ワインを本格的に始めた 30 年ちょっと前、ワインの作り方にも少し興味を覚えて UC Davis のワイン醸造学の教科書を図書館で借りて(私の学校も UC だった為、置いてあった)ざっと目を通して見た事が有った。細かいところは忘れてしまったが、その一節で「アルコール発酵を始める前に SO2 を入れ、野生酵母や雑菌を滅却し、その後純粋培養酵母を入れる」というのを読んで結構乱暴だなと言う印象を持った事を覚えている。その後ブルゴーニュに何度も行き殆どのヴィニュロンが自然酵母を使ってワインを作っている(例外はある)事を目の当たりにし、この印象が確信に変わった。
それから何年もし、近年所謂ナチュール系や日本のワインを飲む機会が有り(このブログにも何度か書いている)、実は UC Davis のあの教えは実は正しいのではないかと思う。端的に言うとナチュール系や日本のワインの多くは酢酸や乳酸を感じさせる。乳酸はまだしも耐えれるが酢酸を感じるワインは飲む事が出来ない。香りにつんとする刺激臭、味わいも酢酸の酸は尖っていて丸みを帯びた心地よい酸を全て打ち消してしまう。更に雑菌やブレット由来と思われる雑味(雑巾の絞り汁の匂い)の風味も加わるものも有り(日本ワインに多い)、殆ど発酵事故を感じさせる。
閑話休題、このワインだが、残念ながら強い酢酸が感じられ一口でギブアップ。他に Domaine の背景やこの作り手の前職とか書ける事は有るが、このワインについては取り敢えずこれ以上書かない。
ただこのワインを飲んでみて、ナチュール系や日本ワインにこの「発酵事故系」が多いのか、自分なりの仮説が少し浮かんできた。ブルゴーニュの代々のドメーヌは畑付き、蔵付き酵母が多く存在し、葡萄を潰し発酵が始まると最初からそういう酵母が支配的で他の菌を寄せ付けず、クリーンなワインが出来るのだろう。ところが日本ワイン、新興ナチュール生産者の多くは畑も醸造所も新しく、畑付き、蔵付き酵母が殆どいないのではないだろうか。そのような環境下で自然酵母に頼ると良質な酵母も少ないし、 SO2 も少ないので雑菌叢が混入し、所謂糖を巡ってバトルロイヤル状態になり、結果乳酸、酢酸、雑味が混じった味になるのだろう。発酵が始まり少量のアルコールが出来た瞬間に酢酸菌は更にパワーアップして支配するのだろう。しかもこの作り手は全房なので好気性である酢酸菌にとってより都合が良いように思える。比べてみると、ロワールのある程度歴史を持つナチュール系の作り手のワインがこういう発酵事故系のワインが少ないのも(新興作り手にはまま有る)何となく説明がつく。
先に述べた UC Davis 系のワインは確かに面白味がないかもしれないが、クリーンでは有る。クリーンで有るけど面白味の無いワイン、濁った味わいだけど面白味溢れるワイン、どちらを選ぶかは個人の好みなのでまあ、どっちでも良いのだろう。
とはいえ、濁った味わいで面白味が有るワインなんて無いんだけどね
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