蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「白洲次郎と白洲正子展」



昨年読んだ本の中に白洲正子のものが4冊ほどあり、彼女の凛とした美学と、白洲次郎の生き様に興味があったので、大丸神戸店で開催中の 「白洲次郎と白洲正子展」 に行ってきました。

平日の昼間だったにもかかわらず、人の多いこと!特に年配者が目立ちました。

展覧会は、白洲次郎、白洲正子、次郎と正子の3部に分かれていて、次郎のコーナーには衣類、書簡、愛用品(机、タイプライター、時計、懐中時計、トランク、シルクハット、カフスボタン)などが展示されていました。

もちろん彼の愛用品にも興味津々でしたが、何より私の興味を引いたのは、憲法に関する資料でした。終戦後アメリカGHQから憲法の草案(もちろん英語)を渡され、外務省により日本語に訳され、それを何度か練り直した原稿があり、思わずガラスケースにへばりついてしまいました。昭和21年3月5日案という原稿の横には3月6日の閣議審議用憲法改正草案要綱があり、一生懸命にどこが違うのか比べてみたのですが、時間に追われていたのと、人が多かったのとで、早々にガラスケースの前から退散しました。1点だけ違いがわかったのは、語尾が口語になっていたところ。たぶん。

サンフランシスコ講和会議のオフィシャルカードや、吉田茂の講和会議公用パスポート、吉田から次郎へ宛てた書簡なども展示されていて、見ごたえがありました。
書簡に関しては、次郎、正子、吉田茂のものがあり、それぞれの筆跡なども比べながら、人となりを思い浮かべられました。今のようなPCがあったわけではないので、もちろん書簡は手書き。万年筆や毛筆の具合など、なかなか味があります。

また正子のコーナーでは、彼女のお眼鏡にかなった骨董の数々が展示されていて、次郎コーナーとは違った意味で圧倒されました。
正子は特に初期の作品を愛したといいます。陶器でも草創期に生み出された作品を、ウブな美と呼んで好んだようです。
展示品の中で、私も気に入ったのは、「織部呼継茶碗」「十字文絞り旗指物」「片身替り盆」「豆皿」「ムラノ製グラス」などです。
どれも洗練されたモダンな美しさを感じました。私は正子のようにウブな美しさより、洗練された美が好きなのかも。
「織部呼継茶碗」の「よびつぎ」とは、壊れた陶器の破片を集めてきて、1つの完成品に仕上げることだそうです。この「織部呼継茶碗」もつぎはぎに見えますが、さまざまな柄が混在することが、かえってモダンな印象を受けます。
「十字文絞り旗指物」は、縦長の紅い布地に、白で十字が描かれています。これもまた斬新でモダンな柄です。
しかしなんといっても今回の展示品の中で気に入ったのは「片身替り盆」です。
丸い盆の真ん中で赤と黒に色分けされた大胆な図柄で、とても印象的。この盆は図録の表紙を飾っています。こんな盆が欲しいなぁ~。

それから展覧会の図録はしっかりと装丁された単行本になっていて、新潮社から出版されています。3000円と、図録にしては少々高価なのですが、欲しくなって購入。
「白洲次郎と白洲正子」 というタイトルがついていました。この本の装丁は、本当に凝っていて見事です。赤と黒が効果的に使われていて、本棚に飾っていれば、ちょっとした美術品のようになるかも。

次郎と正子のコーナーでは、彼らの自宅であった武相荘のリビングを再現していて、そのセンスの良さにしばし時を忘れて見入ってしまいました。
あと白洲家の食卓も蝋細工?で再現されていて、美意識に貫かれた食生活も興味深く見ることが出来ました。お節料理も展示してあったので、我が家のお節の参考にさせてもらおうかと、ちょっと思ったりして。(笑)

最後は次郎の遺言書と、亡くなる直前に絵付けしたコップが置いてありました。
遺言書には「葬式無用 戒名不用」の文字。自由に生きた人生だったんだなと実感しました。

絵画などの展覧会でないのに、こんなに熱心に、しかも感銘を受けた展覧会は久しぶりです。
会期は2月9日まで。



2009年2月5日 大丸神戸店 大丸ミュージアム




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