サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.09.25
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 自身の昇進を祝う宴などが終わって、少し暇ができたのか、内大臣は大宮のもとを訪ねる。
 このあとのくだりは、けっこう長いのですが、内大臣の意図、大宮の気持ち、老い女房の立ち話からの秘密の露見、夕霧の闖入とふうに、話が次から次へと展開して、舞台劇さながら読む側のはやる気持を逸らさずに、一気に読ませる、実に上手いものです。どういうふうに、原文の雰囲気を壊さずに、このブログで再現していったものか、あれこれ思案しているのですが、まあ焦らずに入っていきますか。
 さしあたって、夕霧が雲井の雁に幼い想い文などを送ったりして、それが側付き女房の目に入って、「どうやら~」という噂になっているのですが、彼女たちはわざわざ、そんなややこしい話を大宮や内大臣にはしません。

―  ところどころの大饗どもも果てて、世の中の御急ぎもなく、のどやかになりぬる頃、時雨うちして、荻の上風もたゞならぬ夕暮に、大宮の御方に、内の大臣(おとゞ)まゐり給ひて、ひめ君わたしきこえ給ひて、御琴など、弾かせたてまつり給ふ。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 あちこちの(任官披露の)大饗の宴なども終わって、朝廷の御用事もなくて、のどかになったころ、時雨が降って、萩の葉の上に吹きつける風の身にしみる夕暮れに、大宮のもとに、内大臣は参上されて、姫君(雲井の雁)をお呼びになって、お琴などを、お弾かせになる。

 内大臣の目的は、もう一人の娘、雲井の雁の様子を探ることでした。今回の人事で冷泉帝に入内していた弘徽殿の女御が、意外にも中宮の座を逸したので、彼としては現帝の外戚としての威勢は張れないわけです。そこで次の対策として、今の東宮(朱雀院と承香殿の女御の子)に、雲井の雁を入内させることを考えている。
 大宮はさすがに皇族出身だけあって、管弦にすぐれ雲井の雁にも教えているのです。内大臣はまず琵琶の名人の話から切り出す。

―  「女の中には、太政(おほき)おとゞの、山ざとにこめ置き給へる人こそ、いと上手と聞き侍れ。ものの上手の後には侍れど、末になりて、山賤(やまがつ)にて年経たる人、いかで、さしも弾き勝れけん。かのおとゞ、いと心殊にこそ思ひて、のたまふ折をり侍れ。 … 」 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 「(琵琶の名手としては、)女のほうでは、太政大臣(源氏)が、山里に囲っておられる方(明石の方)こそ、たいそうな上手と聞いております。その道の血筋とはいえ、時が経って、田舎住まいの長くなった人が、どのようにして、そのような弾き上手になったのでしょう。かの大臣も、大変格別に想い掛けておいでで、お話なさる折り折りもございました。 … 」



―  「さいはひにうちそへて、猶、怪しう、めでたかりける人なりや。老いの世に、持給へらぬ女子を、まうけさせたてまつりて、身にそへても、やつしゐたらず、やむごとなきにゆづれる心おきて、「事も無かるべき人なり」とぞ、聞き侍る」 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 「(その明石の方とは)ご幸運なばかりでなく、さらに、不思議なほど、よく出来たお方のようですね。(源氏の君が)年取られた今の世になるまで、なかなか授からなかった女君を、お産みなさったうえに、(低い身分の)我が身の側において、(姫が、世間から)卑しめられることのないように、立派な(紫の上という)方にお預けされたという見識など、『(まことに)申し分のない人である』と、聞いております」

 大宮の明石の方に対する評価を聞いて、内大臣は本題に入ります。

― つづく ―





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Last updated  2009.09.25 20:34:52
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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