなことではありもはんじゃっどん、てんどん、カツどん」

 ついに諦めて呑んでいると、

 「島美人もヨカ焼酎じゃっどん、これもうまかじゃっで」

 見れば、南国の貴公子小松帯刀さんが焼酎「小松帯刀」をもって立っている。

 私酔凰は鹿児島県人の血が半分肥後熊本の血が半分と、焼酎王国に産まれ、焼酎で産湯を使ったような生い立ちであると勘違いされるかもしれないが、実は日本酒のほうが好きなのだ。



 「ちょっとそこの粋な旦那、あたいとイッパイおやりでないかい」

 な~んて灘か伏見の酒または大好きな立山なんかを傾けてくれようものなら、

 「やります、やります、ボクなんでもやります」

 と、ヘロヘロになるまで呑むだろうな。

 ま、今日は雨もふっていることだし諦めてこの爺さんとやるべえか。

 「雪蓬殿、私は御貴殿からはついぞ学問を授けて頂くことかおとが相叶いもはんじゃったで、ないごつか講義ばしてやったもんせ」

 ああ、帯刀さん、あんたはエライねえ、死して尚勉強ですか」

 「無学」

 無学とは学が無いのではなく、もうこれ以上学ぶべきものはない、したがって貴公に授ける教えはないというこただ。

 「再びこの日本国の民として生まれ変わって国を導くがようごわんそ」

 現今の指導者のように口ばかり達者なのではなく「誠」の一字に貫かれた志に生きる国士がいないのだ。

 否、いないわけではない・・・と思う。

 この爺さん、いや、酔眠先生、失礼、雪蓬先生が説く陽明学を信奉し、かつそれを実践しようとすれば、時代という怪獣が牙を剥いてその国士に襲いかかるのだ。

 雪蓬先生が最後に見た国士は頭山満という青年だった。

 頭山満は中野正剛、緒方竹虎を産んだ。

 「わしの最後の最後のご奉公は、国士を産み育てる国士をこの世に送り出すことじゃっど。酔凰、多くの人と遭い、国士を見出し、我が陽明学の義を伝えよ」

 「は?」

 「祖国日本のために死ね」

 「そんな、大袈裟な」

 「おはんも薩摩隼人のハシクレじゃっど。死ね」

 「いや、はしっこのそのまたはしっこのハシクレですから」

 「ツベコベ言わずに死ねえええええええっ」

 今度は西郷(せご)どんの彼女の愛珂那さんに来てもらおっと。





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Last updated  2009.06.29 19:52:30
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