面白いのは、この出来上がった「THE FIRST TAKE」の音源は、そのままテレビアニメのオープニングに使うわけにはいかないということです。なぜなら、この「紅蓮華」はそれだけで、テレビアニメ「鬼滅の刃」の世界観を、語り尽くしているからです。もし、この音源を番組のはじめに聴かされたら、かんじんの本編が、かすんでしまうかもしれない(「音楽負け」という言いかたを、フィギュアスケートで言ったりするじゃないですか、曲が壮大すぎてスケーターの演技が、追いついていけない場合など)。 そういう意味で、作曲者や作詞家がどれだけ原作や原案に共鳴し、精魂を傾けて作品を作り上げたとしても、むしろその完成度が高いほど、実際に使われる音楽はその半分ほどの中味でパッケージされる運命にあると言っていい。オープニングテーマのコンセプトが、本編に視聴者をいざなう役目を負っている以上、それは仕方のないことなのです。
という意味で、あらためて「THE FIRST TAKE」の「紅蓮華」を聴いてみると、逆に本編に縛られないぶん、LiSAさんのナラティヴな力が存分に発揮されているように感じる。narrativeという言葉については何度か触れたことがありますが、たんに「物語」を語るのではなく、より「共感性あるいは想像力を、聴き手の心に喚起する」ような語りかたを言うので、いわゆるstory tellingとは異なる。 それが如実に表れたのが、先にも触れた中間の「人知れずはかない、散りゆく結末~」と続くブリッジ部分の朗誦で、ここの根を詰めた発語のしかた、明らかにLiSAさんの「鬼滅」感を雄弁に語っていて、これはやっぱりオープニングには使えませんね。最近アメリカのラッパーと思しき人物の、笑ける「紅蓮華リアクション動画」が出たので見てみてください。
さて、「炎」はほぼ一年後の2020年10月16日の発表で、劇場版「鬼滅の刃、無限列車編」の公開日にあたりますね。この年は年末の日本レコード大賞、「紅白」の二年連続出場など、LiSAさんにとっても画期の一年だったでしょう。 じつはこのかん、彼女は「THE FIRST TAKE」に、「unlastingcatch the moment」(20年10月28日)というアニソンを前後して発表していて、「一発撮り」の面白味というのを充分熟知していたことでしょう。この二曲も彼女らしさ満載の歌唱で上出来ですよ。ではLiSAさんはこの「炎」の一発撮りに、どのように臨んだのでしょうか?映画の公開日と同じということは、OSTのエンディングテーマと「THE FIRST TAKE」の「炎」のUPが同日だったということで、どっちが先の収録だったのか、これも私の関心を引くところですが、些事にわたってキリがないのでここではしません。