サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.11.28
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 何となく怪しい雰囲気も漂う光源氏と右近ですが、かんじんの話題は外しません。

― 「かの、尋ね出でたりけむや、なにざまの人ぞ。尊き修行者を語らひて、率て来たるか」
と、問ひ給へば、
 「あな、見苦しや。はかなく消え給ひにし、夕顔の露のゆかりをなむ、見給へつけたりし」
と、きこゆ。
 「げに、あはれなりけることかな。年ごろ、いづこにかは」
と、のたまへば、ありのまゝには聞こえにくくて、
 「あやしき山里になん。むかし人も、かたへは変らで侍りければ、その世の物語し出で侍りて、いと、堪へがたく、思ひ給へりし」
など、きこえいでたり。

と、隠し給へば、うへ、「あな、わづらはし。ねぶたきに、聞き入るべくもあらぬ物を」とて、御衣して、耳をふたぎ給ひつ。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 「その、探し出した(人)というのは、どんな人かね。尊い修行者でもたぶらかして、連れて来たのかい」
と、お聞きなさるので、
 「まあ、人聞きの悪いことを。はかなくもお亡くなりになった、(あの)夕顔の君の縁の方に、お会い致しましたのに」
と、お答えする。
 「(それが本当なら)まことに、あわれなことよのう。(して、その方は)この長年月どこにいたのだね」
などと、仰せになるが、(紫の上の手前、右近は)ありのままには申上げにくくて、
 「辺鄙な山里でございます。昔(私といっしょだった)人たちも、幾人かは変わらず仕えておりましたので、その頃のことも話に出まして、とても、たまらない、思いが致しました」
などと、申上げた。
 「うむ(わかった)、事情をご存じない方も(ここに)いらっしゃるから(それ以上は言うな)」
と、隠そうなさるので、紫の上は、「あら、イヤだこと。(私は)眠たくて(たまらなくて)、耳に入るどころじゃございませんのに」と、お袖で、耳をふさいでおしまいになる。


 逆に言うと紫の上は、明石の方や朝顔の君と源氏のすったもんだの結果、すでに源氏に対して全面的な信頼というのは寄せることが出来なくなっているので、表面上の六条院の華やかさの裏では、彼女の不安と不満が浸行しているのです。彼女の辛いところは、実の父である式部卿が、須磨流遇の政変のあと源氏に干されていたことで、彼の意向に逆らっても生きていくような社会的経済的裏づけが、六条御息所のようにはなかったことでした。わけも分からず娘の時に拉致されて以来、彼のいない世間というのはありえないように、なかば仕組まれて二十七、八歳に成ってしまったということです。
 女性全般の内部に進行する精神の病というのは、今までも御息所に色濃く現れていましたが、あとあと「源氏物語」の主たるテーマになって来ますね。

 ともあれ、源氏は構わずに右近に話を続けさせる。以下の話は、紫の上が寝ている(ふりをしている)とはいえ、その横で交わしている会話なのです。

― つづく ―





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Last updated  2009.11.28 10:43:46
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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