深秘の華苑

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黒左右衛門

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2002.09.27
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 今日、廊下を歩いていた時すれ違った名前も所属も知らない人から、昔マコトが使っていた香水と同じ匂いがして、小さく胸が痛んだ。今だってマコトと逢っているので別に心が痛む理由が無いような気がしたけど、学部生の頃のあたし達と今のあたし達は異質な物になってしまっているようなので、多分その頃の自分が懐かしくて痛かったのだろう。兎に角心が痛かった。学部校舎というシチュエーションも拙いのかもしれない。
 奴の今の匂いはそれはそれで覚えているのだけど、いつか全く異なる場所で唐突にその匂いに出会ったら、やっぱり胸が痛むのだろうか。

 匂いは記憶とすぐ連結する。それは嗅覚神経と海馬が隣接しているからだと昔誰かから聞いた。解剖学は正直余り学んで居ないので自信は無いけど。でもここらで大脳辺縁系だの大脳古皮質だのというハナシをしても色気が無いから構わないや。兎に角匂いは直ぐに記憶に結びつく。譬えば金木犀やら山梔子やら沈丁花の匂いが漂うとあたしは幼い頃を思い出す。実家の近所にこれらの木を持つ家があったり、我が家の庭に咲いていたりするから。

 いつか全く関係ない場所で、大腸菌を培養した後の培地の匂いだの動物小屋の匂いだの、ピリジンやSMe体の某化合物の匂いに出会ったら(ちなみにこれらは総て激悪臭。特にSMe体のがね。腐った漬け物みたいな強烈な匂いなの。漬け物を腐らせた事はないけど)、大学時代を懐かしく思い出すのだろうか。・・・懐かしいだろうな、多分。
 実験系の「懐かしさ」は大丈夫だけど、マコトに繋がる懐かしさと何年か後に出会ったら、その頃にはあたしは大丈夫になっているのだろうか。なっていないど駄目なんだろうけどね。
 あああ己の手で己を沈めてしまった。





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Last updated  2002.09.27 19:16:21
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