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前立腺がんの診断治療の今昔 ◆◆
私Uromasterが、大学卒業後、
出身大学の泌尿器科に入局したのが、
医師としてのスタートでした。
私が、医者になりたての頃は、
前立腺がんに対する診断、治療というのは、画一的で、
ほとんどの患者さんは、進行前立腺がんで見つかっていました。
PSA
検査なども普及しておらず、根治できる状態で患者さんが見つかることはほとんどありません。
つまり、あちこちに転移した状態で、転移からの痛みなどで、進行前立腺がん、転移性前立腺がんという状態で、
病院そして、泌尿器科に来られていました。
直腸診(肛門からの前立腺の触診)では、石のように固い前立腺をふれ、前立腺周囲ががちがちの状態でした。
KUBといって、腹部の
X
線写真を撮ると、
脊椎や骨盤の骨は、
真っ白になって、明らかに多発骨転移の状態。
前立腺がんの骨転移は、造骨性転移が多く、
腹部の
X
線写真では、転移部位が真っ白になってしまいます。
治療に関しても、
当時は、内科的去勢術(リュープリン、ゾラデックス、ゴナックス)などの注射はなく、
外科的去勢術が中心の内分泌療法(去勢術)でした。
憶えているのは、泌尿器科の外来に、丸い球状の物体がありました。
恐らく外科的去勢術のあとに、精巣(睾丸)があった場所に、偽睾丸として挿入するのだと思います。
去勢術の効果がなくなれば、
あっという間に、
終末期医療、
緩和医療という流れです。
女性ホルモンを使った時期もありました。
現在は、PSA検査により、早期に前立腺がんを見つけることができるようになりました。
それでも、進行前立腺がんで見つかれば、治療は簡単ではありません。
進行前立腺がんに対する根治療法は、
残念ながら、まだありません。
しかし、年々、いろいろな治療薬が登場し、以前とは比べられないほどの治療選択ができるようになりました。
逆に言うと、現在は、どの治療を選べばいいのかという問題が生じています。
多種多様な治療がある中、
転移性去勢抵抗性前立腺がん(内分泌療法の効果がなくなった前立腺がん)の患者さんでは、ある治療を行ったあとで、
次の治療(2次治療)に移行できるのは、約半数、
そしてその次の治療に移れるのは、さらにその半分といわれています。
理由としては、病状の進行や体調の悪化がその理由の大半だと思います。
時間がない状況での、治療選択は、難しい。
個人個人に適した『個別化医療』が、治療の理想です。
『プレシジョンメディシン』ということばがあります。
これは、個別化医療をもう少し、拡大した考え方です。
理想的には、個人個人で、適した治療を選択できるのがいいのです。
プレシジョンメディシンでは、
あるグループを拾い上げ、そのグループに適した治療を選択しようというものです。
医師の間でも、個別化医療とプレシジョンメディシンの意味を混同している現状です。
現状は、
あるグループを見つけ出し、そのグループに適した治療を行おうというプレシジョンメディシンが、端緒についたばかりだと思います。
様々な治療を試して、いい治療を選ぶのであれば、身体がいくつあっても足りませんし、時間もありません。
効率的に治療を選びたいものです。
そうはいっても、プレシジョンメディシンとよべるものは限られています。
例をあげれば、
BRCA 遺伝子変異陽性 → リムパーザ(一般名オラパリブ)
MSI-High → キイトルーダ
神経内分泌がん(小細胞がん) → 肺小細胞がんに準じた抗がん剤治療 PE 療法(シスプラチン/エトポシド)など
などが代表的です。
詳しくは、
BRCA
遺伝子変異陽性の前立腺がん、
MSI-High
の前立腺がん
の詳細は、
以前の配信(
2021
年
10
月と
11
月分)を参考にしてください。
神経内分泌がんの詳細は、
配信( 2019
年
8
月と
9
月
、 2020
年
11
月分
)を参考にしてください。
これらのプレシジョンメディシンは、他の治療に比べれば、より効果が期待できるというものです。
根治とはいきません。
しかし、回り道をせずに、効果が期待できる治療を選択できる可能性があります。
なかには、長期間、効果が持続して、幸運な経過が得られる患者さんがいるのも事実です。
これらの特殊な病態では、一般的な治療では、進行ははやく、進行再発の抑制は、簡単ではありません。
これらの病態であることを疑うこと、診断することが、
治療の足掛かりとなります。
これらの異常を見つけるためには、血液やがん組織の検査が必要です。
去勢抵抗性前立腺がんの状態で、進行がはやい場合は、
血液検査または組織検査を、転移部位からでもいいですので、検討が必要です。
患者さんは、
一人ひとり、併存疾患や、副作用の出方、薬物の代謝は異なります。
一方、前立腺がんも一様ではありません。
がんの顔つきも様々ですし、
前立腺内に、いくつかの異なったがん組織が存在することも、よくある話です。
様々な治療後に、生き残った前立腺がん組織は、
最初とは異なる性格を持っていることは、容易に推測されます。
ともあれ、治療の初期には、様々な画像診断を駆使して、前立腺がんの状態を把握、診断することが、最初の一歩でしょう。
治療は、その後に始まります。
『個別化医療』や『プレシジョンメディシン』における
AI:Artificial intelligence(人工知能)の活用も、
近い将来、始まるものと思われます。
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