深秘の華苑

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黒左右衛門

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2002.02.26
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 暫くエロネタ(笑)が続いたので、今日はなんちゃって科学者(ケツ青)な苦労ザエモンバージョンで、話題(一部)のクローンについて。
 あたしは一応研究者で、ナマモノ系の人。クローンマウスとかは作った事はないけど、クローニングとかもやっている(本職じゃないけど)。だから羊のドリーちゃんの論文とか読んでいるし、まあ何やっているかは大体判る。そんなあたしはクローンには興味はあるけど、それはあくまで科学者として、技術的な部分に関してであってクローンを神聖視したり万能だと思ったりはしない。化学の法則に則ってやっているだけやん、位かな(失礼?)

 ところで、あたしはちょっと前まで実家でわんこと暮らしていた。そのわんことの出逢いは小学生の頃に始まる。その当時、父の会社近辺で泥棒が頻発していて、困っていた頃にお客さんでブリーダーをしている方が「雌の柴犬が余っている。要らない?」という話を持ってきたらしい。「おお!会社の番犬にしよう!」と思った父はその場で即決してそのわんこを貰ってきて我が家に連れてきた。あたしを含め他の家族はそれまでに犬を飼う話なんて微塵にも出てなかったので、ある日突然家に帰ってきた父の手の中ですぴすぴ寝ていたわんこを見て唖然とした事を覚えている。イタい事に両親共犬を飼った経験もなく、飼ったものと云えば熱帯魚位しかなかった。そのわんこ、ぽち(♀)はかくしてビギナー揃いの我が家でかなりの勢いの箱入り娘に育てられた。結局会社の番犬としてではなく我が家の一員として大人になったぽちは、家族にはこれでもかという位懐いていて「三番目の娘」状態だったが、排他的で他人にはちっとも心を許さない奴となり、甘えん坊でお茶目で、本等に書かれている「柴犬の性格」とはえらくかけ離れた奴になってしまった。あたしとぽちは本当に仲良しで、あたしが大学に入って下宿するようになると頻繁には逢えなくなったけど、あたしが実家に帰ると狂ったように大喜びしてくれて暫くあたしの側を離れなかった。まったりと二人して田舎の風景を眺めたりしているだけで幸せだった。
 そのぽちは14年位生きていたのだが、乳がんに罹ってしまい、高齢である為何の処置もできず死んでしまった。ぽちと出会った頃は「こいつとは、あたしが二十歳になる頃には別れてしまうのかも」なんて生意気にも思っていたのに、いつの間にかにあたしにはぽちが居る事が当たり前になっていて、永遠に逢えなくなってしまう事なんて想像もしていなかった。その頃には大学院生になっていて、研究絡みでがんに関して家族の誰よりも詳しくて「判るのに何もしてやれない(そりゃ獣医でもないしさぁ)」自分にすごく苛立って悲しかった。最期はすごく辛そうで、その姿を見ているだけでも泣けてきた。結局、大学をずる休みしてぽちの最期を看取った。あの時、過去何年か振りに大泣きをしてしまって、暫く立ち直れなかった。今でもその事を思い出すとほんのり鼻が痛くなってしまう。

 さて、そこまではあたしとぽちとの出逢いと別れだが、話を戻して、ではあたしがこんなに大好きなぽちのクローンを作りたいかと云うと全く思わない。確かにクローンを作製(こういう言葉になっちゃうんだよね)したら、「ぽちの遺伝子を持つ奴」ができる。自慢じゃないがぽちは同じ柴犬の中でもビジュアル的にもぴかいちでかわいいと思う。まあこれは犬を飼っている人皆が思うのだろうけど(笑)。でも、ぽちの性格には遺伝的要素も含まれるが、我が家という家庭環境の中で後天的に形成された部分も有り、そこはクローニングしても復活しない。目の前で箒を使うと軽いフットワークで喧嘩を売ってくる所とか、子犬の頃溝にハマって以来水が怖くて、強引にお風呂に入れた後は暫く避けてきたりといった性格は戻らないのだ。何よりあたしとぽちとで培った14年間は復活しない。復活するのは、遺伝的に外見や体質が同じ「柴犬」である。
 あたしが復活を求めるのは「ぽち」であって「柴犬」ではない。作製した「柴犬」を見て、外見は一緒なのに性格が違う事に失望するあたしを想像するのも厭だし、「ぽちじゃない!」って否定される「柴犬」も悲惨だと思う。その「柴犬」のアイデンティティが否定されるみたいやん。愛しているのが外見ではなく性格なら尚更、「ぽちなのにぽちじゃない奴」を見たくない。うちの母が云っていた。「もしね、今、柴を飼ったらどうしてもぽちと比較しちゃうと思うのよ。それってお母さんも犬もお互いに切なくて不幸だから犬はもう要らないわ」と。だからぽちのクローンは要らない。
 何よりも、そうして作製した「柴犬」と仲良しになれても、いつかまた永遠の別れをしなきゃいけなくなるから、もうあんな悲しい思いはしたくないので、わんこのクローンは要らない、と思う。あたしの中での「一番のわんこ」はぽちだけでいい。
 ・・・結局科学者としてよりいち家族としての考えになってしまったわ。





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Last updated  2002.02.27 05:08:37
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