山形達也85歳の心理学

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2024.07.27
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カテゴリ: 世界の行方
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スタッフの92%がこの3年間で退職したハリスの人望と政策

高橋 克己 2024.07.27 06:30

秘書やスタッフの離職率の高さは政治家の人望を測るバローメータの一つだ。自民党総裁候補の某幹事長や某デジタル相なども、そのせいか実績の割に人気がない。バイデンがメモやプロンプターで4年近く隠蔽してきた老衰ぶりを先の討論会で露呈し、急遽民主党の大統領候補に浮上したカマラ・ハリスも、副大統領就任後の3年間でスタッフ47人のうち43人が辞めたそうである(7月23日の『フェデラリスト』)。

匿名の元スタッフが「カマラの場合は、絶えず心を打ち砕かれるほどの批判(a constant amount of soul-destroying criticism)に耐えなければならないし、彼女自身の自信のなさにも耐えなければならない。だから常にいじめっ子(bully)を支えているようで、なぜだかよく判らない」と『ワシントン・ポスト』に語った記事も引用されている。ハリスはネットで「brat(ガキ)」と呼ばれるのが満更でもない様だが、本当の「brat bully(弱い者いじめの悪ガキ)」では洒落になるまい。

そのハリスの支持率がトランプを2%ポイントとリードしたと24日の『ロイター』が伝えている。22~23日に『ロイター/イプソス』が行った世論調査で、ハリス44%対トランプ42%となり、無所属のRFK・ジュニアを加えた場合は、さらにハリス42%対トランプ38%と優位になるそうだ。1~2日の調査ではトランプ1%ポイントリード、15~16日の調査では44%で拮抗していた。

6月27日の討論会と7月13日のトランプ銃撃ですっかり意気消沈していた反トランプ陣営はこの世論調査で俄然活気づき、ネットには高笑いするハリスの画像があふれ始め、1億ドル近い寄付が寄せられているともされる。一方、中道や右派のメディアはこの様子を「honey moon(一時的な当初の良好な関係)」と評している。



この前後の文脈が繋がらない不明瞭な言い回しは老衰のせいというよりも、ペロシ前下院議長、シューマーとジェフリーズの上下両院院内総務、そして元大統領のオバマやクリントンら民主党の「エリート」からの圧力に屈した口惜しさからか。前掲『WFB』に拠れば、原稿はお気に入り歴史家ジョン・ミーチャムが書いたそうだ。ミーチャムは先週、「バイデンの撤退スピーチを準備中」という報道を「全くのデマ」と非難していた。

ハリスの選挙戦は8月7日に予定されるVP候補の公表を経て、19日からの党大会での指名と受諾をもって正式に開始となる。副大統領候補には、当初名前の上がったカリフォルニア知事ニューサムやミシェル・オバマが消え、何れも白人男性で現役州知事のジョシュ・シャピロ(ペンシルベニア)、ロイ・クーパー(ノースカロライナ)、アンディ・ベシア(ケンタッキー)、JB・ブッカー(イリノイ)の他、ミシガン州の女性知事グレッチェン・ホイットマーやピート・ブティジェッジ運輸長官らの名が挙がっている。

こうした民主党の動きに対しトランプも、党大会の受諾演説前半で見せた「団結」ムードはどこへやら、25日のノースカロライナ演説では、ハリスをサンダースより更に左の「Radical Left Lunatic(極左の狂人)」だと激しく攻撃した。「狂人」かどうかは別として、ハリスの過去の言動を見ればバイデンが右に見えるほどなのは確かだ。その事例を22日の『Politico』から、紙幅が許す範囲で紹介する。

民主党が共和党よりも優位に立っている中絶問題でハリスは、バイデンよりも中絶の権利に深く踏み込んでおり、州の中絶法に対する司法省による監視強化を提案している。が、この主張は議会で克服不可能な困難に直面する上、州に委ねるとした最高裁の判断にも抵触し、ほぼ確実に法廷で争われることになる。

気候変動でもハリスは10兆ドル規模の気候変動対策を提案している他、フラッキング(水圧破砕法に拠るシェールガス・オイルの産出)の禁止を求めている。バイデンもフラッキングに反対するが、気候変動対策は1兆6000億ドル規模で、グリーン・ニューディールも全体を支持してはいない。フラッキング禁止はラストベルトの接戦州(ヴァンスの地盤であるペンシルベニアやオハイオなど)の票に影響を与える。

ハリスは、25日に上下両院議会合同で開かれたイスラエル首相ネタニヤフの演説会を民主党議員30数名と共に欠席した。出席すればネタニヤフのすぐ後ろにジョンソン下院議長と並んで座って何度もスタンディングオベーションをすることになり、これが嫌で逃げた。如何にも「brat」らしい振る舞いだ。当然、「The Squad」と呼ばれるAOCやイルハン・オマルら民主党の極左グループも欠席した。


の死に懸念を表明しながらも、ネタニヤフ政権への武器供給を継続している。ハリスもこれと意見を異にしてはいない。が、イスラエルの反撃で死亡したとされる数万人のパレスチナ人に対しては公然同情を表明している。

ただし、ハリスは上院議員として数十年にわたるイスラエル・パレスチナ紛争の長期的解決策として二国家解決を支持していた。これはバイデンも同様だ。また、トランプが仲介し、イスラエルと一部のアラブ諸国との関係を正常化したアブラハム合意も支持した。

最後は、記事では触れていないメキシコ国境と不法移民問題。25日の演説でトランプは、民主党が「いずれは2000万人」になる不法移民の票をあてにしていると難じた。就任早々バイデンから国境担当を仰せつかりながら現地へは1度行っただけのハリスを、トランクは「border Czar(国境皇帝)」と揶揄した。言うまでもなくジョン・ケリー「気候変動皇帝」の捩りだ。共和党下院は25日、ハリスの国境対策を非難する決議を220対196で決議した。6人の民主党下院議員がこれに加わった。

さて、候補を降りたバイデンが「核のボタン」を委ねられ続ける矛盾はあと半年間だが、それはまたハリス元来の左傾した主張が、バイデンのVPであり続ける彼女の言動に大きな制約をもたらす期間でもある。民主党の「エリート」が急拵えしたバイデン降ろし・ハリス擁立のこうした矛盾を、トランプが突かない訳がない。

トランプは次の討論会を『ABC』ではなく『Fox』で行うよう提案している。ハリスの笑ってごまかす手法は、トランプには通じまい。目下のところは「honey moon」で悦に入る態のハリスだが、「brat bully」の素養が選挙戦を通じて露呈するだろう。意味もなく大口を開けて笑う様子も、とりわけ無党派層の鼻に付くようになるのではなかろうか。





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最終更新日  2024.07.27 07:39:14
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