ないものねだり

ないものねだり

2013.01.16
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昨夜、自宅で風呂あがりに歯を磨いてたとき、背中に視線を感じてゾッとした。
気になったけど、独りっきりだし、振り返ったり鏡越しに後ろを確認するのが怖くて、
大きな声で歌ったりしてシカトした。(笑)

もう随分前のことだけど、砂浮琴にはイヤな体験がある。



洗面所


古い木造アパートだと、設計上の都合で仕方のないことだけど、
陶製の 洗面台 が部屋や廊下の隅にあって、お決まりのように がつけられている。
そして、洗面台の真後ろが窓やドアという 構造 って珍しくない。


あれは、1993年7月のとある週末だった。
友人と待ち合わせて映画を観たあと、モトコーの食堂で食事をしたり、
他の仲間の近況やら、噂話やらをしたりしながら遅くまで夜遊びした。
その夜は、その友人のアパートに泊まることにしていた。


アパートは、阪神電車の新在家駅から徒歩10分。
六甲山の方向を向いて、ゆるい坂を登った古い住宅街の一角で、
造りは古いが、風呂がついて2万5千円は魅力だったそうだ。


友人は、 「小腹が空いた」 といい、少し離れたコンビニへ買出しに出掛けた。
待つ間、鞄に入れっぱなしの出張セットを出し、歯を磨いたり顔を洗ったりしていた。


ガチャっと、洗面台の真後ろでドアが開く音がした。
戻ったと思い、顔の石鹸を流しながら声をかけたが返事はない。
ドアが開き、友人が戸口に突っ立ってる感じはしていた。
「どうした?」 と顔を上げ、鏡越しに戸口を見た。


「あッ!」としか声が出なかった。


確かに、友人は戻って戸口に立っていた...
立っているけど動かず、口を半開きにして精気がない。


誰かの手が、後ろから彼の両肩をぐっと掴んでいて、
右の肩口から、その誰かがにゅっと顔を覗かせた。
仰天して、振り返って直接見た。


「うわぁ~!」と、自分の口から出たと思えない大きな声が出た。
皮膚がただれ、髪は抜け落ちて、目だけギョロっとした顔だった。
それが、千切れた上半身だけで友人の肩を鷲掴みしてしがみついていた。


必死とか、無我夢中ってのは、あんな感じだろう...
とにかく、マグカップとか、石鹸とか、指に触れた物は全部投げつけ、
彼の腕を引っ張って、部屋へ引き入れドアを閉めた。


へなへなと、畳に座り込んだ友人は手ぶらだったし、
ヒザから下は濡れて、腰の上まで泥が跳ね、片方の靴は脱げている。
呆けたような顔をして、肩を揺すっても何の反応もしなく、
頬を二、三発叩くと気がついたみたいでホッとした。


部屋中、焦げたような、腐臭ような、イヤな匂いがした。
何があったのか判らないけど、でも尋常じゃない。


自分も落ち着き、何があったのか彼に訊ねた。


彼がいうには、コンビニで肉まんとか柿ピーとか色々買い、
店を出て、小さな川沿いを少し歩いたまでは覚えているそうで、
その直ぐ後、急に足が重くなって記憶が途切れたそうだ。


砂は部屋を片づけ、彼に風呂に入るよう勧めた。
彼の両肩は、指の形に赤黒く内出血して腫れていた。


次の休日を待って、その友人の引越しを手伝った。
その後、彼は体調を崩して一度入院したけどそれ以上は何事もなく、
1995年1月17日の地震後の火災で亡くなるまで、長田区で暮らした。
享年29才だった。


あの出来事の後、砂はすっかり夜の鏡が苦手になってしまった...



あの日から、明日で18年...
あの日、彼だけじゃなくほかの友人や仲間たちも大勢亡くなった。
砂は、こうして思い出すことぐらいしかできない。













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Last updated  2013.01.16 15:02:52
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