サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.06.03
XML
カテゴリ: 文学
 花散里訪問の後も、かつていろいろ関係した女の人の消息が気になるけれども、源氏は身分が高くなって、なかなか気軽に訪ねるというわけにはいかない。そこで、

― 「心やすき殿造りしては、かやうの人集へて、もし、おもふさまに、かしづき給ふべき人も、いでものし給はば、さる人の後見にも」と、おぼす。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 気兼ねのいらない邸を造って、このような人々を集めておいて、思いどおりに守り育てたい人でも出来たら、そういう方面の後見にもとお思いになる。 ― (円地文子訳、新潮文庫)

 いちいち言い分けして、出かけなくてもいいような邸を造って、思いをかけた女たちを、まとめて住まわせようというのですが、さしあたって二条の自宅の東に邸を増築することになります。これは後々の六条の大御殿造営の伏線になるのですが、はたしてそれが、女たちにとって夢御殿であったかどうか。

 さて、このあとしばらく源氏の政治的動向が記されます。
 御所内の政治的動きの基本的な構図は、冷泉帝の中宮(皇后)の座の争いであり、帝の外戚となることで、世俗の実権を握ることにあります。もう一つは東宮の后候補で、いずれこれもまた新帝誕生の際に外戚になる布石となるものでした。
 冷泉帝は前にも触れたように、世間的には源氏の腹違いの弟なので(実は源氏と藤壺の子)、外戚にはなれないのですが、なるべく有力貴族の介入は避けたい。一方、東宮は右大臣系の朱雀院の子で、こちらは外戚になるチャンスがあるのです。

 というわけで、ここから光源氏と新帝の母である藤壺の女院の、絶妙なTag Matchが繰り広げられます。
 まず源氏は東宮の御所での寝殿(梨壺)が、自分の宿直所(桐壺)の隣であることを利用して、気楽に訪ねては後見のような役をする。さらには長年の仇でもあった右大臣系の弘徽殿大后にもあいさつを欠かさない。このあたり、光源氏の政治的図太さがよく出ているので、引きますと、



 … 大后は、(ついに光源氏を、政界から排除できなかったので)「面白くないのは、まさしくこの世のことよ」と思って嘆いておられる。(源氏の)大臣は、何かにつけて、(大后が)気恥ずかしくなるほど丁寧にお仕えになって、いろいろお心を遣われるので、(それまで源氏を、さんざん痛めつけてきた大后にとっては)かえってずいぶん辛いのではないかと、世間の人々は、穏やかならず噂し合っていた。

 これは、かつての政敵である大后のご機嫌を取っているのではなく(むしろ、あてつけでしょう)、世間に対して彼の凄味を見せているのです。

― つづく ―





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.06.03 11:22:05
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Calendar

Archives

2026.06
2026.05
2026.04
2026.03
2026.02

Profile

TNサリエリ

TNサリエリ

Comments

TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

Favorite Blog

まだ登録されていません

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: