◆◆ 骨転移に効果があるゾーフィゴ治療 ◆◆
進行前立腺がんで見つかった場合の遠隔転移、そして、前立腺がんが進行した場合に起こる遠隔転移で最も多いのは、骨転移です。
前立腺がんによる死亡の主な原因は、骨転移による全身状態の悪化と考えていいでしょう。
骨転移が進行すれば、骨転移による症状、痛みが出てきます。
骨転移による症状は、著しく生活の質 QOL を落とし、筋肉量も低下し、さらに生活の質 QOL が落ちるといった、悪循環に陥ります。
骨転移が悪化しているうちに、他の転移、内臓転移などが発症進行し、深刻な状況になりかねません。
このように、骨転移を有する進行前立腺がんの骨転移進行に対する治療が、中長期的には、大変重要です。
進行前立腺がんにおける骨転移の治療は、生活の質 QOL 改善からいっても、治療という点からいっても、大変重要です。
昨今、新規抗アンドロゲン剤、プレシジョンメディシンなどの医療の進歩により、さまざまな治療が、少しずつですが、患者さんに使えるようになってきました。
いろんな薬剤が出てくるのはいいですが、いつ使えばいいのかは、治療法が増えるたびに、主治医は、頭を悩まします。
この文章を読んでくれている患者さんも、いろんな治療法がある事は、ある程度勉強されているかもしれません。
そして、今使っていない治療法が自分に合っていないか、そして、新しい治療をいつ使ってもらえるかと考えてしまいます。
患者さんは、自分から、こんな治療はどうだろうかと考えても、主治医自体が迷えば、なかなかその治療に踏み切れませんね。
ゾーフィゴ治療は、そしてその開始時期は、泌尿器科の専門医にとっても、難しい問題です。
最初にお話ししたように、進行前立腺がんの進行悪化の中心は、骨転移の進行です。
最近は、がんが発生した前立腺自体からというより、骨転移からのがん細胞のあちこちへの転移増殖が、患者さんに深刻な状況を引き起こすのではないかと考えられています。
となれば、進行前立腺がんの治療の中心は、やはり骨転移悪化に対する治療となります。
去勢抵抗性前立腺がんとなり、新規治療薬による効果が、明らかで持続している場合は、その治療を継続することには、抵抗はないと思います。
しかし、新しい治療が、患者さんに非常に適したとしても、根治につながるかといえば、残念ながら、不可能です。
進行前立腺がんでは、いずれ悪化する可能性大です。
根治とまではいかなくとも、共生できている状態で、悪化がない状態が続くことが、現時点での、目標といってもいいかもしれません。
前置きが長くなりましたが、骨転移に対して、効果があるゾーフィゴ治療について、頭の整理をしたいと思います。
骨転移がある患者さんでは、ゾーフィゴ治療のタイミングは重要です。
<ゾーフィゴ治療とは>
ゾーフィゴ(ラジウム -223 )は、カルシウムと同族のアルカリ土類金属であり、骨転移部位などの骨代謝の亢進した部位に集積する特性を有します。
生体内ではカルシウムと類似の挙動をとります。
投与したゾーフィゴ(ラジウム
-223
)は、骨転移部位などの骨代謝の亢進した部位にカルシウムと同様に取り込まれ、骨塩(ヒドロキシアパタイト)複合体を形成することで集積します。
取り込まれたゾーフィゴは、アルファ線を放出することで抗腫瘍効果を発揮します。
アルファ線を放出し、隣接する腫瘍細胞の
DNA
二重鎖切断を引き起こします。
DNA
二重鎖切断の修復は困難であり、骨微小環境内において、前立腺癌細胞、骨芽細胞、破骨細胞は細胞死に至ります。
ゾーフィゴは、バイエル薬品が、日本での販売元です。
バイエル薬品のホームページに詳しく解説がありますので、興味がある方は、目を通してください。
https://www.xofigo.jp/patients
という臨床試験が行われました。
ゾーフィゴという放射線同位元素による治療が開発され、その効果を、たくさんの患者さんで検討解析したものです。
骨転移があって、骨転移の症状がある、去勢抵抗性前立腺がんの患者さん
921
人で、ゾーフィゴの治療効果を検討した臨床試験です。
無作為に分けて、ゾーフィゴ治療のグループ
614
人と偽薬のグループ
307
人で比較しています。
ゾーフィゴ治療とは、 4 週間隔で、ゾーフィゴを 6 回(約 6 ヶ月間)静脈投与します。
骨転移がある患者さんですから進行前立腺がんです。
経過を見ていく上で、亡くなる方が出てきます。
この臨床試験で、ゾーフィゴ治療グループの方が、生存している数が多いという結果です。
統計上は、あきらかに、ゾーフィゴ治療群のほうが、有意に生存期間を延ばしていました。
全生存期間の中央値(患者さんのそれぞれの生存期間を並べての中央の値、患者さんの数が偶数であれば、真ん中の 2 人の結果を足して、 2 で割ったもの)は、
ゾーフィゴ治療群: 14.9 ヶ月
対照群: 11.3 ヶ月
でした。
生存期間の延長が、たった
3
ヶ月半と思うかもしれませんが、これはあくまで全体の結果です。
さらに、ゾーフィゴ治療群では、骨転移の痛みなどが出るのを遅らせることも、わかりました。
ゾーフィゴ治療の恩恵を受ける患者さんは、解析の結果、ある程度分かってきました。
ゾーフィゴ治療は、
4
週毎の
6
回の投与、約半年間です。
あまり病状が悪化した状況では、ゾーフィゴ治療の恩恵は得られないかもしれません。
痛みを取るといった、緩和医療目的ではなく、治療目的のゾーフィゴ治療です。
ゾーフィゴ治療で、生存期間を延ばす患者さんの条件として、ゾーフィゴ治療 4 週毎の 6 回の投与が完遂できることだと、この臨床試験では、結論付けています。
この 6 回完遂できるかどうかの因子も検討されています。
● ECOG-PS 0-1
ある程度活動ができる健康状態である事が必要です。
下に、解説しています。
●
ヘモグロビン値
≥10g/dL
●
疼痛は軽度以下
● PSA 値 ≤141ng/mL
などが挙げられており、また化学療法の既往の無い方で
6
回投与完遂率が高く報告されています。
※ ECOG-PS 0-1 とは
ECOG-PS 0 : 全く問題なく活動できる。 発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
ECOG-PS 1 : 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。 例:軽い家事、事務作業
ECOG-PS 2-4 とは
ECOG-PS 2 : 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。 日中の 50% 以上はベッド外で過ごす。
ECOG-PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の 50% 以上をベッドか 椅子で過ごす。
ECOG-PS 4 全く動けない。 自分の身の回りのことは全くできない。 完全にベッドか椅子で過ごす。
あまり、ゾーフィゴ治療を後回しにすると、いい条件でゾーフィゴ治療が受けられず、 6 回の治療前に頓挫する可能性があります。
<ゾーフィゴ治療の副作用、安全性>
ゾーフィゴ投与中に認められた有害事象(副作用)ですが、 94 人の患者さんの報告があります。
グレードの数字が低いほど軽症と考えていいです。
グレード
3
の貧血が
4
人、グレード
3
の白血球減少症が
2
人、グレード
3
の好中球減少症が
1
人報告されました。
骨髄で、赤血球や白血球や血小板が作られます。
ゾーフィゴは、骨髄に作用しますから、副作用としてこのようなことが起こりやすいと考えられます。
副作用に関しては、ゾーフィゴ治療の前治療に影響を受けます。
抗がん剤治療(タキソテールやジェブタナ)は骨髄抑制という副作用があります。
ゾーフィゴ治療の副作用に、骨髄抑制があります。
骨髄抑制の状態が、ゾーフィゴ治療継続に影響を及ぼします。
<骨転移の進行と内臓転移は相関する>
2003
年
6
月〜
2011
年
12
月に去勢抵抗性前立腺がんの患者(
442
例)のうち、死亡が確認された
359
例について、骨転移・内臓転移出現の時期を調査しています。
去勢抵抗性前立腺がんの初期には
90%
以上の患者さんが骨転移のみを有しますが、病勢の進行に伴い内臓転移の発現割合が増加しています。.
内臓転移が出現すると、生存期間は急激に短くなります。
骨転移部位から、内臓転移部位にがん細胞が供給されている可能性があります。
その考えから、骨転移を抑制できれば、内臓転移も抑えられて、生存期間が延長するのではないかと推測されています。
骨転移の部位から、内臓転移など全身への転移が起こっているのではないかと最近、推測されています。
つまり、骨転移をうまく制御することで、他の部位への転移拡大が抑えられないかという考え方が生まれてきています。
<ゾーフィゴ治療をいつ始めるか?>
ゾーフィゴ治療が、骨転移部位、骨髄に働くとすれば、
治療前の骨髄の状態を知ることが重要です。
副作用が骨髄に出やすいからです。
骨転移が進行してしまうと、骨髄機能は低下します。
大半の骨髄が前立腺がん細胞に置き換わってしまうからです。
骨髄の状況が悪ければ、つまり、貧血が進行した状態(Hbが低下している)では、ゾーフィゴ治療は、開始も完遂もできません。
白血球数、血小板数などが低下している場合も、ゾーフィゴ治療も困難です。
ゾーフィゴ治療によりそれらの値が悪化し、副作用が強く出る恐れがあります。
抗がん剤治療、タキソテールやジェブタナの化学療法後では、これらの骨髄機能が低下してしまっている可能性があります。
ゾーフィゴ治療ができるタイミングを逃す可能性が出てきます。
ゾーフィゴ治療は、 4 週毎の 6 回の投与、約半年間です。
ゾーフィゴ治療の効果は、この
6
回の投与が完遂できるかどうかが大きいようです。
6
回投与できるためには、簡単に言うとある程度、体調がいい患者さんである必要があります。
これは、生存率などへの影響を考えた場合です。
最後になりますが、ゾーフィゴ治療は、生存率を延長することがわかっています。
特に骨転移の痛みなどの症状がある人には、痛みが取れて、生活の質
QOL
もよくなります。
やはり、いつ使い始めるかということが問題になります。
骨転移の悪化がある場合は、ゾメタやランマークも使います。
ゾーフィゴ治療をおこなうばあいには、ゾメタやランマークを併用することで、治療効果が上がることがわかっています。
<ゾーフィゴ治療での留意点>
1.前立腺がん細胞自体への治療ではないこと
骨転移以外への直接的な治療効果はない(前立腺や内臓転移やリンパ節転移への効果は期待できない)。
2. 4 週 1 回の投与が 6 回なので、約 6 か月かかる。
3.治療する前と治療中の体調に一定の条件がある。
ゾーフィゴ治療は、治療前、治療中に体調が悪い(貧血、白血球減少、血小板減少など)と受けられない。
4.非常に高額な治療
5.同時の、他の併用薬の選択が難しい。
6.治療の時期の選択が難しい。
ゾーフィゴ治療は、前立腺がんの骨転移に対する治療です。
骨転移がある状態というのは、進行前立腺がんの状態です。
進行前立腺がんは骨転移のみではなく、他の部位へも進展します。
急激に悪化している前立腺がんでは、全身治療が優先されます。
去勢抵抗性前立腺がんとなれば、治療法の選択は簡単ではありません。
骨転移のみへの治療では、骨転移以外の病気の進行を抑えきれない可能性があります。
また、非常に高額で 1 回に治療に 60 万円以上かかります。
6
か月で
400
万円近くかかる計算です。
「高額療養費制度」で患者さんの負担は軽減されます。
心配な方は、治療前に病院で相談してください。
骨転移のある患者さんにゾーフィゴ治療は有効で、うまく使えば生存率を延ばすことは説明しました。
私 Uromaster 自身、骨転移の痛みひどかった患者さんにゾーフィゴ治療を行い、劇的に痛みが消え、普通の生活ができた経験があります。
また、ゾーフィゴ治療の開始が遅れれば、骨転移が悪化してしまい、貧血や血小板減少などの骨髄抑制が起きてしまい、結局、ゾーフィゴ治療ができない、間に合わないという状況にも陥りかねません。
タキソテールやジェブタナの化学療法などの治療後であれば、すでに骨髄抑制が起きてしまっていて、ゾーフィゴ治療を行いたいにも、患者さんの体調が悪くてできないことがよくあります。
なかなかゾーフィゴ治療のタイミング、選択は、判断が難しいですね。
骨転移の症状が出てきたり、骨転移による血液での
ALP
(アルカリフォスファターゼ)の値の上昇が明らかな場合は、検討していいと思います。
但し、
6
ヶ月間の治療期間が必要で、この間の骨転移以外の病気の進行が心配ということになります。
新規抗アンドロゲン剤の併用の効果は明らかではありません。
私
Uromaster
は、ゾーフィゴ治療に、プロセキソールなどの女性ホルモンを併用しています。
プロセキソールには、前立腺がんに対する治療効果がある程度期待でき、骨塩量増加などの利点もいわれています。
すごい効果はないですが、使わないよりいいのではないか、ある程度骨転移以外の部位にも効果があるのでは、骨折予防にもいいのではないかと期待して使っています。
ゾーフィゴ治療の開始時期に関しては、なかなか専門医にとっても、判断が難しいというのが本音です。
ゾーフィゴ治療に併用する治療はどうするかという問題も解決されていません。
イクスタンジの併用は、いい可能性があります。
骨転移がある、進行前立腺がんの患者さんで、
ゾーフィゴ治療に興味がある方は、
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