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2020.03.06
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テーマ: 法律(494)
カテゴリ: 法律
鉄道のロクに発達していない田舎で弁護士をやっていると,たまにみるのが配達業者だったりトラック運転手が交通事故を起こした際,会社が賠償金を払ってくれないという悲しい事案がある。
会社的には保険料が上がるのを嫌がって保険を使うのも嫌だし,力関係として従業員より圧倒的に上だから,事故の相手への賠償金は従業員に持たせるのだ。


交通事故事件処理マニュアル補訂版 [ 永塚良知 ]

かねてから,こういうことが許されるのかな,と思っていたが,これについて2月25日発売の判例タイムズ3月号で論文が載っていた。これはすごいなぁ,と思っていた矢先,2月28日に最高裁判決が出た。
タイミングがすごいなぁ,と思うがこの点について感想など書いていく。

まず,最高裁令和2年2月28日判決はだいたいこんな事案だ(​ 最高裁リンク ​)。
原告の従業員はトラック運転手だったが,業務中に交通事故を起こしてしまった。けっこう重たい人身事故で,賠償額は2500万円を超える。これを従業員が支払ったので,従業員は会社側にこの2500万円を払ってくれと請求したのがこの事案である。
資本金300億円以上 をいうマンモス会社であって,「 自家保険政策」 というシステムを使っていた。これは損害保険に加入せず,その都度自己資金で支払うというシステムだ。
個人的には衝撃を受けたシステムなのだけど,保険というのはそもそも「 大数の法則 」という統計みたいなシステムを使っているわけで,超巨大企業になると保険に入らなくても巨額の賠償金も支払うことができるというわけだな。
たぶん,支払う保険料よりも自己資金で積立てておく方が安くすむのだろう。だいたい,保険料には賠償に回る分プラス保険会社の維持費もあるわけで,全部自己資金でできるんならその維持費の分がいらないからな。

僕は常々,この手の事案について,従業員の請求は当然に認められるべきじゃないのか,と考えていた。
だって,会社側には使用者責任があって,会社は事故の被害者には賠償義務はあるのだ。先に従業員が支払ったからといって,この義務が消えるのはおかしい。
普通に考えると,誰だってミスはするのだから,経営者自身が荷物を運んだところで,1万回に1回くらいは事故も起こすと仮定しよう。ここで,100人雇えば運べる荷物は100倍になるけど,どうしたって事故の確率も100倍になるから,100回に1回は事故が起きてしまうだろう。
ここで,会社は100倍の仕事ができるという利益だけをえて,人が増える場合のミスを全く負わないというのはあまりにもおかしい。

ところが,これには反対説もあった。
民法715条1項を見ると,被用者が他人に損害を与えた場合,使用者も損害賠償責任を負うという規定がある。これについて,3項をみると,使用者から被用者への求償はできる,と定められているのだが,逆に被用者から使用者への求償に関する規定はない。なので,こういった逆求償はできないんじゃないか,という見解もあったのだ。実際,原審は逆求償はできないという結論を導いている。
「損害の公平な分担」 というマジックワードを使いつつ,逆求償を可能としたのだ。
なお,いくら求償できるかという点については判断をせず,差し戻した。

個人的に,面白かったのは本文よりもむしろ裁判官の補足意見である。
菅野博之,草野耕一裁判官はこの事案について,「運送会社とドライバーの関係である場合,ドライバー側の負担は僅少になる場合が多く,零とすべき事案もあり得る」と言っている。
こうしないと,ドライバー側は会社が守ってくれないから,恐ろしく不利なのである。

この補足意見もある程度高裁を拘束するだろうから,従業員の負担割合は小さくなりそうだ。

ところでこの最高裁判例が出たのが2月28日だったが,このわずか3日前,25日発売の判例タイムズ3月号に会社と従業員の間の求償・逆求償の論文が掲載されていた。
この論文,100以上の裁判例を丁寧に一覧表にして深い分析をしていたのだけど,この最高裁判決を掲載していないということでわずか3日ほどで価値は暴落したと言える。いや,これほど深い研究をしたのだから,論者はこの分野の最先端の知見をもっていることは間違いないのだ。この流れで最高裁判決の解説もしてもらいたいものだ。


こんなところでつまずかない! 交通事故事件21のメソッド [ 東京弁護士会 親和全期会 ]





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最終更新日  2020.03.06 18:53:43
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