ねくすと

ねくすと

2016.05.03
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カテゴリ: 東京の風景
満員電車
あれはまだ自分が十代のうぶな学生ころ、電車で通学していた時の話だ。
高校までは地元だったので平日の朝、電車に乗ることなど、まずなかった。
休日には、たまに池袋まで映画を見に行ったが、ホームや電車は、いつもたくさんの人がひしめき合い、すごいなと驚いていた。が、平日の朝の混みようは、それに比較出来ないほど半端なく人が多く、怖かった。
通学を初めて三日目からは電車に乗り込んだら一番奥のドアと座席の角を陣取る事を覚えた。
つり革に掴まっても人に押されて手が離れ人混みの中で宙ぶらりんになってしまうが、ドアを背もたれにすれば押されても倒れることはないからだ。

あれはまだ通学を始めて一ヶ月も経たない頃だった。
その日は人身事故の影響か電車が遅延しており、人の混み方がいつもの三〜四倍に膨れ上がり、いつもなら一番奥の角を陣取れるのに、その時はいつもの場所には既に人が居て、自分はつり革にも掴まれず、しかも目の前には大学生くらいの女の子がドアを背に自分と向き合う配置に立っていたのだ。
この人を押し潰すわけにはいかない。自分はドアを両手で踏ん張り、今で言う「壁ドン」の状態になってしまった。

駅が進むに連れ人は益々増え、もう限界だろうと半ば放心状態にもなって来たが無事、女の子を押し潰す事なく降車駅に着き、その場を離れる事ができた。

後日、何気なく深夜ラジオを聴いていたら、似たような話(ハガキ)が読まれた。その女の子は、その時の(歳下の)男の子の勇敢な姿に惚れてしまったと言っていた。

自分は迷惑をかけていたと思っていたが、一転、気分が高揚した陽気した。
そのエピソードは自分の体験とは違うかもしれないが、あの時の女の子も、もしかしたら自分に好印象を抱いていたのかもしれないと思うと、二度と会うことも、顔も覚えてはいないけど、恋をしたようなウキウキした気持ちになった。
そんな事を今でも鮮明に覚えている。

辛いことがあっても、ほんの小さな一言が人の気持ちをこんなにも変えることが出来る。
と、そんな事を学んだような気がする。





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最終更新日  2016.05.03 23:38:41
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