サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2016.07.21
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カテゴリ: クラシック
「世俗」の音楽

 早い話、音楽が最初から「聖」と「俗」が分かれて発生しただろう、などとはもちろん言えません。古代ギリシャの神殿には必ず付属物として「娼婦の館」が存在していたのであり、それを今ふうの倫理で「巡礼者の慰藉のため」みたいな解釈をしては、たぶん古代社会の気分の大半を逃すことになってしまうでしょう。かといって、それを「神々に仕える巫女たちの奉仕(あるいは施し)」と一気に踏み込んでしまうのも、ちょっと乱暴な議論だという気がする。

 要は音楽も性も未分化の状態で、人間の営みが始まった時からあったわけで、それを「聖」と「俗」といった対抗関係に区分けし出したのは、ずうっとはるか後だということです。だからこういう関係を、表裏一体という仕方で捉えてはいけない。おそらくそれらは事物の別の表象に過ぎない、という気がするのです。
 だから日本でも読経とか祝詞が詠まれる本殿の外では、俗謡や猿楽が普通に行われていただろうし、それらは時に互いに刺激融合しあっていたことでしょう。

 さて、とはいえ西欧において「俗」なる音楽が、明瞭に意識され始めたのは、やはり15世紀ごろに始まるイタリア・ルネッサンスからでしょう。絵画や彫刻が神に奉仕する芸術から人間に移ったのと同じくして、音楽もまた人間が楽しむための芸術として進化を遂げたのでした。このあたり、絵画や彫刻・文学などは分りやすいので、教科書でもよく取り上げられますが、音楽もまた同じような変遷があったことは、あまり言及されることがないですね。
 大事なことは俗謡や民謡はそれまでも存在したはずですが、ルネサンス期からそれらが王侯貴族や新興富裕層の館に、さかんに入って来て洗練され、教会音楽と同等の位置付けを得たということでしょう。面白いのはオペラやパイプオルガンの勃興も、この時期に同時進行で起っているということです。「聖」と「俗」は互いに刺激融合しあって発展しているのです。
 要は、全体的に「音楽の趣向」が爆発的に洗練化していったということで、これはやはり16世紀~17世紀に隆盛を極めたメディチ家のような新興富裕層や、ローマカトリック教会の文化好みに負うところが多いでしょう。つまるところ莫大な財力が、こうした文化の隆盛を招いたのです。

 さて次に聴いてみたいのが、F・マンフレディー二(1684~1762)の「 合奏協奏曲第12番 」です。これはルネッサンスではなく、すでにバロックの時代(1718年)の作品ですが、それでもベートーヴェンがウィーンで活躍するほぼ100年前に、イタリアのボローニャで書かれた曲なのですが、趣味の好さが伝わって来ますね。


 ここまで来ると、これに木管や金管が入れば、今のオーケストラに連なる形式にあと一歩と言うところ。現にバッハやヘンデルは弦楽合奏にトランペットやホルン、フルート、オーボエなどを加えた合奏協奏曲を書いています。早い話、ヘンデルはすでに員数だけから言えば、現在のオーケストラと変わりない編成の「水上の音楽」のような管弦楽曲を書いているのですが、大事なのは、それらは王侯貴族たちへの祝典曲として作られたのであって、独立した楽曲として意識されていたのではない。

 そうした「世俗」の音楽の価値を押し上げ、作曲家の意識を高めるのに、決定的な役割を果たしたのが、ハイドンが確立した「交響曲(Symphony)」という楽曲形式でした。楽器群の顔ぶれはほぼ揃ったとはいえ、作曲という行為が立派な「独立した営み」として認められるには、しかるべき形式が必要だったのです。
 という意味で、彼がモーツァルトやベートヴェンに与えた作曲家としての意識上の変革は(彼自身はエステルハージ家に長く依拠していたとはいえ)、残した作品以上に大きかったのではないか?その後ヨーロッパの音楽家の主たる仕事は(とくにドイツでは)、器楽曲に関しては交響曲を中心として行われることになります。





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Last updated  2019.06.10 08:54:57
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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