サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2011.10.28
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 今の彼には、上の「なでしこ」にみるような個人的ではなく、かと言って「お国のために」とか「震災被災者のために」といった外からやって来た「召命」でなくて、間違いなく帰属感を持てるような集団あるいは他者からの「召命」を、ありありとした手触りでは感じ取ることが出来なくなっているのではないか?ということなのです。彼が11年前にアメリカに渡った時は、明らかに日本人野手が果たしてメジャーに通用するのか?という直截な国民的「召命」を、彼自身も痛いほど共有しながらプレーしていたでしょう。
 しかし、それは当の彼自身が鮮やかに証明して見せたことによって、もうすでに古びた話題になっているわけで、それに変わるような「大きな召命」を、ここ最近の彼は持ちようがなかったのかもしれない。本来ならばマリナーズというチーム集団が、それに変わるものとして登場していなければならなかったのに、今だに彼は本当の意味で、マリナーズの精神的支柱というわけではない。ちょっとキツい言い方になりますが、10年以上経っても、彼はアメリカ社会では「お客さん」なのです。このあたりオリックス時代とかWBCの時のイチローとは、明らかに彼の立ち位置が違う。

 ここで大事なのは、この「大きな召命」なるものが、他所から到来するのでなく、本人の内側から出て来たものとして意識されないと、意味をなさないということです。よく考えてみれば、チームとか組織集団というのは、「生き死に」といった生き物としての根源的な在りかたには、まったく関与するところがない(早い話、個人の「死に目」を会社が看取ってくれるわけではない)。
 「いや、そんなことはないだろう。国とか組織集団が潰れたら、個人は生きていけないじゃないの?」という疑問が出てくるかもしれませんが、たぶんここでの問題はむしろ逆で、ヒトというのは「所属集団」という一種の「幻想」を、自身の内部に措定することによってしか、外部に向かって自分が納得できるような振るまいかたは決定できない存在らしいのです。つまり自身のパフォーマンスを最大値に持っていく「個人的必要」のために、自ら所属集団という「幻想」を措定する、という順序を取るということらしい。

 そのあたりの理路を、例の内田樹さんが最近のブログで、以下のようにまとめておられます。ちょっと長いですが、

― 人間が努力をするのは、それが「自分のため」だからではありません。「他の人のため」に働くときです。ぎりぎりに追い詰められたときに、それが自分の利益だけにかかわることなら、人間はわりとあっさり努力を放棄してしまいます。「私が努力を放棄しても、困るのは私だけだ」からです。でも、もし自分が努力を止めてしまったら、それで誰かが深く苦しみ、傷つくことになると思ったら、人間は簡単には努力を止められない。自分のために戦う人間は弱く、守るものがいる人間は強い。これは経験的にはきわめて蓋然性の高い命題です。「オレがここで死んでも困るのはオレだけだ」と思う人間と、「《彼ら》のためにも、オレはこんなところで死ぬわけにはゆかない」と思う人間では、ぎりぎりの局面でのふんばり方がまるで違う。
 それは社会的能力の開発においても変わりません。自分のために、自分ひとりの立身出世や快楽のために生きている人間は自分の社会的能力の開発をすぐに止めてしまう。「まあ、こんなもんでいいよ」と思ったら、そこで止る。でも、他人の人生を背負っている人間はそうはゆかない。
 人間は自己利益を排他的に追求できるときではなく、自分が「ひとのために役立っている」と思えたときにその潜在能力を爆発的に開花させる。  ― 格差と若者の非活動性について 内田樹(2011.10.18) ―

 こうした論説は、ここ最近の「規制緩和」だの「新自由主義」だのといった、欧米製グローバリズムを信奉する「個人絶対主義」者の考え方からは、最北に対置されたものとしてあるでしょう。

 内田さんの説は、一言でいえば「この世から隔絶して独立とした個人など存在しない(あり得ない)」ということでしょう。それがあたかも在るかのように語られるのは、おそらく近代経済学が、人間の経済活動を論じるときに、ヒトを「経済人」という「抽象的な個人」にモデル化したところから始まったのかもしれません。

― つづく ―





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Last updated  2011.10.28 11:12:21
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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