サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2015.10.20
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エスニック

 当時からして外国選手たちが国旗を羽織るという風景はごく普通に見られたのですが、日本人選手は日の丸に独特な「距離」を置いていたように思う。シャツに国旗をあしらうのはごく普通ですが、日本では今でもパンツに日の丸を施すことはしませんね(アメリカや西欧各国は、それを普通にやるのです)。
 いずれにしても、当時の日本のテレビ中継映像は、このあたりの微妙な「異和」を嗅ぎ取ったか、その時の荒川さんの映像を流しませんでした(NHKは一体何に対して、何をどう気を使ったのでしょうかね)。

 今回のラグビーワールドカップは、その時受けた漠然とした「異和」の印象を、さらに明晰に私たちに示してくれました。日の丸を囲むアスリートの半分近くは、「外国生まれの人」なのです。しかもその表情を見る限り、心底日の丸をリスペクトし、そのもとに参集したことに高い「誇り」を持っているように見える。一言で云えば、彼らは野球やサッカーなどで見られる、いわゆる「助っ人」外国人では絶対ないということです。これと同じような仕方で、外国からアスリートを参集し得る日本のスポーツは、あるいは「なでしこジャパン」ぐらいかもしれない。今のところそうした事例はないけれども、彼女たちもまたその「Japan Way」によって、世界から関心を持たれている存在でしょう。
 エスニックな日本観に浸っている人たちは、こういう仕方で「日本」に参集して来るであろう外国人の取り扱いには、大いに悩むでしょう。イチローを眺めるアメリカ人は間違いなく、そういうふうにはイチローを見ていない。彼らにとって、「自ら選択して」アメリカに来て成功した人は、すべて「真正のアメリカ人」なのです。キッシンジャーをドイツ生まれだからといって、彼をドイツ人と見なすアメリカ人はいない。

 話はずいぶん逸れますが、靖国に参拝される方々、何を以って我が身が「真正の日本人である」と言い切れるのか、一度聞いてみたい。と、こういう問いを発すれば、たちまち「我が家の五代前は何某の末裔で」みたいな話になるのでしょうが、そういうふうに言い募る身振りそのものが、すでにエスニックな感覚に浸されていることを示しています。
 大半の日本人は自身の家系にほとんど無関心です。それが現実の生活感覚と結び付かないから。家系や血筋を重視するのは、それが実際的な利得に結び付くかどうか、現実の社会に作用するのかどうか、要は「権力」として作動するのかどうか、という一点で意味が生じるのであり、日本人はそのあたりのからくりを、「婿養子」というシステムを考え出したことで、かなり早くから見抜いていたようですね。
 では、それでも「我こそは真正の日本人」と言い募る方々というのは、結局そこに現実的な利得を見出している集団ということになる。政治家にそれが多いのは、政治がまさしく「権力構造」そのものを体現しているからです。強面で参拝するところを「見せる」ことが、「真正日本人」であることの証明であり、それがそのまま我が身の「権力」基盤に繋がっていると信じて疑わない。この場合、この人たちの国家観というのは、漠然としたエスニックな感覚で意識されているのではなく、明らかに政治的なナショナリズムから来ているのです。

 同じように「民族」とか「民族主義」と訳されながら、NationとEthnic Groupではずいぶん印象が違う。ざっと云えば、ナショナリズムは国民国家の形成過程で生まれた、きわめて理念臭の強い新しい概念であり、エスノセントリズムと言えば、もっと未分化の前近代を連想させますね。げんにナショナリズム発生の根源を、エスニックな共同社会の情緒に求める学説もあるようです。


 明治以降の日本は、まさしく「他者には絶対共有不可能な物語」を、政治理念的に大規模に再構成することによって、近代「国民国家」を形成したのです。考えてみれば、江戸時代の共同体意識とは、まさしく「顔の見える、血と土地の繋がった」エスニックな気分で構成されていたのであり、具体的には住民が帰依する根源は「村」と「藩」、そしてその顔は「氏神様」と「殿様」であったでしょう。日本社会の九割を超える農民の意識に、殿様を越えた「天皇」が意識されることはなかったのです。
 明治維新政府は、まことに巧みにこのエスニックな「共同幻想」の気分を、新国家形成に利用したと言っていい。「村社会」にとって「あたりまえの存在」という気分の帰趨するところを、地域限定の氏神様や殿様から広く日本を覆う天皇にすげ替えたわけです。殿様が実際に庶民の前に顔を出すことはまずなかったでしょうが、地域限定の「あたりまえの顔の見える」存在としては、氏神様とともにあり得たのでした。





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Last updated  2015.10.20 22:27:23
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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