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高校時代の恩師、眞野康洸先生が本を出版した。
「湖国の冬」というスケッチ集だ。
朽ちていこうとするものにはある種の美しさがある。手入れされなくなった庭の木々や雑草が繁茂する中にひっそりと崩れかけた家を見つけるとはっとする。朽ちた壁に這う緑の蔦の美しさに魅せられたり、汚いだけかと思ってよく見ると窓の格子の意匠の美しさにどきっとしたりする。確かにここに人が住んでいたという気配や面影を感じて、不思議な気持ちになる。。。
眞野先生はそういうものの発する美しさを人一倍感じておられたのだろうと思う。それも、冬のさなか、雪の中にたたずむ廃屋たちに心奪われたのだ。
確かに美しい。眞野フィルターを通すと崩れかけの小屋もこんなに美しく見えるのかと思う。でも、見終わったあと、ものすごく寒くなってしまった。(笑)早くお風呂にはいって熱燗でも頂きたい気持ちにかられる、そんなスケッチ集である。
私は高校時代 3
年間美術部に所属していた。眞野先生は美術教師で当然美術部の顧問であった。真野先生の授業は至ってシンプルだ。生徒は画題を渡され、提出する。あんまりこうした方が良いとか言われた覚えが無い。部活もほとんど口を出されたことが無い。本当に物静かな人という印象で、私はそれを好ましく思っていた。
もっとも私の友達のお兄ちゃんが 3
年の時、眞野先生が担任で「ぜんぜん進路指導してくれへん!」とお母さんがご立腹だったらしく物静かなのも致し返しではあるが。
そんなだったから、眞野先生を先生と呼んではいるけれど、あまり先生とは思えなかった。その人は私が初めて出会った本当の画家だった。
美術準備室には必ず描きかけの日本画が巨大なイーゼルに立てかけてあった。それはいつも廃屋の絵で、高校生の私にはそれがいいものなのか悪いものなのかよく分からなかったが、とても惹かれるものがあると思っていた。
西日の当たる美術準備室、油絵の具の匂い、コーヒーの香り、四角い画家の背中。。。
本を見終わってからしばらくして、そんなゆるゆるした放課後のことをまざまざと思い出してしまった。
ああ、なんか、ハチクロ。。。?みたいな。
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