サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.09.23
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 若いときから何かにつけて、光源氏と競い合い張り合って、源氏に対して物怖じしない数少ない人物であった内大臣(頭の中将)ですが、貴種の血筋でいえば彼に負けるとはいえ、実のお母さんは例の大宮で故桐壺帝とは兄弟姉妹の関係ですから、負けん気の気概にはちゃんと理由があったのです。さらに父の故左大臣は、世俗的な政略にも「心用ひ」にも秀でた人でしたから、実際的な政務ではおそらく内大臣のほうが、源氏より長けていたのではないか?
 そういえば、源氏は貴種の血筋として、大いに政界で威勢を保っているのですが、政務の実務的な処理となるとちょっと自信がなかったのではないか、と思わせる場面がかつてありましたね。須磨から戻って後、冷泉帝の後見として振るまうとき、退隠していた左大臣に三顧の礼を尽くして、太政大臣への復帰を依頼したりしているのです。

 さて、内大臣の家族といえば、

― 腹々に、御子ども十余人、大人びつゝ物し給ふも、つぎつぎになり出でつゝ、劣らず栄えたる御家のうちなり。女は、女御と、いまひと所なんおはしける。わかむどほり腹にて、あてなる筋は、おとるまじけれど、その母君、按察使(あぜち)の大納言の北の方になりて、さしむかひたる子どもの数多くなりて、「それに、まかせて、後のおやにゆづらんも、いとあいなし」とて、とりはなち聞え給ひて、大宮にぞ、あづけきこえ給へりける。女御には、いとこよなく、思ひおとし聞え給ひつれど、人がら・かたちなど、いと美しうぞおはしける。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 (あちこちの女君の)腹々に、(お産ませになった)御子たちは十数人もなって、(いずれも)立派に成人され、次々と出世して、(源氏方と)負けず劣らず栄えている御一族である。娘は、(弘徽殿の)女御と、もうお一人方いらっしゃる。(その娘、雲井の雁は)母が皇族系で、高貴な血筋ということでは、(何ら弘徽殿の女御と)劣るところないのであるが、この母君は、(その後)按察使大納言の北の方になって、そちらの方の子供の数も多くなったので、(内大臣は)「そのまま、成り行きに任せて、あとの父親に(我が娘を)委ねるのは、やっぱり不都合なことだ」と思って、(母子を)引き離しなさったうえ、大宮のもとに、お預けなさった。(弘徽殿の)女御に比べれば、ずいぶん軽く、思い扱っていらっしゃるが、(本人の)人柄や容貌などは、とても美しくていらっしゃる。

 前にも言いましたが、この内大臣(頭の中将)、世俗の代表として源氏の君と対抗するに、もっぱら女の数で若いころ勝負したので、本妻の右大臣系の四の君とは別に、あちらこちらの女君に手をつけて、しかもそれぞれに子供が出来ている。娘は四の君との間に出来た弘徽殿の女御とは別に、皇族系の姫君との間に出来た「雲井の雁」という子がいるのですが、この母君が後に按察使大納言に嫁いだので、娘のほうは内大臣が引き取って、ほかの大勢の息子たちといっしょに、母の大宮に預け育てた、という構図なのです。
 子沢山というのは、現世の世では一族の繁栄の証しであり、内大臣はそのいちいちを家中に集めて、威勢を誇って得意になっているようなところがある。のちのち、それがためにエライ騒ぎが起こるのですが。

 この内大臣家の子沢山については、前に光源氏が須磨流遇を許されて、左大臣家とともに政界に復帰したとき、その子供たちもオセロの駒をひっくり返すようにいっせいに昇進して、子供の少ない源氏が(表向き夕霧と明石の姫君の二人、実際は冷泉帝と三人)、大いに羨むという場面がありましたね。
 ここで彼が抱いた羨望というのは、一世(一代限り)源氏という立場では、絶対手に入らない禁止された類のものだったのではないか?






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Last updated  2009.09.24 10:03:56
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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