サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.07.10
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 そのあたりの気息は、明石の方が我が身の強運を思うと同時に、出自の格の違いを思い知らされた、という記述に現れているので、裏を返せば、身分が違わなければ、この人には負けない、という自負心とも取れるのです。

― いとうつくしげに、雛(ひゝな)のやうなる御有様、夢の心地して、見たてまつるにも、涙のみとゞまらぬは、一つものとぞ、見えざりける。としごろ、よろづに嘆き沈み、さまざま、「憂き身」と、おもひ屈しつる命も、のべまほしう、はればれしきにつけて、まことに、住吉の神も、おろかならず思ひ知らる。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 たいそう美しく、(まるで)雛人形のような(姫君の)ご様子を、夢でも見るような心地で、お見上げするにつけ、涙が止めどないのは、(嬉し悲しが)入り混じった気持ちとは、思えない(それは紛れもなく、嬉し涙なのである)。長の年月、万事に嘆き沈み、何かにつけて、「辛い身の上だわ」と、思い屈してきた(我が)命も、延ばしてやりたいような、晴れ晴れしさに、まったく、(父入道が願を掛けた)住吉明神の、(霊験の)愚かならぬさまを思い知るのであった。

 「高貴な人に見初められることが無かったならば、海に身を沈めて死ね」と、常々父入道から言われて、生い育った明石の方。見ようによっては一種のマインドコントロールを受けたような人で、その父母の存在感に比べて陰が薄かったのですが、ようやく彼女の個性も少ずつ現れてきたような感じがします。しかしそれは今回の娘の入内によって、ますます父入道への帰依というか、家族内カルトに固まって行く方向に現れたのでした。何となく「東大じゃなきゃ、絶対ダメ!」と呼号する父母に育てられた、今どきの不気味な秀才たちとちょっと似ているような気がしないでもない。そのあたりの彼女にかんする性格批評を、光源氏が鮮やかに示したくだりがあったのですが、それは先の話。

 入内後の姫君を取り巻く様子は、

― 思ふさまに、かしづききこえて、心およばぬこと、はた、をさをさなき、人のらうらうしさなれば、大方の寄せ・思えよりはじめ、なべてならぬ、御有様・かたちなるに、宮も、若き御心地に、いと心ことに、おもひきこえ給へり。いどみ給へる御かたがたの人などは、この母君の、かくてさぶらひ給ふを、疵に言ひなしなどすれど、それに消たるべくもあらず。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 望むとおりの姿に、(紫の上が)お育てなさって、(姫君は)心行き届かぬところは、まったく、ここから先も無く、性格が利発なので、大抵の方からの好意や声望をはじめ、その並々でない、ご容貌や器量もあいまって、東宮も、若いお心のままに、たいそう格別に、思い扱っていらっしゃる。競いなさるお方々の女房などは、この(身分の低い実の)母君が、こうして(娘君に)仕えているのを、疵のように言いなしたりもするが、それに打ち消されるはずもない。

 しかしここは平板にみて、姫君個人の容貌器量より、何といっても、後ろ盾についている光源氏の威光が、ものすごかったと見るべきでしょう。

― つづく ―





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Last updated  2010.07.10 11:29:02
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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