たゆたひ

たゆたひ

世の中、金!


「愛って何」
「恋って何」

不意に、2人の声が重なった。

「質問に質問で返すのって、卑怯じゃない?」
「質問に質問で返すのって、卑怯でしょ」

2人は顔を見合わせて笑う。

男と女。

双子であっても、2卵生で、似ているハズがない。

「まぁ、双子じゃないけどね」
「まぁ、兄弟でもないしね」

二人は声を揃えて笑った。


「恋って何」
「愛って何」

2人がまた、同時に切り出した。
首をかしげたのにしたがって、二人の髪がさらりと揺れる。

「それは、さっき私が言ったの」
「それは、さっき僕が言ったし」

2人が不満げに、声を合わせた。

「大切なもの?」
「大切なの?」

それから、顔を見合わせて首をかしげた。

「大切なものは愛じゃないね」
「大切なものは恋でもないよ」

「だって2つはどちらも同じ、いらないもの」
「うん、でも、やっぱり2つは違うよ」

確認するように頷いた女に、男は言う。

「どうでもいいでしょう?」
「どうでもいいのだけどね」

尋ねた女に、男は笑う。

「何が違うの?」
「綴りが違う」

「あぁ、そうね」
「あぁ、そうだろう?」

女が満足そうに笑って、男が満足そうに頷いた。

「大切なものは何だと思う?」
「大切なものは、何だろう?」

「やっぱり、片割れね」
「やっぱり、片割れだね」

片割れ、そう表現して、二人は互いに指さした。

「つまりはあなたで」
「つまりはキミだね」

頷きあって、二人で声を揃える。

「それから」
「それから?」

「お金でしょう?」
「時間じゃない?」

男が言って、女はちがうよ、と眉尻をさげる。

「時間があっても、お金がなくちゃ何もできない」
「お金があっても、時間がなくちゃ何もできない」

「お金があれば時間は手にはいる」
「時間があってもお金は手に入らないね」

女の言葉に、男は困ったように笑った。

「世の中、金!」
「世の中、金?」

「アナタといるために」
「キミといるために?」

二人は笑って、椅子から飛び降りる。

「時間がないね」
「時間がないよ」

「遅れちゃうね」
「それはダメだよ」

男の言葉に、2人は顔を見合わせた。

「急がなきゃ!」
「急がなきゃ!」

パタパタと軽い音が、2人分。
足跡も2人分。

空の向こうに、笑い声は響いて消えた。




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あっはっは。
スランプ。スランプ。
もーダメだ。こんなハズじゃなかったのに。

なんていうか、静かな文章を書きたかったんです。
広大な場所で、小さな子供が2人。
(まー、子供が世の中、金とか言ってたら、それはそれでイヤだけど)

わがままなお嬢様ばっか書いてたから、ツンデレは出したくなかったんですょ
よーするに、子供には子供の世界が広がっていて。
まー、私たちには到底理解できない、と、まぁ、そういうコトです。




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