タコ社長,オーストラリア・メルボルンのスローライフな日々

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タコ社長1952

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「タコ君、ジャズが聴きたくなったよ。『モダン』で待ってて。後で行くから。」


「ごめんね、大晦日に国分寺の駅に行けなくて。だいたいね、掃除とか正月の準備とかで忙しいんだから、そんな日に!」
目に小じわを寄せてMは笑った。来なくて元々と大晦日のデートにMを誘っていた。国分寺に住んでいた彼女に、国分寺北口で待ってるという手紙をだしていた。2時間待った。

国分寺は、60年代から70年代にかけてジャズ喫茶、ロック喫茶が結構あって一つの大きなうねりを作っていた。学芸大、津田塾大、一橋、東京経済大学などが近いこともあり、昼間から髪の長い男女の学生がタバコで見えないくらいの中、一杯のコーヒーで粘って愛を語ったり、反体制の激論をしたりしていた。そのなかで、駅の北口を左に曲がった所に
あった「モダン」は幅広いジャズを楽しませてくれる店だった。

「あっ、『レフトアローン』だよ。タコ君、好きだったよね。松山君の家で聴いたよね。」日本で異常に人気のあった、マル・ウォルドロンの「レフトアローン」。慟哭が聴こえてくるような切ない響きで、出だしから感傷的になってしまう。押せば砕けてしまいそうな18歳の胸に突き刺さってくる。だからといってMの胸を押せるような仲ではなかったが。因みに、その後ジャズはこの1曲だけで今にいたっている。1人の時に聴いている。
http://www.youtube.com/watch?v=K0UbrVBYeD0&feature=related

「何度聴いても泣けるね。」
タバコをふかしながらMが横を向いた。

学生運動にのめり込んで学校や官憲と激しく対立していたMからこんな言葉がぽろっと出た。だいぶ疲れているのだろうか。眼の下にクマもできている。ジッと彼女の顔を見ながら、もしかしたら彼女は私の手の届く所まで降りようとしているのだろうかとさえ思ってしまった。しかし、そんな訳はない。過激派の闘士の彼とは続いているのを知っている。「レフトアローン」を聴きながら、泣きたいのはこっちの方だと言ってやりたかった。

「悪いんだけど、12日、明日なんだけどお袋の誕生日でね、何かプレゼントを買わなきゃいけなくて西友に行くんだ。」
「私、一緒に行く。」

国分寺西友で母の45歳の誕生祝いに財布を買った。Mの見立てだった。
「タコ君、知ってる?お財布を買ってあげるときはね、こうして5円玉を入れるのよ。知らなかったでしょう。何もしらないんだから君は。ご縁があるようにってやるのよ。」
Mは5円玉を財布に入れながら愛くるしく笑顔をつくって店員に渡した。こんな可愛い人がどうやったら警察官と殴り合いなんかできるのだろうか。できることなら、思い切って抱きしめて離したくなかった。

Mと別れて、西国分寺から武蔵野線で家に帰った。人はみんな、「レフトアローン」なんだと思った。そして、私たちは大学受験の2月に流れ込んでいった。

因みに私は受けた大学は全て落ちて大塚の武蔵予備校に入った。風の便りでMは学芸大学に入学したと聞いた。

毎回、嫌でもこの緑の箱をクリックよろしくお願いいたします。
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Last updated  2010年04月11日 14時41分39秒
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