日本企業の経営不調は経営者の戦略構築能力や実務能力の不足によるものである。
日本のビジネス教育でよくみられる光景にこのようなものがある。
講師が丁寧に解説し、参加者は熱心にメモをとる。
質疑応答には「おっしゃる通り」と互いに褒め合って終わる。
受講者に考えさせることはほとんどない。
講師が答えを早くいえば、満足度が高くなる。
ほとんど読まれない資料を多く配布するほど「サービスが良い」と評価される。
だが、このような光景が常態化するなかで、一般的な学校教育と同様、日本における
企業関係者の教育の在り方が幼稚化していることに気をつけなければならない。
一方、競争力を持とうとする世界の経営者はむしろ競ってハードな研修プログラムに
加わろうとしている。肩書に頼らない、自らの思考力と即応力を高めるための訓練で
ある。
ビジネススクールが開発した教育方法とそれに基づく教育研修の一例として
以下のようなものがある。
配布される資料は数ページだけである。一般的に、特定企業の事例が事実として簡潔に
記されている。これをどう「読む」のか、実態にどう「即応」するのかが試される。
この資料を見ながら、何を、何のために、どう調べるのか、をまず実践する。
大量の情報が氾濫する現代社会において、自分にとって本当に必要な情報を獲得する
能力を自らの努力によって身につけなければならないからだ。
次は情報の整理と分析である。この時に欠かせないのが論理的な思考。そして、
関連理論を応用する。現象から本質を読み取り、問題を抽出すると共に、
解決策としての戦略を組み立てる。
これも始まりに過ぎない。次はさまざまなバックグラウンドをもつ人々に自らの考えを
説明し、激しく展開される議論の中で、その検証が行われる。
このようなケースは数十から数百もあり、その一つ一つの答えを覚えるのが目的では
ない。あらゆる状況に対して、瞬時の判断と的確な説明が随所に求められ、その訓練が
繰り返される。
自ら考えることなく答えを与えられてきた者、周囲から迎合ばかりされてきた者に、
激変する環境に即応できる戦略を打ち出せるわけがない。
(フジサンケイビジネスアイ/甲南大学教授・杉田俊明)