濫読屋雑記

濫読屋雑記

2006年02月27日
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カテゴリ: 手に取った本
昨日、名古屋へ出かけたのですがお目当ての本が店頭に無かったので代わりに買ってきたのが『 ギャラリーフェイク(32) 』(最終巻です)で有名な 細野不二彦 さんの『 ヤミの乱破(1) 』と『 ヤミの乱破(2) 』(こちらは表紙画像無し)の2冊です。

この2冊、講談社の『 イブニングKC 』に不定期連載されていたのを立ち読みして以来、探していたのですが中々見つからず昨日、偶然店頭で見つけたので買って帰った、という次第です。

さて、このマンガの内容ですが、 ひと言で言い表すなら「重い」です さらにかなり表現が過激でグロテスクな画も入っています ハードボイルドスパイ活劇!! 」とありましたからこんなものなのでしょうがね。ただ、『 ギャラリーフェイク 』と同じ感覚で買うものではありませんね。どちらかと言うと、『 フェイス・オフ 』に近い内容です。

物語は、終戦後の混乱の只中、昭和22年、1947年に始まります。当時、日本は太平洋戦争に敗れ「 天皇陛下より偉い マッカーサー元帥 隷下の 連合国軍最高司令部(GHQ) の占領下にありました(実際に、当時の日本はマッカーサーのひと言で何でも動いたのです)。 日本政府はこのGHQの言いなりで行政能力は社会の機能を動かすのに文字通りギリギリの状況、国民が飢えと寒さで路上で死んでいるのが当然、という時代でした 。そんな、 日本の有史以来初めてと言える混沌としたカオスの世界、 オキュパイド・ジャパン ヤミの乱破 』です。

主人公は 桐三五 元陸軍東部第三十三部隊の少尉 です。この第三十三部隊とは「 陸軍中野学校 」の出身者で編成された諜報工作部隊で、 はその部隊で「 ドーベルマン 」と異名をとる辣腕のスパイ、日本語で訳すると「 乱破(ラッパ) 」だったのです。しかし、終戦後は戦争に負けた衝撃で放心状態となり中国大陸から引き揚げて来たところを、元上官で『 堕落画報 喇叭出版舎の社長 猿田征四郎 元中尉に拾われて彼の妹、 絹江 と共に出版社の手伝いを始めます。実は、このカストリ雑誌の出版社とは表の顔で、 猿田 は連合国軍関係の「 ヨハンセン なる人物から指令を受けて活動する工作員だったのです。当然、桐もその活動に加わるのですが…

この たち「 乱破(ラッパ) 」の敵は、今や歴史の彼方に消えた ソビエト です。 戦時中、中国大陸で共産党軍の捕虜となりモスクワで洗脳、さらに人体改造 (これがグロイ!) された 赤化戦士 」と呼ばれる 共産主義者の手先 と(実際に、捕虜になったり、シベリアに強制労働させられたりした兵士たちの中には思想教育の結果、洗脳されてしまった人間がいたそうです。これらの人たちが諜報・工作活動をしたかは定かではありませんが、GHQと公安当局はこれら引揚者を特に警戒・監視していた事は事実です) GHQと民主主義の「犬」となった桐たちが終戦直後の混乱する東京を舞台に戦うという物語です (ウーン、「犬」と「戦後」というキーワードを聞くと 藤原カムイ さんの「もう1つの昭和」を描いたコミック『 犬狼伝説 』を思い出すな~)。

こうして、 簡単に説明しても歴史をカジッタ人やこの時代を舞台・題材にした小説 (例えば、『 浅見光彦シリーズ 』等は事件を起こす要因を良くこの時代にもってきています) を読んでいる人の他は、具体的に想像する事すら困難でしょう 。私も、歴史を学んでいる時に得た知識のほか、親戚の大叔父や叔父達から聞いた昔話のおかげでなんとか、この『 ヤミの乱破 』の時代背景や雰囲気を想像できるといった具合です。この時代、 終戦直後の混乱期の思い出は日本人にとっては屈辱的で「重たい」内容をいっぱい含んでいます。みなさんの周りの人たちでも、率先してこの時代の「重たい」真実を話す人はいないでしょう 。そんな身近でありながら全然知らない昭和を案内するのにピッタリの1冊があります。それが 原田弘 著『 MPのジープから見た占領下の東京 』(草思社、1994年、表紙画像無し)です。この本は、昭和23年から昭和34年まで警視庁から進駐米軍のMP(ミリタリー・ポリス=陸軍憲兵)への協力のために出向していた著者が、MPのジープによるパトロールに通訳として同乗して見た、日本人には知らされなかったオキュパイド・トウキョウの真実の姿を回想と写真で再現した本です。

ほか、安く簡単に手に入る本としては少々時代は下りますがまだ、終戦直後の雰囲気が残る昭和29年を舞台とした本があります。この本は、テレビでもお馴染みの元内閣安全保障室長で東大安田講堂事件の際には警視庁警備第一課長として指揮を取り、連合赤軍浅間山荘事件の時には警備幕僚として1トン鉄球を使用することを発案した人物、 佐々淳行 氏が新米警察官時代を回想して書いた『 目黒警察署物語 』(文芸春秋、1994年)があります。

また、細野さんが『 ヤミの乱破(2) 』で登場させている「 光クラブ事件 」有名な 山崎晃嗣 (アキツグ)と 平岡公威 (キミタケ)、作家 三島由紀夫 の本名、との関係を周辺の資料から推理して大胆な仮説を立てた保阪正康著『 眞説光クラブ事件 』(角川書店、2004年)が昨今の ライブドア事件 と絡めて読んでみると中々面白いのではないかと思います(三島由紀夫はこの「 光クラブ事件 」と 山崎晃嗣 をモデルに『 青の時代改版 』を書いています。それにしても、山崎が自殺した日と三島由紀夫が自衛隊の市谷駐屯地を襲撃、割腹自殺した日が同じ11月25日だったとは)。 保阪 さんはこのほかにも昭和史の謎に関わる様々な本(私の手元にあるものでは『 あの戦争は何だったのか 』)を書いておられるので、興味のある方は探して読んでみると面白いかもしれません。

でも、このマンガを読んでいて困ったのは、『 ギャラリーフェイク 』の サラ嬢 と同年代の女の子が、例えば 絹江 さんとかが、 みんな同じに見えてしまうという事です 。ウーン、 サラ嬢 のイメージって自分の頭の中ではそんなにも強いものだったのか~

ヤミの乱破(1) ギャラリーフェイク(32) 眞説光クラブ事件





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最終更新日  2006年02月28日 03時00分11秒 コメント(3) | コメントを書く


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