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2007.03.29
カテゴリ： 読書／小説
魔界ナ・オムの中心に聳える巨木・雪冠樹を目指していた。
不老不死の鍵を握る“涅槃の果実”が十年に一度実を結ぶ大樹である。
だが、ナ・オムには異形の幻獣たちが跋扈していた…。
著者の処女長編にして、空前のスケールで描く超伝奇大河小説の金寺塔。
涅槃の王（1）
価格：700円（税込、送料別）
これは夢枕センセの処女長編です。
つまりまだ「キマイラ」や「サイコダイバー」を書き始める前の作品ってことですね。
そう考えながら読んでみると、夢枕センセののちの作品の原型がここにはあるなあということがわかります。
この本の主人公はシッダールタ。
つまり仏陀です。
シッダールタが「涅槃の果実」を求めて「雪冠樹(ヒウナージャン)」へ登っていくという話なのですが、
これって「上弦の月を喰べる獅子」と似てますね。(こっちは須弥山を登っていく話ですが)
そしてこのシッダールタがウレシイことに、少女のような美形という設定なのですよん
きゃ
夢枕センセってこういう伝奇モノでは、必ずといっていいほど美形キャラを出してくれるところが好きです
読者のツボ(←アタシのこと)を心得てますなあ
ニクイね
シッダールタが美形だなんて、もうそれだけでゾクゾクしちゃいますぅ～
そして世界はまさに夢枕ワールド!!
仏教的な世界あり、えぐえぐシーンあり、格闘シーンあり、あっと驚く展開あり。
もう何でもアリです。
ウレシイですね～
雪冠樹をどんどん登っていく一行ですが、
ナ・オム(「存在してはいけないもの」という意味)という世界に棲む、世にもブキミなものたちのせいで、ひとり減り、ふたり減りという具合にバトルの連続になっています。
もうドキドキするような展開です。
因と果、つまり原因と結果。
ナ・オムというところは、そんな因果が人間界とは違っていて、生のバランスが微妙に崩れているのですね。
だからいろんな動物が混ぜこぜになったような不気味なものたちが生まれる。
いやいや、向こうの世界からしたら、人間の方が異形なのかな。
そういう世界設定も夢枕さんらしくっていいですよね。
夢枕センセって、まさしく小説を書くために生まれてきたような方だな～とシミジミ思います。
「俺の書いたものを読んでみろー!!!!!」という気迫というか、小説魂が弾けてますもんね
いやいやスバラシイ
ところで「涅槃の果実」とは何だったかというと(おっとﾈﾀﾊﾞﾚ)、「時間エネルギー」だったんですね。
<戯>という糸によって、人間の時間を吸い取って生きている、みたいなカンジ??
(…と思うんですけど、難しくて実のところよくわからない…)
でも最後にはそれはどっかへ飛んでいってしまうのですが。。
シッダールタが言った言葉、
「おれが捜しているのは、人が人のまま、おれがおれのまま、解脱し、涅槃に至る道よ」
おお、これが仏教の根源ではありますまいか。
(ちなみに「涅槃」とは「釈尊がすべての煩悩をなくし、高い悟りの境地に達して死んだこと」という意味です)
なんと深い話でしょうねえ。
だから夢枕センセの本、好きです
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