前回触れました市営モンロー主義について考察しようと思います。
読み飛ばしていただいてけっこうですよ(笑)。
市営モンロー主義とは、一言でいえば「市内の交通に営利目的の企業は手を出すな」という政策です。とくに戦前の東京や大阪でその傾向が顕著です。
◆東京の場合
東京の場合、「山手線の内側は国と都が担う」という方針でした。そのため、山手線内の鉄道路線は、国鉄(=現在はJR東日本)の中央線、営団地下鉄(=現在は東京メトロ)、および都営地下鉄で占められています。
地下鉄を除いた路線図を見れば、市営モンロー主義の結果は一目瞭然です。山手線の中を中央線が横切っているだけで、あとはほとんど空白です。山手線の内側に入り込んだ民鉄の駅は、京成上野駅、泉岳寺駅(京浜)、西武新宿駅くらいのものです。
中心部への進出のために東京の民鉄がとった手段は、地下鉄への乗り入れでした。その結果、東京の中心を通って関東の各方面へ直接つながる鉄道ネットワークが形成されていきました。民鉄が個別に山手線内に路線を延ばすよりも利便性は高いかもしれません。
ただし、同じ運営体なのに路線ごとに車両の仕様が異なる、遅延の影響が広範囲に及ぶ、3社にまたがる運賃の精算が複雑など、いろんな課題もあります。
◆大阪の場合
一方の大阪では、地下鉄線との乗り入れはほとんど進展しませんでした。大阪の場合、地下鉄が市域外に出て行くことにも消極的だったようです。
大阪市営地下鉄で乗り入れが実現しているのは北大阪急行南北線(御堂筋線江坂駅以北)、近鉄けいはんな線(中央線長田駅以東)および阪急千里線(堺筋線天神橋筋六丁目駅以北)です。(旧・テクノポート線もかつては「乗り入れ」でしたが)
このうち北大阪急行と近鉄けいはんな線は民鉄側が「第三軌道方式」に合わせることで乗り入れが実現しました。2006年にけいはんな線の生駒 - 学研奈良登美ヶ丘駅間(8.6km)が開通しても、両線の地下鉄車両は25km足らずの乗り入れ距離にしかなりません。生駒駅では近鉄奈良線と接しているにもかかわらず、地下鉄は伊勢や名古屋はおろか、奈良へも京都へも行けないのです。
地下鉄側が一般的な架線方式を採用した堺筋線(阪急千里線・京都線に乗り入れ)が唯一、本格的な乗り入れだといっても過言ではないと思います。
地下鉄が、コストの安い第三軌道方式を採用(のちには新交通システムやリニアモーターカー方式なども採用)したことで、民鉄との乗り入れは物理的に困難になりました。結果的に、大阪の民鉄はそれぞれ独自に中心部まで路線を延ばすしかなくなります。しかし、民鉄側の新路線計画に対して、地下鉄側も似たような新路線計画をぶつけたりして、かなり反対や妨害もしたようです。
京阪の天満橋から淀屋橋への延伸(1963年)、近鉄の上本町から近鉄難波への延伸(1970年)、さらに最近ではJR東西線(1997年)、京阪中之島線(2008年)、阪神なんば線(2009年)と相次いで市内中心部への乗り入れ、通り抜けが実現しています。さらには南北方向に貫く「なにわ筋線」も計画されております。
これらは大阪の市営モンロー主義の終焉を示すものと言えましょう。
3月開業の阪神なんば線で結ばれる阪神や近鉄にすれば、おおげさに言えば、ベルリンの壁が崩壊したような、そんな思いなのかもしれません。