ChambolleやRicheなどのフェミナンなワインは 大抵そうだ。同じブルゴーニュでも CdB の赤になると、良質のもので有っても一口目で高揚感を得られるのは稀で、ボトル半分位飲み込んで行くと、漸くしてその素晴らしさが朧げながら分かってくる。いわば「じっくり付き合ってその良さ」が分かると言えば良いだろう。
その点からするとロワールの良質の CF というのは勿論一口目でも分からず、ボトル半分を飲んだ頃に漸く良いかなと思い、気がつくとボトルが空になっているという感じだ。官能を感じさせる訳でも無いし、取り立てて果実のトーンが高い訳でも無い。ワインは往々にして素朴、朴訥だが自己主張をせず、そっと寄り添う感じで、温かみ、癒しを感じさせる。一目で惚れるような美貌は無いが長年連れ添って改めて良さを実感する良妻賢母型の女性に例えられるだろうか。今大化けしてしまった Clos Rougeard にしても同様だ。 Clos Rougeard に Musigny や Richebourg の高揚感を期待しては行けない。が、実際、一口飲んで判断してしまった古参のブルゴーニュファンは多い。
閑話休題、今日のお題のワインだが、これも非常に良質だ。ワインは非常に凝縮されているが、トーンは中庸を保っていて CF 独特の嫌な青臭さや黒さは全くない。20年余を過ぎてタンニンも丸まり、ざらっとしているが、それがかえって綿のタオルのような包み込むような優しさを感じさせ、非常に心地良い。樽の成分はないが、濁りが無く、却って果実のピュアさが引き立っている。少し酸味が有るトマトソース系の料理には抜群に合うだろう。敢えてブルゴーニュに例えると、 Clos Rougeard のような少し女史のワインを感じさせる気高さは無いが、寧ろ翁のワインのように優しさ、癒しを感じさせる素晴らしいワインである事に違いは無い。 bouchon が短いのでこれ以上の熟成にはリスクを伴うが、 bouchon が良ければまだまだ十分持つだろう。
残念な事にこのドメーヌ、その質とは裏腹に商売は下手だったようだ。樽熟に加えて瓶熟を24ヶ月以上と長く取りリリースを遅くする一方、出荷価格は低く、キャッシュフローが問題だったようだ。 2009
年に更生法適用で再生を図ったものの、 2016
年3月に破産清算されて現在は存在しない。在庫を精算中なのだろうか、バックビンテージがまだ若干市場に出回っているようなので完全に幻になる前に一度味わっても良いように思う。ただ先に書いたように一口飲んで判断する愚は避けて欲しい。
そしてこのワインを真に評価できるのは一通りブルゴーニュを飲んで分かった、真の魅力は、一目で分かる美貌や気品だけではなく、和みや癒しも大事だと悟った、ある程度経験のある人だけだろう。ワイン経験だけではなく、人生経験も必要かもしれないが。
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