サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2006.06.08
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カテゴリ: クラシック
音楽の世界性

「音楽は幸せな芸術である。世界中の人々の感性に、直接訴えかけることが出来る。詩はおのずからその言語に制約される、厳密に同じ言語、民族にしか、その力は正確には伝わらない。」とか。
 要するに「古池や 蛙飛び込む 水の音」を、そのまま英語に訳しても、何にも伝わらない。詩とは一語一語の言葉の喚起力を極限まで利用して、その連なり(衝突)で思想なり世界観を表現しますから、1つの言葉の背景にたいそうな歴史に刻印された、言語世界が広がっているわけです。
 早い話が「古池」はイギリスでもフィンランドでもなく、間違いなく日本の池(それも京都かどこかの大きさも限定された)でないと、何の喚起力も持たない(あたりまえです)。「カリフォルニアの青い空」の色は、ミラノの青い空でも、バルセロナの青い空でもなく、カリフォルニアという言葉で喚起された、他に置き換えられない歴史と地理と空気の匂いまで背負った青色でしょう。
 リードは詩というものが、翻訳可能かどうか、疑問を投げているわけで、対称的に音楽の軽やかさのようなものを強調しました。果たしてそうなのか、パイプオルガンの最強音をドイツの教会で聞いた場合、はたしてブルックナーは日本で聞くことが出来るのかみたいなね。

 さてカラヤンです。彼はどうも音楽から、そうした歴史的刻印を、こそぎ落として自由に振舞おうとしたようなところがありますね。もともとトスカニーニのような、できるだけ譜面に忠実な(即物的)演奏スタイルで出発した指揮者なんだそうですが、ベルリンフィルとの長い付き合いの間の膨大な録音を聞いていると、第一に「響き」にとてつもなく力を費やしたという印象があります。
 どんな全オーケストラの最強音でも音が濁るということがない、何だか底が抜けたような響き(対称的にウィーンフィルの古びたホルンなんか、割れたような強音で量感が出ますね)、弱音では私は長くローター・コッホの透明な音色のオーボエが、ベルリンフィル最大のお気に入りでした。そう云えばカラヤンの音色の好みも、透明感の強い響きだったと思います。フルートのジェイムズ・ゴールウェイや、ソプラノのグンドラ・ヤノヴィッツ(R・シュトラウスの「最後の四つの歌」は素晴らしい!)、バスのワルター・ベリーなど、すべて共通した音色を持ってますね。

 というわけで、私は彼の演奏スタイルではなく、彼の指揮するベルリンフィルの音色に、長い間惹かれていたのでした。演奏スタイルは当時世評でも言われていたハナに付く部分、演出過多とか、強音のソステヌートが引きずるようで重苦しいとか、確かにありました。ブラームスの第一交響曲、冒頭の部分、ベームが同じころ指揮したのを聞くと、もう歴然であります。(ニュアンスたっぷりなカラヤン、決然としたベーム!)
 とはいえ、洗練されつくした、その音色はシベリウスの透明感を際立たせていて、これは大変な音楽を聴いてしまったと思ったものでした。「タピオラ」や「交響曲第7番」のコーダを聞くと、今でも当時の気分が、ありありとよみがえってきて、笑ってしまいます。(友人の1人はそれに惹かれたのでもないでしょうが、フィンランドに遊びに行って永いこと帰ってきませんでした。もう1人はスペインに行って、こちらは今でも完全に行方不明です。これは別の話。)


― つづく ―





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Last updated  2006.06.08 23:19:49
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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