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2020.09.18
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テーマ: 法律(515)
カテゴリ: 法律
法律用語にはかなり独特な,一般用語からかけ離れているものも多く,だとえば「善意の第三者」なんかは法学部1年生が真っ先にぶつかるものだろう。
この場合の「善意」というのは「事情を知らない」という程度の意味であって,そこに道徳的な意味は全くない。
なぜこんな変な言葉使いをしているのかと言えば,ドイツ語の法学用語をそのまま当てはめているからだそうだ。これは事情を知れば,とりあえずは納得できる。

ここで,僕が法学部1年生くらいからずっと分らないのが「わら人形」という言葉である(以下,「藁人形」という表記もあるが,引用をのぞき,「わら人形」に統一)。
今日現在(2020年9月18日)の判例データベースで,「わら人形」あるいは「藁人形」で検索して,比較的上に出てくる新しい事案から引用すると,こうだ。
弁護士報酬を負担してでも)弁護士をいわば「 わら人形 」として介在させることにより、第2請求が不正請求であることが発覚した場合であっても、弁護士の関与を理由に被告会社及び被告Y1の善意を偽装して責任を回避しようとするためであったと考えられ・・・(東京地方裁判所平成30年11月30日第一法規判例ID 29052987

逆に,一番古いものがこれだ。
換言すればb漁業協同組合なるものは、その背後に存在するb漁業会の傀儡であり、 藁人形 たるに過ぎず、単に外部に対する関係に於て別個の存在の如く見えるものに止る(東京高裁昭和24年10月31日高等裁判所民事判例集2巻3号467号)。


つまり,裁判所は少なくとも昭和24年ころの時点でこういった意味で「わら人形」という言葉を使っており,現在も使い続けていることがわかる。
司法試験の受験生の頃に読み込んでいた基本書というものをほとんど手放してしまったのだが,たしか基本書でもこういった使い方をしていたように思う。

なぜ,僕がこの「わら人形」に突っかかるかと言えば,法学以外で「わら人形」を「傀儡」と同義語として使う例を見たことがなかったからだ。
試しに辞書を引いてみても,「呪いの藁人形」だとか,「藁でできたかかし」などの意味は確認できたが,傀儡という意味で書いてている辞書は見たことがない。

なお,ここで「傀儡」(かいらい)というのは何か。
この「傀儡」(かいらい)というのはつまり,お手元のスマホで「くぐつ」と打ち込んでみたら「傀儡」と変換されることから分るように,「操り人形」という意味である。
よく使われる言葉でなら,「傀儡政治」というのがあるが,実権が名目上のトップではなく,そのトップをあたかも操り人形のように扱う者がいる政治形態を指す。
なぜ,「傀儡政治」という言葉が生まれたのかといえば,やはり傀儡,くぐつには最低限の関節がついていて,ヒモなどで動かせるからだろう。

一方でわら人形はどうかといえば,関節はついていないのが一般的だ。どう考えても,自在に操れるものではない。
そうすると,「わら人形」を「傀儡」という言葉と同じ感覚で使うのは明らかにおかしい。
法学的にはともかく,「わら人形」ということばを「傀儡」ということばで使うのは,どうも日本語的には誤っているように思うのだ。


なお,1つめに引用した事案だと,傀儡というよりは,責任回避の身代わりというようなニュアンスも見られ,これならばまぁ,いいかな思うところはある。
すなおに「傀儡」という便利な言葉があるのに,意味の通らん「わら人形」という言葉を使い続けるのは,どうも違うんじゃないか,とかれこれ20年近く考えているのだが,賛同者が一向に現れない。悲しいことである。


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最終更新日  2020.09.18 10:20:57
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