@青木十三雄の『他人のフンドシで相撲取れ!~第二章~』

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2013/01/30
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カテゴリ: ブログ
形見の時計




昨年12月19日に母から
「喉頭がんらしいとお医者さんから言われちゃったよ」と
メールが来た。
「来年1月の終わり頃に手術をしましょうと言う事になりました。
 本人は至って元気で痛くもかゆくも無いのですが いやはや
 こりゃー大変なこと?になりそうなのハーー」
いつもの明るい感じのメールに思わず涙が出た。

前日から入院していた母の病室に午前11時に弟と2人で到着。
看護師がいろいろ準備をしてくれて11時40分に手術室に向かう。

手術室には僕らは入れないので母が看護師に付き添われて入っていった。
僕らが「大丈夫だよ~ また後でね」と声を掛けると
母が振り向いて手を振った。

「ご家族の方はあちらの待合室へどうぞ」
看護師に促されて行ってみると既に数組の、
やはり手術を受けている患者さんのご家族が
思い思いの様子で椅子に座っていた。

みな様々だ。
疲れて眠っている女性。
笑いながら話している父と娘。
唯一、病院内で携帯をかけてもいい電話室で
携帯で誰かと話している女性。
そしてみな時折壁にかかっているモニターに視線を投げる。

手術の進行状況確認モニターだ。

項目は
1手術室:どこの手術室でオペをしているか
2状況:たった今入室した場合は「入室」、
     麻酔しているなら「麻酔中」等
3患者:プライバシー保護の為に個人が特定できない様に
     性別と年齢だけの表示
4入室時刻
5手術終了予定時刻
の5項目。

空港の出発案内みたいだな、とぼんやり思う。

前の手術の患者さんが予定より早く終わったので
母も予定より15分早くに手術室に。

手術を受ける方は大変だろう。
いや、麻酔で寝ているからある意味楽なのかな。
待っている家族の方が大変かもしれない。
何もせずにただじっと待っているのは辛い。
術前にあれだけ先生に「大丈夫、安心です」と説明を受け
こちらもそれを十分理解している筈なのに
もし最悪の場合に陥ったら…?等と悪い方へ悪い方へと考えてしまう。

突然終了予定の30分前に僕らは呼ばれた。
「無事終わりました。ちょっと危険な場所に出来た腫瘍でしたが
 綺麗に、神経も傷つけることなく摘出できました」

案ずるより産むが易し。

「これが取り除いた腫瘍です」
執刀医が手のひらにスッポリ収まる位のプラスチック容器の中の
液体に浸かった腫瘍を見せてくれた。
不謹慎にも焼き鳥の砂肝に似てるって思ってしまった。

ストレッチャーに乗せられて病室に戻ってきた母。
麻酔が効いていてまだ意識の戻らない母を弟と2人で見つめていた時
弟が腕を見せて「今日は連れて来たから」と言った。
何の事だか分からず、「え?誰を?」と僕。
「だからぁ、これをよ」
「何?時計?何?誰かの?」
「父さんのよ」

あぁ!と、ようやく理解した僕に
「母さんからこの時計はあんたがしてなさいって言われて渡された。
 だから今日は連れて来た訳よ」

「なるほどね」
そう返しながら心の中でその時計、僕にじゃないんだって思った。

とにかく無事に手術が終って良かった。





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Last updated  2013/01/31 03:18:41 AM
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