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たなおじちゃんというキャラが登場したのは七年前だ。
たなえおじちゃんというのは語呂が悪いのでたなおじちゃんだ。
呑み会の後、そのままなだれ込み、午後まで寝て、
「あーすっかり昼だよー」って言いながら窓を開け、換気し、
午後の風が流れこんでくる部屋でまた寝っ転がるといういかにも怠惰な大学生するのはいつも仁藤邸においてだった。
寝っ転がって夢を語るのだ。
夢だなんてそんな甘酸っぱかったり、熱いもんでもなくて。
そんな怠惰に寝っ転がってる時に出る話だから。
夢というか、将来悪くねぇなって話というか。
「仁藤が結婚して子供が出来たら、たなおじちゃんが登場するから」
「笑。なんだよそれ。」
「たなおじちゃんだよ。『ケンシロウくーん。たなおじちゃんだよー。ミニ四駆もってきたよ』ってやるんだよ。」
仁藤とは大学のサークルで一緒になった。
それから新しく一緒にサークルもつくった。だが、同い年でタイプが、タイプというか嫌な部分がすごく似ているのでよく衝突した。
二年くらい口を利かない時もあった。
こいつとはもうやってらんねぇよ。
己は結構しつこいタチで、やらないと言ったものはやらない。
高校の同窓会は未だにやってない。
同窓会は嫌いだ。
それに君らあの時、実際に開催しなくていいから、多苗に全体同窓会幹事を任せようと言ったじゃねぇか。
後で丸くなると思ったかい?やらねぇもんはやらねぇよ。
話がズレた。
仁藤とはもう関係をもたないと決めた。
でも、二年くらいして共通の友達のアー坊とマツダが心を尽くしてくれたので、しょーがなく仲直りした。
そうして時を経て再会した仁藤はハッキリ感じ取れるほどに成長していた。
なんと言うかリアリティを携えていた。
人や世間に合わせて自分の生き方を考えるのではなく、とことん自分の声を聞いて自分をつきつめた末の仁藤がそこにいた。
自分のやりたいことをやる。
そんなありきたりな言葉では追いつかない、もっとナマのもっとリアルな。
やりたいことと一口に言っても、そのやりたいことの中でも嫌な作業や、なかなかできないことはもちろん含まれる。
新生仁藤はやりたいことと言うよりも(もちろん、それは彼のやりたいことなのだが)自分で納得したことに真っ正面から取り組んでいる
リアリティ・覚悟を魅せてくれた。
自分のやりたいことをやって生きてる人は輝いていていいですね。
仁藤は輝いてなんかいなかった。仁藤に限っては、まるで輝きに身を置くことを潔くとせずとでも言わんばかりに
輝きなど身にまとわずただただ仁藤和良としてそこに居た。
己はリアルなナマの仁藤和良に再会したのだった。
それでも、仁藤とはあまり会わない。
家の距離は4キロくらいで近いのだが。
タイミングがなんとなく合わない。
仁藤にジプシーの申し出をしたら奴は喜んで受け容れてくれた。
久々にイイ酒が呑めそうだ。
駅で待ち合わせをする。雨が降っていた。
「たなっちくんを連れて行きたいラーメン屋があるんですケド」
はいはい。いきましょう。
味噌一でした。爆発ラーメンとかいうのがあってメチャクチャ辛いの。
ラーメンとしては今までで一番辛い。


が食べ放題なんですよ」
ホントですか、仁藤さん。
こりゃあスゴイ。
喰いまくる。卵なんか五個くらい喰う。
帰りがけにみてみると「メンマと卵を食べる人は20円以上この箱に入れてください。」
どこにも食べ放題とは書いてないんじゃあ…
怒られなかったし、いいか。
そのまま仁藤家に行く前にバーに寄る。
帰ると奥さんがいるから、男同士の話はしづらい。
まずガッチリ語る。
雨。バー。男ふたり酒。
いいもんだ。
家に着くと息子のケンシロウ改め羅冴クンは寝ていた。
奥さんのチエミーと3人で映画「キューブ」を観る。
ドッグヴィルという似たテーマの秀作を観ているので全然つまんない。
映画を観ていると「ニャー」と羅冴クンが起きてくる。
「あ、お邪魔してます。」
仁藤よりも奥さんよりも羅冴クンに恐縮してしまう己。
さぁ、子供受けの悪い己。
シュン邸では勝利。
ヨシダ邸では敗北。
今回はどうだ!
己は羅冴クンと彼が生まれた時に病院で出会っているが、覚えているだろうか。(覚えてないだろ)
こうしてちゃんと対面するのは初めてだ。
七年前の夢がついに叶う。
「た、たなおじちゃんでしゅよー」
…。
抱えて膝に乗せても特に目を合わさない。
まぁ、許してもらえたのでしょう。
あとはチエミーに任せて男どもは読書にふける。
仁藤は本を読む姿がカッコイイ。
この写真はそうでもないがこんなに本を読む姿が絵になる奴はいない。

ニノキンばりに銅像を立ててあげたい。
仁藤はちゃんとおしめ替えもやる。荒っぽいが愛にあふれ、頼もしいお父さんでありましたとさ。


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