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「いらっしゃい・・・まだ降ってる」
「うん、もうすぐ上がりそうだけどね」
「ありがとう、来てくれて」
「お礼を言うのはオレの方だよ。間にあったかな??」
「う~ん、ちょっと待って・・・大丈夫みたい。今 11 時 40 分だから」
「でも、いいの??」
「いいの・・・ちょっと待って灯りを落とすから」
カウンターを出る女。店の看板を取り込み、シャッターを下ろす。
頭や肩の雨に濡れた部分もそのままにオレの傍に立つ。
ハンカチを手に女が雨に濡れた部分を拭き取る。
オレが座る椅子を回転させ正面を向かせる、視線を外すことなく見つめる女。
スカートをたくしあげる、オレは膝を閉じた。
オレの腿に座る女。開きかけたオレの口に人さし指を合わせ言葉を遮る。
静かに目を閉じ顔を傾ける、唇を合わせる。オレは女の下唇を女はオレの上唇を挟む。
目を開け静かに離れる唇、互いの舌先が伸びつつき合う・・・
目の周りを朱に染め可愛く一言・・・
「お誕生日、おめでとう・・・」
「ありがとう」
オレの腕をとり時計に目を向ける・・・
「 11 時 50 分、何とか間に合ったね。明日にならなくってよかった・・・」
膝から降り、カウンターの内に手を伸ばす・・・手にはフルーツタルト。
「前にこれが好きって聞いたような気がするんだけど・・・??」
「うん、好きだよ。ありがとう」
「待って・・・」
キャンドルを立て火を付ける。
「吹き消して・・・」
「なんか照れるな」
フゥ~・・・
カウンターに入る女。
シェーカーを手に取り、ホワイトラム・ライムジュース・グレナディンシロップ・卵白を入れシェイクする。出来上がったカクテルをシャンパングラスに注ぐ・・・
グラスを 2 コカウンターに置く。
オレの傍に戻った女・・・
「私は右、それとも左??」
「触れたくなるようないい女はオレの左側」
「貴男が右利きだから??」
「ふふふっ・・・」
オレの左側に座る女・・・
「改めて、お誕生日おめでとう」
「 2 人だけの誕生日をありがとう」
シャンパングラスを軽く掲げ乾杯をする。
カクテルは秋の早朝、昇り始めた朝日のような色だ。グレナディンシロップの深みのある赤が卵白を加える事で朝焼けのような色になり味にもコクがでる。
「ラム酒の原料を知ってる??」
「サトウキビだろ」
「じゃ、グレナディンシロップは??」
「本当はザクロ、でもカシスなどを使ったものもある」
「これは美味しい??」
「うん、誕生日を祝ってくれるに相応しいよ」
「ふふふっ・・・プレゼントを欲しい??」
「なんか怖いね・・・」
「このカクテルはね、セプテンバー・モーンって言うんだけど・・・<九月の朝>って言う意味なんだよ・・・どう??」
「モーニングではなくモーン??」
「らしいよ・・・どうする??」
「・・・今晩、泊めてくれる???」
「いいよ、泊めてあげる。朝には私の身体をグラス代わりにセプテンバー・モーンをもう一杯飲ませてあげる」
オレの誕生日は 9 月 8 日。そう、今日は 9 月 8 日。
降っている雨も止み、きれいな朝焼けを見ることが出来るだろう・・・