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進まぬレフトバックの補強が、ファンをやきもきさせているこの夏の移籍市場。
リバプールにとって、レフトバックの補強は最優先となる補強のはずだ。
移籍市場が閉まるまでまだ2ヵ月近くも残しているとはいえ、そして世界に目を向けても決して人材が豊富なポジションではないとはいえ、マネージャーのケニー・ダルグリッシュと、ダイレクター・オブ・フットボールのダミアン・コモリが今のこの状況を快く思っていないのは確かだろう。

彼らが取った(であろう)補強は、まずマルセイユからボスマン・プレイヤーとなっていたタイェ・タイウォへの関心から始まった。

タイウォは、欧州の名立たるビッグクラブでの成功は未知数なものの、ヨーロッパのトップクラスでの舞台における経験は豊富で、ナイジェリア代表として国際経験も十分だ。
レフトバックとして欧州トップクラスの実力を持っているとも言われている才能を、移籍金ゼロで獲得できるチャンスだったが、ヨーロッパ中のクラブがこの才能を放っておくはずもなく、結局はイタリア王者のACミランへの加入が早々にアナウンスされた。
ミランは、フィリップ・メクセス(彼もリバプールがターゲットにしていたと言われる)の獲得も同時に発表しており、高齢化と故障の多かった最終ラインにおいて両面の課題をクリアできる選手を獲得することに成功した。

タイウォを諦めざるを得なくなったリバプールが次に目を付けたのが、ニューカッスル・ユナイテッドのホセ・エンリケだ。
マグパイズのお騒がせオーナー、マイク・アシュリーの強い抵抗に合いながら、彼の獲得を目指したが、移籍金で折り合いがつかず、一旦は諦める形となってしまった。


このフランス人については、アーセナルのマネージャー、アーセン・ベンゲルが契約延長の話し合いを行い始めたという以外、これといってレッズの一員となる障害は見当たらなかったのだが、クリシーが最終的に選んだのはウェイン・ブリッジ、ミロスラフ・コラロフに納得がいかなかった、ロベルト・マンチーニのマンチェスター・シティだった。
サラリー、そしてチャンピオンズリーグへの出場権ということを考えれば、リバプールよりシティに分があるのは否定できないが、気になるのはガナーズとシティが合意した700万ポンドという移籍金だ。
セスク・ファブレガス、サミル・ナスリ、アンドレイ・アルシャビンの放出が濃厚な中盤に大きな変革が行われようとしているアーセナルは、少しでも多くの資金を必要としているはずにも関わらず、リバプールがオファーしたと言われる800万ポンドよりもシティの700万ポンドを選択したのはなぜだろうか。
2010-11シーズンの終盤戦、アンフィールドにアーセナルを迎えた試合で、試合終了後にダルグリッシュとベンゲルの間に起こったことが影響しているとは思わないが。

クリシーの獲得にも失敗したことで、リバプールはターゲットを再びホセ・エンリケに戻したと言われているが、果たして彼が本当にリバプールに相応しいタレントなのだろうか。

ここではOpta Index Statsを材料に、ホセ・エンリケとガエル・クリシーの昨シーズンの成績を比較してみようと思う。
そしてここには、プレミアリーグを代表する3人のレフトバックにもご登場いただくこととしよう。
プレミアリーグ最高のレフトバックと謳われるマンチェスター・ユナイテッドのパトリス・エブラ、イングランド代表不動のレフトバックで世界的にも評価が高いチェルシーのアシュリー・コール、そして前者二人を凌ぐほどのパフォーマンスを披露しトップスターダムへと成長を遂げようとしつつあるエバートンのレイトン・ベインズの成績も同時に見ていき、クリシーとエンリケのレフトバックとしてのタレントの指標にしたいと思う。



上の表が昨シーズンにおけるそれぞれの成績だ。

私はベインズこそが昨シーズンのプレミアリーグにおけるベスト・レフトバックだと思っているのだが、驚異的なことに彼はプレミアリーグの試合で1分たりとも休んでいない。(※Minutes)
エンリケを除く他の3人がヨーロッパのコンペティションを掛け持ったり、国内カップ戦の影響も少なからずあるだろうが、それでもこの成績は注目に値する。


グランダー性のボールで50-50のものは、333~358とそこまで大差は見受けられないし、それに競り勝つ確率も51~58%と大きな差は見られない。(※Total Ground 50-50's)
それよりも特筆すべきは空中戦の競り合いだろう。(※Total Aerial 50-50's)
敢えて上の表には身長を記載したが、170cmと最も身長の低いベインズと、エブラが空中戦に強いという結果が出ている。
逆に身長が最も高いエンリケ、そしてクリシーは空中戦はあまり得意ではないという見方もできるだろう。

次にタックルを見ていこう。(※Total Tackels)

しかもクリシーはその成功率が81%とこの中でエンリケに並ぶ他を圧倒している。
この結果は彼らが、読みや、ポジショニング、対人プレーに強いと見ることができるかもしれない。
インターセプションでも、クリシーは高い数字を残している。(※Interceptions)

しかしここで、ファウルの数字を見ておかなくてはならない。(※Fouls Conceded)
クリシーはファウルを犯す傾向にあり、これを見ると彼が決してポジショニングがいい選手でることや、1対1に強い選手だとは言えないという証明になる。
一方でエンリケはここで高い数字を残しており、上記2つの項目と合わせ彼のディフェンス力の評価へとつながるだろう。
驚きだったのが、エブラのファウルの多さだ。
タックルもインターセプトも平均的な数字にも関わらず、ファウルでは彼が圧倒的に多いという結果には正直驚いた。

それと併せて、ディフェンスのミスについても見ておこう。
ここは各々がほぼ変わりない数字だが、チャレンジの結果と、ファウルを犯した数字と照らし合わせてみていくと、エンリケのディフェンス力がますます際立って見えてくる。
相手にドリブルを許していないという観点からもそれが強調されている。

フルバックというポジションは、ダニエウ・アウベスに代表されるように、近年攻撃的な選手が注目を浴びてきていたが、あくまでメインタスクがディフェンスであることはどれだけ時が経とうとも変わりはない。
そういう意味で、エンリケは評価されるに値するだけの数字を残していることをここでは強調しておかなくてはならない。

次に攻撃的な部分に目を向けていこう。

クロスの供給数に関しては、ベインズが圧倒的にこの集団をリードしており、アシストに関しても他の選手たちと比べることが全くの無意味で、彼は明らかに全く異なる次元にいる。(※Total Crosses、Goal Assist)
ドリブルに関しては、エンリケが他をリードしているが、ボール離れの悪い彼の特徴が出ているようでもある。(※Successful Dribbling)
ボールタッチに関しては、エブラ以外は高い数字を残している。(※Touches)

ゴールに関してもまた、ベインズの一人勝ちである。
シュート数と併せて見ると、ベインズがいかに決定的な仕事をやってみせたかという証明になるが、ここで見逃すわけにはいかないのが、エンリケの枠内シュートの数である。
ゴールこそないものの、攻撃に関してもいい仕事をしているように数字は表わしている。

この結果から、プレミアリーグ最高のレフトバックは紛れもなくベインズであり、エンリケとクリシーもエブラやコールと比べてそこまで大きな差はないと見ていいだろう。
もちろん実際に誰がベターかを考えるとき、選手自身のプレースタイルは当然ながら、クラブのプレースタイルや、個々のチームにおける役割、対戦相手など多くの数字に表れないことも考慮しなくてはならないが、ことエンリケに関しては数字だけではベインズに次ぐ選手だと考えていい。

当然、コモリはこの数字を目にしているだろうし、ニューカッスルは基より他のクラブも参考にしているだろう。
ただしこれはあくまで参考であって、自分のクラブに、そして描いているプランに当てはまるか、もしくはいかに当てはめるかは、スタッフの腕次第になってくる。

いい選手だから必ず成功するとは限らない。
それはいつの世も常である。


YNWA
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Last updated  2011/07/06 10:34:00 PM
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