サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2011.11.01
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カテゴリ: スポーツ
 人間というのが、いかなる局面においても、抽象化された「経済人」のように振るまうとは限らない存在らしいというのは、今回の「東日本大震災」において見られた「愛他的行動」をみても明らかでしょう。とてつもない津波が来ると分かっていても、水門を閉じようと出動していった消防団員、家族より近所の老人の避難を優先させた地区の役員、濁流に巻き込まれるまで交通整理を続けた警察官などなど、「個人の利益の絶対化」という概念からは、とても測り切れない振るまいを「普通の人」が行っている。近代経済学者や「新自由主義」信奉者たちから見れば、こうした振るまいをする人間は「不合理で、かつバカだ」ということになってしまいます。
 しかし、これらの人たちが、ほかの一般人とはかけ離れて、博愛的あるいは英雄的精神の人たちであったか?と言われれば、おそらく当の本人たちがビックリしてしまうでしょう。実際にそうした「愛他的行動」で命を落とした人たちが多数いらっしゃるわけで、そうした人たちには充分に畏敬と哀悼を奏しつつ、なおかつ私はこれらの行動はある特定の人たちにだけ備わった在りようなのではなく、おそらくヒトの振るまいかたに本態的に具有されたものであると考えたい。そしてその本態を成すものこそ、先に内田さんが ― 自分が「ひとのために役立っている」と思えたときにその潜在能力を爆発的に開花させる ― と指摘した点だと思うのです。

 話が少し変りますが、メジャーリーグなどを見ていて、なかなか「これは日本には馴染まないだろうな」と思うことの一つに、日常的な「ボランティア活動」があります。ただでさえ、かなり過酷なスケジュールじゃないか、と思えるシーズン中でもメジャーの選手たちは、争うように時間を割いて学校や病院や福祉施設を訪れる。メジャーリーグ一年目のイチローが地元の小学校などを訪れていた当初、私はこうした活動はたぶんキリスト教的な「義務」の概念から出てくるのだろう、などと捉えていたものですが、途中からどうもそれだけでは測りきれない、もう少しそうした概念を超えたところで、彼らは訪問しているのかもしれない?と考えるようになりました。
 どう見ても「愛他精神」からは程遠そうな、薬漬けのマッチョなメジャーリーガーたちが、なぜ先を争ってボランティア活動を行うのか?たんに宗教的な義務感だけで測るには、ちょっと彼らのマインドはまた、その大改造された肉体同様、自己愛の塊のように見えるのです。であるとすれば、彼らを「愛他的行動」に駆り立てる動因には、それが自身にとってかなり有意な利得として、意識されているからではないのか?

 この場合の「有意な利得」とは、日本では「善意の押し売り」と間違えられやすいので、注意しないといけないのです。ボランティアを「施し」として、一方向に捉えて「自己満足」に浸るというのは、日本のある種の宗教その他団体が時おり示す振るまいですが、メジャーリーガーの「愛他的行動」はたぶんそれとは違う。早い話、こうした立ち位置で「施し」を行っていると思っている人たちは、「施される側」が自分たちの期待するような「感謝の態度」を示さなかった場合、きわめて冷淡な態度に豹変するでしょう。
 日本社会で長く「ボランティア」精神が馴染まなかったのには、たぶんこの両者を上下関係(施す側、施される側)で捉えていたからで、私たちはそのあたり、「施す側」の心に見え隠れする、ウサン臭さを暗に嗅ぎ取っていたのではないか?

 とすれば、さして知的?とも思えないメジャーリーガーたちが、衒いなくボランティアを行えるのには、たぶんもっと直截的な利得が彼ら自身にある、と意識されているからに違いない。で、彼らの場合その直截的な利得とは、紛れもなくグラウンドで自身の最高のパフォーマンスを発揮できれば、ということでしょう。知的ではないにしても、自身のパフォーマンスを最高に賦活する「智恵」のようなものを、彼ら固有の文明史的文脈で知らず身につけていたのかもしれない。
 それは紛れもなく自身のパフォーマンスは、自身固有の努力によってだけではなく、より積極的に「他者」を引き寄せることによって最高に発揮され得る、という信憑だったでしょう。
 繰り返しますが、

という内田さんのヒトの振るまいに関する一般論は、こうして彼らの歴史的文脈では宗教的色合いに染められて、「ボランティア」というかたちで現れたということなのだと思う。

― つづく ―





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Last updated  2011.11.01 11:32:35
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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