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2006.03.12
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カテゴリ: 日めくり
首が座ったかどうかの目安は、赤ちゃんをうつぶせにした時に、頭を持ち上げられるかどうかです。とはいえ、焦らず、赤ちゃんのペースを大切に。


知ってほしい小児科保険診療の実態
小児科医 下田康介先生
↓

ある日の小児科外来の風景です。「ゆうちゃんのお母さん、乳児医療券がありますから、お会計はありませんよ。お大事に。」

ご両親の年収などで制限や条件がありますが、赤ちゃんの医療費は自治体による公費助成で支払われることが多いので、医療費の明細についてはご存知ないお母さんが多いかもしれません。「ゆうちゃん」は、生後8ヶ月の赤ちゃんです。2ヶ月ほど前から湿疹が全身のあちこちに出没するようになり、アトピー性皮膚炎の疑いが出てきました。お父さんには小児喘息の既往があります。最近、小麦や卵の入った食品を離乳食で与えると、じんま疹のような赤い斑点が出現し、咳こんだりするので、今日は血液検査をしてアレルギーの有無や原因を調べることになったのです。

「ゆうちゃん」は発育順調で、手足はムチムチ・ プクプクしています。採血しやすい血管はどこにも見えません。指先の感触を頼りに、ようやく血管の存在を確認します。看護婦さんと看護助手さんとで、「ゆうちゃん」が動かないようしっかりおさえてもらいます。苦労してどうにか検査に必要な5ccほどの血液を採取しました。1回で済んだので、お母さんもホッとしています。

さて、難しい赤ちゃんの採血に対する医師の技術料として加算されるのは、たったの70円です。職人芸に近い仕事の評価がこれです。もちろん、アレルギー検査の項目を増やしたり、「かゆみ止め」として高価な抗アレルギー剤を処方すれば、診療報酬は増えます。日本の保険診療制度では、医師からの専門的な情報や医師の技術料は過小に評価され、たくさん検査をしたり薬を処方すると点数が高くなるようになっています。「検査漬け、薬漬け」というふうに批判されているわけです。

昨日の「さくらちゃん」のケースを見てみましょう。水のようなひどい下痢と嘔吐、それに39℃以上の高熱が重なり、脱水状態になってしまいました。ロタウィルスによる胃腸炎です。唇は乾いて、泣いてもすぐに涙が出てきません。少し水分をあげても、すぐに吐いてしまいます。このままからだの水分が減ってしまうと、意識が悪くなったり、けいれんを起こすかもしれません。さっそく脱水症の治療のため、点滴をすることになりました。「さくらちゃん」は生後10ヶ月で、手足はポチャポチャしていて、元気なときでもどこに血管が走っているのかよくわかりません。脱水状態になると血管が収縮して、さらに血管を探すのが難しい状況です。それでも苦労してやっとの思いで3回目に成功しました。点滴が入るにつれ、「さくらちゃん」の顔色はどんどんよくなり、気分も落ち着いたのか、ぐっすり眠ってくれました。今日は、まだ下痢は続いていましたが、吐き気がなくなり、自分で水分をとれるようになってひと安心でした。赤ちゃんの点滴に対する技術料は、驚くなかれ210円です。信じられませんね。



これらの生活指導や栄養相談には、何の診療報酬もありません。つまり小児科医のほうは一銭も保険請求できないのです。内科の場合はどうでしょう。糖尿病の患者さんには「特定疾患指導料」という名目で1回2,020円を月に2回まで請求できます。さらに栄養士が栄養相談を行えば、「外来栄養食事指導料」1,300円も請求できます。ところが、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーでは、「なんとか指導料」はいっさいありません。これではいくら良心的な小児科医でも、時間をかけてお母さんの相談にのったり、赤ちゃんの生活のアドバイスをすることを敬遠するようになってきます。こども相手に儲けようなどというのではありません。自分の仕事をきちんと評価してもらいたい、という正当な気持ちが報われないのです。

日本では、小児科医は医者全体のわずか5%余りです。このうち2割の小児科医は、小児診療の「あまりのひどさ」に、こどもを診る実際の診療から手をひいています。小児科を志望する医学生も少なく、小児科の専門医は減っていくばかりです。「こどもと小児科医を大事にしない国は滅びる」という言葉もあります。踏みとどまって頑張っている小児科医も慢性的な過労状態に追い込まれ、この国はどこへ行くんだろうという不安に悩んでいます。





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最終更新日  2006.04.11 23:52:35
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