サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.12.02
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 しかしこれに対する右近の返事は、なかなかしたたかのものでした。

― 「たゞ、御心になん。おとゞに知らせたてまつり給はむことも、たれかは、伝へほのめかし聞え給はむ。いたづらに過ぎ物し給ひしかはりには、げに、ともかくも、ひきたすけさせ給はんこそは、罪軽ませ給はめ」
と、きこゆ。「いたくも、かこちなすかな」と、ほゝゑみながら、涙ぐみ給へり。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 「(それはもう)ひたすら、(殿の)お心のままに(なさいませ)。内大臣様にお知らせし申すとて、(殿以外に)どなたが、お耳にお入れすることが出来ましょう。はかなくもお亡くなりになったお方の代わりとして、本当に、とにもかくにも、(姫を)お引き立てなさいますことこそが、(夕顔に対する)罪滅ぼしでありましょう」
と、お答えする。「ずいぶんと、(注文を)言ってくるじゃないか」と、(源氏は)笑いながらも、涙ぐんでいらっしゃる。

 源氏と夕顔の禍々しい秘密を知っているのは、例の惟光と右近だけ。惟光は源氏の腹心ですから安心としても、右近はもともと夕顔の乳母子であって、本意なく付き従って今の運命があるといってもよい。ここは、「殿のお好きになさるがよろしい。ただし私はすべてを知っていますよ」と、クギを刺しているようにも取れますね。
 源氏の泣き笑いは、もちろん亡き夕顔に対する想いがあるのでしょうが、右近の言葉付きに「痛いところを衝かれたな」という感じがあるのです。

― 「「あはれに、はかなかりける契り」となむ、年頃思ひわたる。かくて集へたるかたがたの中に、かのをりの心ざしばかり、思ひとゞむる人しも、なかりしを。命長くて、わが心長さをも見果つる類、多かめる中に、「いふかひなき事」と、そこばかりを、形見にみるは、口惜しくなむ、おもひ忘るゝ時なきに、さてものし給はば、いとこそ、本意かなふ心地すべけれ」
とて、御消息たてまつれ給ふ。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)


ということで、(玉鬘に)お手紙をお出しになった。

 多少遊び心めいた浅はかな言葉を右近に指摘されて、源氏は彼女が夕顔の腹心であったことを思い出す。それを取り成すために、あれこれマジメそうなことを言うのですが、基本的には彼は自分の方針を曲げません。右近もそのあたりの事情は分かっていて、それ以上追求するということはしない。このあたりの源氏と老女房の駆け引きは微妙ですが、紫式部はそのあたりの二人の心理を充分読み込んで書いていたでしょう。

― つづく ―





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Last updated  2009.12.02 10:56:24
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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