サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.02.21
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カテゴリ: 文学
 というような状況の中で、葵祭りの野外風景が展開されるわけですが、このあたりの描写と主要人物の絵模様は、ぜひ本文を読んでみてください。
 立ち並ぶ見物人たちの喧騒と、車にかしこまってチョイ見する風情の宮廷の女たち、さらには酒に酔った従者たちの言い争う声など、正しく紫式部の観察眼と描写力の冴え渡るところですが、彼女はその間に御息所の従者、左大臣家の従者、さらにそれに付き従う光源氏の従者の動きと心理を的確に描き分けていて、この車争いの原因は、結局葵の上その人の頑ななる性格から出てくるものだ、という源氏の述懐で締めくくる。引きますと、

― 「なほ、あたら、重りかにおはする人の、物に情おくれて、すくずくしき所、つき給へるあまりに、身づからは、さしも思さざりけめども、…つぎつぎ、よからぬ人の、せさせたるならむかし。」 ― 同上
「せっかく重々しく落ちついていられるのに、やさしさの足りない気質で、他人の心を細やかに測れないところのある方なので、御自身にはそれほどとも思われないことであっても、…自然その御気風に倣って、お付きの不心得な者どもが次々と不埒なことを仕出かしたのであろう」(同上)
 これはあるいは葵の上個人の気質というよりも、左大臣家の気風のバリエーションともみえますが、とにもかくにも源氏はボコボコに恥をかかされた御息所を気遣って訪ねてみる。しかし御息所としては、その高い格式ある気質ゆえにもちろん会おうとはなさらない。

 さてここから御息所の恨みが延々と語られると同時に、葵の上に物の怪が取り憑くという展開になります。ここで面白いのは、葵の上の患いを「御物の怪めく」と動詞的な表現していることで、さまざまな物の怪・生霊(いきすだま)が外部から入ってきて、彼女を苦しめている、という図柄が、当時の人々の病や患いに対する理解のしかたであったのでした。外部から侵入してきたのであれば、調伏して外に追い出そうという発想になるわけで、げんにさまざまな物の怪が憑人(よりまし)に憑いて名乗るなかに、

― 人(憑人)に更に移らず、たゞ、みづからの御身(葵の上)に、つと添ひたるさまにて、… 片時離るゝ折もなきもの、一つあり。「いみじき験者どもにも従はず、執念き気色、おぼろげの物にもあらず」と見えたり。 ― 同上
 執念深く葵の上に取り憑いて、なかなか姿を現さない物の怪がいる、さてこそ何者ということで、女房・従者たちがさまざまに推測するなかに、二条の方(紫の上)六条の方(御息所)などは、源氏と深い間柄なのだからおおいに怪しい、と噂する。
 このあたり、すでに帝も知るほどの公然の秘密であった、紫の上や御息所と光源氏の関係は、自然女房・従者の上のような推測となって現われてくるわけで、それがまた周りめぐって御息所の耳に聴こえてくるという仕儀になります。

 ここから、御息所の離人症ともいうべき、心理の起伏が語られます。

― つづく ―





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Last updated  2009.02.21 11:26:50
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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